多発性硬化症(MS)は厚生労働省の特定疾患に指定されている神経難病の一つで、かつ代表的な自己免疫疾患(*)です。日本では人口10万人あたり10人程度で約1万5000人の患者が、欧米では人口10万人あたり50~200人程度で比較的多く、世界中で約300万人の患者が存在しており、神経内科の領域ではさほど稀ではない重要な病気の一つです。この病気が発見された19世紀後半、複数の神経障害による多彩な症状を繰り返すという臨床的特徴をもった患者の脳病理組織において硬化した病変が多発性に散在していたことから多発性硬化症と命名されたのですが、現在は自己免疫的機序によって起こる神経免疫性疾患であるということが明らかになり、免疫学や分子生物学の立場で研究が進んでいます。
 視神経脊髄炎(NMO)は当初、欧米ではDevic病と呼ばれており多発性硬化症とは違うものとして、日本では視神経脊髄型 (OS-MS)として多発性硬化症の一部として認識されていましたが、多発性硬化症では同定されない抗AQP4抗体が陽性になることが判明してからは最近の研究により免疫学的・病理学的に多発性硬化症とは異なる疾患と考えられるようになってきました。欧米でも日本を含めたアジアでも人口10万人あたり1-3人程度の頻度で患者が存在し、あまり地域差がないとされています。

 (*)本来は細菌・ウイルスや腫瘍などの自己と異なる異物を認識し排除し、個体を守るための役割を持つ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰反応し攻撃を加えてしまうことで症状を来す疾患の総称です。慢性関節リウマチや全身性エリトマトーデス、シェーグレン症候群などの膠原病、花粉症などのアレルギーもこれに含まれます。

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