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てんかんセンター

てんかんセンター・レジデントプログラム(epilepsy center resident program)

1.プログラムの名称

 国立精神・神経医療研究センター病院 てんかんセンター・レジデント教育プログラム

2.プログラムの目的と特徴

 当てんかんセンターは、てんかんの診断・治療・研究・教育及び社会活動に関わる、診療科横断的かつ包括的な医療・研究事業を推進することを目的に、充実した高度診断機器と経験豊富なてんかん専門医スタッフによる、てんかん専門医育成プログラムを推進している。

 てんかんは、その多くが小児期に発症し生涯にわたる医療支援を必要とし、神経疾患であると同時に精神疾患の特徴を有し、また時に外科治療が適応されるなど、診療科横断的対応を必要とする疾患である。当施設では、精神科・小児神経科・脳神経外科・神経内科・放射線科・臨床検査科などが連携し、MRI、PET、SPECT、MEG、NIRS、デジタルビデオ脳波モニタリングなどの診断機器を駆使して、多数の外来・入院患者及び外科手術例を診療しており、小児から成人までのてんかん患者の診断と治療に関する最新のてんかん学を学ぶに足りる施設と陣容を有している。また併設の神経研究所及び精神保健研究所と連携し、てんかんの病因と病態の解明をめざした研究活動を行っている。

 当レジデントプログラムは、てんかんの診断と治療を専門的に実施することの出来るてんかん専門医を育て、日本のてんかん診療に寄与することを目的とする。希望に応じて、精神科病棟(成人)あるいは脳神経外科病棟(成人・小児)における修練と院内各科カンファランス出席が可能であり、日本てんかん学会や国際学会での発表、国際抗てんかん連盟(ILAE)の主催する教育コースへの出席、国際的なてんかん専門施設への留学が推進される。

3.募集対象および期間

 精神科、神経内科、脳神経外科、小児科あるいは内科医師で、てんかん学研修をめざすもの。期間は3ヶ月から2年で希望に応じる。

4.指導医リスト

(精神科)
1)精神科医長:渡辺雅子(レジデントプログラム長)
 てんかん専門医、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、日本てんかん学会理事、ILAE委員
2)精神科医長:渡辺裕貴
 てんかん専門医、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、日本臨床神経生理学会認定医(脳波分野)、日本てんかん学会評議員
3)精神科医長:岡崎光俊
 てんかん専門医、精神保健指定医、日本てんかん学会評議員
4)非常勤医:加藤昌明(むさしの国分寺クリニック副院長)
 てんかん専門医、精神保健指定医、日本臨床神経生理学会認定医(脳波分野)、日本てんかん学会評議員
(脳神経外科)
5)脳神経外科部長:大槻泰介
 てんかん専門医、脳神経外科専門医、日本臨床神経生理学会認定医(脳波分野)、日本てんかん学会理事、ILAE委員
6)脳神経外科医長:高橋章夫
 てんかん専門医、脳神経外科専門医
7)脳神経外科医師:金子 裕
 てんかん専門医、脳神経外科専門医
8)脳神経外科医師:開道貴信
 てんかん専門医、脳神経外科専門医
(小児神経科)
9)小児神経科医長:須貝研司
 てんかん専門医、小児神経学会専門医、日本てんかん学会理事
10)小児神経科医長:中川栄二
 てんかん専門医、小児神経学会専門医、臨床遺伝学専門医、日本てんかん学会評議員
11)小児神経科医長:斎藤義朗
 てんかん専門医、小児神経学会専門医、小児科学会専門医

5.プログラムの内容

 てんかん学研修において必要と考えられる到達目標は以下のとおりである。この16項目(臨床てんかん学、神経生理、神経画像、神経心理、検体検査、神経遺伝、神経病理、神経薬理、神経疫学、外科治療、精神医学、リハビリテーション、教育・社会・福祉・法制度、関連臨床各科との連携、基礎神経科学、倫理的側面)に基づき研修を実施する。

1.臨床てんかん学(病棟で担当医として指導医の指導のもとに学ぶ。外来で初診について指導医の指導のもとに学ぶ。)

1-1 診察、診断

 てんかん診断のための適切な問診、一般理学的・神経学的・精神科的診察ができる。 国際分類に記載されたてんかん発作(1981年)およびてんかん症候群(1989年)を正しく理解でき、それにもとづいて、発作分類と症候群分類ができる。 てんかんの診断、基礎疾患、合併症の診断のための検査計画と適切な治療計画をたてることができる。

