多発性硬化症とは自己免疫による神経障害で、その本態は脳炎惹起性T細胞という病原性細胞が直接的にあるいはB細胞やマクロファージなどを介して間接的に自己組織を破壊することであることが分かっていましたが、最近ではB細胞の産生する抗体の関与も少なくないことが分かっています。さらに免疫学の世界では近年様々な種類の炎症性細胞が同定され状況によって別の炎症性細胞に移行するという可塑性を有して自己免疫疾患の病態に関与し、さらにそれらを抑える制御性細胞とともに複雑なネットワークを形成していることが明らかになり、一部の疾患では制御性細胞の数の減少や機能の低下または炎症性細胞への変化が疾患の発症や進行の原因であるということも分かってきました。これらの制御性細胞の中で、CD4+CD25+T細胞の他にNKT細胞、NK細胞が再発・寛解に関与していることを免疫研究部において明らかにしており、個人差をほとんど無視できるNKT細胞を活性化する経口剤の臨床応用で治験中であり、ライフスタイル変化の重要性を裏付ける腸管免疫の関与を証明した第2のNKT細胞であるMAIT細胞の研究などが進行しています。臨床の現場でも、末梢血による疾患活動性の評価を行い、各種治療効果と比較し、多様な病型の臨床的特徴を明らかにして治療法の選択に役立てるようにしています。
 近い将来、非特異的で副作用が多い従来の治療に代わって、患者さん個人個人の特徴に応じた特異的で副作用の少ないオーダーメイド治療が可能となると思われます。

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