1-2 鑑別診断

 急性反応性発作としてのてんかん発作を起こす急性病態を理解できる。

 慢性病態での発作としててんかん発作を起こす慢性疾患を理解できる。

 てんかん発作に類似した状態を呈する疾患の理解を進める。

1-3 神経救急

 てんかん重積状態の診断と治療ができる。てんかん発作あるいは重積状態を引きおこす急性病態を正しく診断し、治療計画を立て実施できる。

1-4 治療

 治療に関する短期的および長期的展望を具体的に示すことができる。

 各種の抗てんかん薬の特徴と使用法、副作用および他薬との相互作用に習熟し、保護者・患者本人に適切な服薬指導ができる。 てんかんの臨床経過についての知識をもち、治療に対する反応と自然経過をふまえて、適切な治療の開始と終結の判断をくだし、説明ができる。 てんかん外科手術で治療可能なてんかん症候群を鑑別し、適切な時点でてんかん外科専門施設に紹介することができる。

 てんかん患者に合併する症状(睡眠障害、認知障害、発達障害、精神症状等)に適切に対処し、関連他科や3次医療機関との連携ができる。 日常生活、学校・社会生活、進学、職業選択等について適切な指導と援助ができる。妊娠、出産、育児に伴う治療上の問題に対する対処が適切にできる。

2.神経生理(病棟および検査室で担当医として、技師、指導医および脳神経外科専門医の指導のもとに学ぶ。多科カンファレンスで学ぶ。)

2-1 脳波検査、脳磁図

 現在の発作分類(1981年)はelectro-clinical correlationにもとづいており、てんかん症候群におけるてんかん発作・急性病態にともなう急性反応性てんかん発作の診断、てんかん発作類似状態との鑑別診断上、脳波検査は最も重要な検査の一つであり、以下の研修が必要である。

 脳波の基礎波、睡眠波形、各種賦活に対する正常反応と発達的変化を知り、これらの異常を判定できる。

 発作間欠期のてんかん性放電を正しく判読して、各種のartifacts(雑音信号)、てんかん性放電に類似する各種波形・正常亜型(脚注1)あるいは異常とみなされる特殊な波形(脚注2)から正しく判別できる。特殊なてんかん性徐波性脳波異常(脚注3)を判読できる。てんかん発作型、てんかん分類に応じて、適切な賦活法を知り、適切に施行し、判読できる。

 頭皮上脳波での発作時脳波変化を正しく判読でき、臨床症状との相関を検討できる。急性反応性発作の原因となる急性病態および、てんかん重積状態時の脳波を判読して正しく病態を把握できる。

 長時間ビデオ脳波同時記録装置を用いて発作時脳波変化を記録することは、診断に問題がある症例あるいはてんかん外科の適応判定のための発作時てんかん焦点の検索において重要である。T1/T2、頬骨電極を含んだ頭皮上脳波、蝶形骨電極等、さらに慢性に留置された頭蓋内電極からの発作時脳波変化を、個々の検査の特性に配慮して正しく判読でき、臨床症状との相関を検討できる。

 皮質脳波および皮質電気刺激の適応を正しく理解し、適切に結果を評価できる。

 脳磁図のてんかん治療における検査適応を理解して、検査結果を病態に即して適切に理解できる。

2-2 誘発電位、磁気刺激

 各種の短潜時誘発電位を、てんかん焦点・脳内病変(各種一次感覚野の病変)・てんかん病態(光過敏性、皮質ミオクローヌスなど)に応じて、適応を判断し、結果を正しく解釈できる。

 磁気刺激の検査の適応を正しく理解して、各種学会基準ならびに各施設基準を遵守して、施行できる。

3.神経画像(病棟および検査室で担当医として、指導医および神経画像専門医の指導のもとに学ぶ。多科カンファレンスで学ぶ。当院は以下のすべての設備を有している。)

 急性反応性発作をきたす急性病態を正しく診断するための画像検査を正しく施行して、結果を正しく判定できる。

 てんかん症候群において、焦点および焦点と関連する病変を検索するために、各種画像検査を正しく選択して結果を判定できる。海馬病変ならびに皮質異形成を検索するためのMRIの特殊な撮像条件を選択できる。

 てんかん外科の対象となる主な病変のMRI、CT所見に習熟する。

 発作間欠時および発作時SPECT、PETの適応を判断し、核医学科とともに正しく施行できる。機能的MRI、光トポグラフィーの適応を判断し、結果を判定できる。

 
4.神経心理(病棟および検査室で担当医として指導医およびてんかん専門の神経心理士の指導のもとに学ぶ。)

 器質脳障害およびてんかん性機能障害を反映して、高次脳機能の脱落症状がみられることが少なくない。病態の把握、焦点の局在、治療効果の評価のために、神経心理検査の意義と適応を理解し、検査結果を正しく解釈できる。

てんかん外科の適応の決定と術後の状態評価のために、各種神経心理検査は重要な役割を果たす。その意義と適応を理解し、検査結果を正しく解釈できる。

5.検体検査(病棟および検査室で担当医として指導医および検査技師の指導のもとに学ぶ。)

 急性反応性発作をきたす急性病態の検索およびてんかん症候群の病因検索のために、尿・血液・髄液検査、染色体検査等を理解して、必要な検査を施行できる。

6.神経遺伝学(研究所職員の指導のもとに学ぶ。)

 遺伝的に発症するてんかん症候群、あるいはてんかん発作を症状のひとつとする神経変性疾患を十分に理解して、診断・治療ができる。遺伝子診断について基本的な知識をもち、最新の情報を理解する。遺伝に関する相談について、遺伝子診療部等との連携をはかり適切に応じることができる。

7.神経病理(病理専門医の指導のもとに学ぶ。多科カンファレンスで学ぶ。)

 急性反応性発作をひきおこす急性病態としての脳病理、慢性脳病態で病理的診断が可能なもの(てんかん症候群の国際分類のなかの「特異症候群」に相当する)を診断できる。てんかん外科で切除対象となる各種病理所見について理解する。

8.神経薬理(病棟および検査室で担当医として指導医の指導のもとに学ぶ。)

 抗てんかん薬の血中濃度の臨床的意義を正しく理解する。抗てんかん薬の副作用およびその発現機序、肝代謝酵素との関連を習知する。 

抗てんかん薬同士および抗てんかん薬以外の治療薬との相互作用、年齢による抗てんかん薬の薬理学的特徴を理解する。てんかん発作に影響を与える薬物について理解する。

9.神経疫学(病棟で指導医の指導のもとに学ぶ。)

 てんかんおよびてんかん症候群の正しい疫学的知識をもつ。急性反応性発作(熱性けいれんなど)、てんかん重積状態やてんかん類似状態(失神など)の頻度について、正しい疫学的知識をもつ。

10. 精神医学(病棟および検査室で担当医として指導医の指導のもとに学ぶ。)

 てんかん患者の20-40%は精神医学的症状を合併する。発作との関連、抗てんかん薬、心理・社会状態などに留意しながら精神症状を適切に診断し、治療を行うことができる。

11.外科治療(精神科病棟および脳神経外科病棟で、指導医および脳神経外科専門医の指導のもとに学ぶ。多科カンファレンスで学ぶ。当院脳神経外科は難治てんかん手術例の膨大な蓄積がある。)

 乳幼児、小児および成人それぞれの外科治療可能なてんか症候群について正しい知識をもち、手術適応を判断できる。難治性てんかんが引き起こす、発達、知能、学習、就労などに関する様々な神経心理学的・社会的障害を理解し、外科適応症例について遅滞なく適切な手術時期を選択することができる。

 主な切除外科および緩和外科治療について、対象、期待される効果、及び予測される合併症について正しく理解する。神経生理、神経画像、神経心理、Wada testなどの検査を計画・実施できる。

 
12.神経科学(院内の神経科学セミナー、小児神経セミナーなどに参加し、学ぶ。)

広範な領域に展開するてんかん研究の成果を正しく理解しててんかん診療に当たるために、てんかんに関わる各診療科の基盤となる基礎医学の理解が求められる。特に、臨床てんかん学の研修にあたり、基礎的な神経生理学、神経薬理学、神経内分泌学、分子遺伝学、神経発生学の習得を必要とする。

13.リハビリテーション(デイケア、作業療法の場で学ぶ。)

 少なからぬてんかん患者は、発作とともに身体・認知・精神医学的問題や発達障害を合併することにより、生活・教育・就労等に関わる問題をかかえ、結果的に社会参加の障碍および生活の質にかかわる問題を有している。これらの問題の改善にはリハビリテーション治療・療育が有効であり、その適応を正しく理解して、関連部門と協力して施行できる。

14.教育・社会・福祉・法制度(ソーシャルワーカーの指導のもとに学ぶ。)

 てんかんにかかわる福祉・法制度および各種社会組織(患者団体等)について正しい知識をもち、職場、学校等の社会生活の現場での問題を含めて、適切に判断し対応できる。

15.関連臨床各科との連携等(精神科、脳神経外科、小児神経科、神経内科の各種勉強会で学ぶ。)

 てんかんは包括医療であり、外来および入院診療いずれでも、他の医療従事者と緊密に連携したチーム医療が必要である。臨床各科(脳神経外科、小児神経科、神経内科、精神科等)の連携との継続的な相互連携を図ることができる。

16.倫理的側面

 医療において倫理を遵守することは当然のことであるが、特に侵襲的検査や最先端の診断・治療等においては、十分に注意を払わなければならない。治験においても倫理への配慮は重要である。診断、検査、治療、サポートにおいて、患者の人権を尊重し、倫理的側面に最大限の注意を払うことの必要性を理解し、実践ができる。

6.週間スケジュール(精神科プログラム)

  1. 1)月曜日から金曜日まで、交代で初診につき、病歴聴取、検査、診断の指導を受ける。
  2. 2)月、水、木曜日の昼、病棟カンファレンスで担当症例の指導を受ける。
  3. 3)月曜日朝、脳神経外科カンファレンス。
  4. 4)月曜日夕方、精神科・小児神経科・脳神経外科合同カンファレンス。
  5. 5)火曜日朝、てんかん学教科書抄読会。
  6. 6)火曜日から木曜日長時間ビデオ・脳波検査。

7.到達目標と評価

到達目標のレベル
  1. A)3ヶ月で習得をめざすもの
  2. B)6ヶ月で習得をめざすもの
  3. C)1年で習得をめざすもの
  4. D)2年で習得をめざすもの
研修項目 レベル
臨床てんかん学  
  診断 適切な問診、一般理学的・神経学的・精神科的診察ができる。 A
    国際分類にもとづいて、発作分類と症候群分類ができる。 A
    診断のための検査計画をたてることができる。 A
  鑑別診断 てんかん発作を起こす急性病態を理解できる。 A
    てんかん発作を起こす慢性疾患を理解できる。 B
    非てんかん発作との鑑別ができる。 B
  神経救急 てんかん重積状態の診断と治療ができる。 A
    急性てんかん反応の病態診断と治療ができる。 B
  治療 治療に関する短期的および長期的展望を示すことができる。 A
    各種の抗てんかん薬の特徴と使用に習熟する。 B
    治療の開始と終結について適切に判断し、説明ができる。 A
    手術可能なてんかん症候群を鑑別し、外科治療施設へ紹介できる。 A
    合併症状に適切に対処し、他科と連携する。 B
    日常・社会生活について適切な指導と援助ができる、 A
    妊娠・出産に伴う治療上の問題に適切に対処する。 B
神経生理  
  脳波検査 発作間欠期てんかん性放電を鑑別を含めて正しく判読できる。 A
    急性病態およびてんかん重積状態時の脳波を判読して病態を把握できる。 A
    発作時頭皮上脳波変化を正しく判読し、臨床症状との相関を検討する。  
      1. 頭皮上脳波 A
      2. 慢性留置頭蓋内電極 C
    皮質脳波および皮質刺激検査の適応を理解し、適切に結果を評価できる。 C
  脳磁図 脳磁図の適応を理解し、検査結果を病態に即して理解できる。 C
  誘発電位 各種の短潜時誘発電位を、適応を判断し、結果を解釈できる。 C 
  磁気刺激 磁気刺激の適応を正しく理解し、施行できる。 C
神経画像  
    急性病態の画像検査を正しく施行し、結果を正しく判定できる。 A
    てんかん焦点・病変検索のための各種画像検査を選択し結果を判定できる。 A
    てんかん外科の切除対象となる主な病変をMRI、CT等で判定できる。 B
    SPECT, PET, fMRI,光トポグラフィー等の適応を判断し、結果を判定できる。 B
神経心理  
    てんかんにおける神経心理検査の意義を理解し、適切に結果を判断できる。 A
    術前・術後の神経心理検査の意義を理解し、適切に結果を判断できる。 C
検体検査  
    急性病態、てんかん症候群の病因検索のために、必要な検査を施行する。 A
神経遺伝  
    遺伝的に発症するてんかん症候群の診断・治療ができる。
    遺伝子診断について理解し、遺伝相談に適切に応じることができる。
神経病理  
    急性病態と、慢性脳病態で病理診断が可能なてんかん症候群を理解する。 B
    てんかん外科切除対象となる病理所見について理解する。 C
神経薬理  
    抗てんかん薬の血中濃度の臨床的意義を理解する。 A
    抗てんかん薬の臨床薬理を理解する。 B
神経疫学  
    てんかん症候群および急性反応性発作の正しい疫学的知識をもつ。 A
精神医学  
    てんかんに合併する精神症状を理解し、適切に対処できる。 B
外科治療  
    外科治療可能なてんかん症候群の知識をもち手術適応と時期を判断する。
    外科治療の対象,手術法,期待される効果,合併症について理解する。
神経科学  
    んかんに関する基礎的な神経科学について理解を深める
リハビリテーション  
    リハビリテーションの適応を理解し、関連部門と協力して実施できる。 A
教育・社会・福祉・法制度  
    福祉・法制度や社会生活上の諸問題について適切に対応できる。
関連臨床各科との連携  
    臨床各科と継続的な相互連携を行う。 A
倫理的側面  
    倫理的側面について適切に判断し、実践ができる。 A

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