脳神経外科

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診療内容・特色

手術室

NCNP脳神経外科は、てんかんの外科治療や脳深部刺激療法(DBS)に代表される機能的脳神経外科を専門に、正常圧水頭症に対するシャント術や、髄膜腫などの一般脳神経外科にも対応しています。特にてんかん外科は乳幼児から成人まで全ての年齢層を対象に行っており、国内でも有数の手術件数を誇ります。
脳磁図(MEG)やPET、高磁場MRI、長時間ビデオ脳波モニタリング、頭蓋内脳波記録など高度な診断技術を用いて、経験豊富な専門スタッフが他科との診療連携によって、患者さんの生活の質を重視した治療を提供します。また、ナビゲーションシステムや術中モニタリングを併用した安全な手術も特徴です。

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対象となる主な手術

  • てんかん外科: 側頭葉切除,選択的海馬切除,半球離断術,脳梁離断術,迷走神経刺激療法など

  • 脳深部刺激療法(DBS)
    対象疾患: 
    パーキンソン病,ジストニア,本態性振戦,難治性疼痛,トゥレット症候群など

  • 正常圧水頭症に対するシャント術: 脳室腹腔シャント術,腰椎腹腔シャント術,脳室心房シャント術

  • 微小血管神経減圧術
    対象疾患: 
    三叉神経痛、片側顔面けいれん

  • 脳腫瘍摘出術
    対象疾患:
    髄膜腫,神経膠腫など

てんかん外来

NCNP総合てんかんセンターの一員として、てんかん専門医が精神科・脳神経内科・脳神経小児科の医師と連携して専門的な診療を行っています。本当にてんかん発作なのか分からない、治療を始めるべきか判断が難しい、自動車運転や妊娠出産に向けた指導など、ぜひご相談ください。特に、長時間ビデオ脳波検査はてんかんの診断に大きな力を発揮します。てんかん患者さんが抱える精神的問題についても、精神科と連携して対応しております。

  • てんかん発作かどうかの鑑別
  • 内服治療や自動車運転の可否に関するご相談
  • 脳波検査および長時間ビデオ脳波(入院)
  • 発作のある患者さんの薬剤調整
  • てんかんの術前検査と外科手術
  • 迷走神経刺激療法(VNS)
  • 脳深部刺激療法(DBS)
  • 脳波外来:問診のあと当日のうちに脳波を実施し、結果をご説明いたします。

https://www.ncnp.go.jp/hospital/reservation/
(予約はこちら)
「成人てんかん外来」もしくは「脳神経外科外来」、「成人脳波外来」で予約をお取りください。


https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/special/epilepsy.html
(NCNP総合てんかんセンターはこちら)

てんかんのオンライン診療

てんかんのオンライン診療アプリ”nana-medi”を利用したオンライン診療を行っています。直接の受診が難しいときに、スマホを用いて自宅で診療が受けられます。
* 患者さんの状態によっては直接の受診をお勧めすることがあります。

https://www.nanacara.jp/nana-medi/
(nana-mediのサイトへ遷移します)

オンラインによるセカンドオピニオンを実施しています。遠方にお住いの方であっても、ご自宅からセカンドオピニオンを受けることができます。

https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/online_second.html
(オンラインセカンドオピニオン)

てんかん外科

乳幼児から成人まで、あらゆる年齢層を対象にしたてんかん外科を行っています。てんかん専門医が発作症状と脳波を評価し、高磁場MRIやPET検査、脳磁図(MEG)などの専門的な画像診断を併用して治療方針を決めます。SEEG(定位的頭蓋内脳波)や定位的温熱凝固療法など、患者さんの負担や侵襲が低い手術を積極的に取り入れています。

  • 側頭葉切除術/選択的扁桃体海馬切除術
  • 焦点切除術
  • 前頭葉切除術/後頭葉切除術
  • 大脳半球離断術
  • 大脳半球後半部離断術
  • 脳梁離断術
  • 迷走神経刺激装置植込み術(VNS)
  • 脳深部刺激装置植込み術(DBS)
  • 定位的温熱凝固術
  • 定位的頭蓋内電極留置術(SEEG)

以下、当科の特徴である外科治療を紹介します。

乳幼児・小児のてんかん外科

当科では、脳神経小児科スタッフと連携して、難治てんかんをもつお子さんの手術適応の判断と周術期管理を行っています。生後3ヶ月もしくは体重5kgを目安に、乳幼児早期の手術も実施しているのが当科の特徴です。片側巨脳症などに対する大脳半球離断術や多脳葉離断術のほか、脳梁離断術や迷走神経刺激療法などあらゆる手術手技に対応します。てんかん発作を軽減することで、抗てんかん薬を減らしたり、お子さんの発達を改善することを目標に治療しています。

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難治てんかんに対する定位的温熱凝固治療

熱凝固プローブを病変部に向けて正確に刺入し、ラジオ周波によって発生した熱で病変を処置する手術です。一回に約5mmの範囲が凝固され、これを組み合わせて病巣を処置します。島回や脳室壁などにある深部の皮質形成異常や視床下部過誤腫など、開頭手術では到達が難しい場所のてんかんに向いた治療です。

SEEG(定位的頭蓋内脳波)

頭蓋骨に小さな孔を開けて、細い脳波電極を7~12本程度、てんかんの原因が疑われる場所に正確に刺入する手術です。2020年4月に保険適応となりました。この手術で入れた電極から記録する頭蓋内脳波検査をSEEGと呼びます。当科では、てんかんの術前検査としてSEEGを積極的に行っています。開頭が必要ないため、従来の硬膜下電極留置と比べて患者さんの負担が軽く、海馬や島回など深部のてんかん焦点の診断に優れています。



難治てんかんに対するニューロモデュレーション治療

焦点切除術(開頭手術)による治療が難しい患者さんを対象に、以下の治療を実施しています。

迷走神経刺激療法(VNS)のイメー

迷走神経刺激療法(VNS):
左頚部の迷走神経を電気刺激することによって、てんかんの発作を軽減する治療です。最初に手術を行って、電池を含む刺激装置を頚部と胸部に植え込みます。薬物治療と併用して刺激を続けることによって効果を発揮します。

脳深部刺激療法(DBS)のイメージ図

脳深部刺激療法(DBS):
脳内の視床を電気刺激することでてんかんの発作を軽減する治療です。焦点てんかんの患者さんが適応となります。最初の手術で視床に深部電極を挿入し、胸部に刺激装置を植え込みます。VNSと同様に、薬物治療と併用して刺激を続けることで効果を発揮します。

てんかん病変の分子遺伝学的解析(研究)

同意が得られた患者さんを対象に、手術の際に摘出した組織をバイオバンクに登録しています。登録された脳の検体は、新しい診断や治療法を開発することを目的に活用されます。遺伝子解析からてんかんの原因を探ったり、それを新しい診断に結び付けたりする研究を行っています。また、要望のあった他の研究機関に試料を提供して研究に役立てています。

https://biobank.ncnp.go.jp/(NCNPバイオバンクのサイトへ)
https://ncbiobank.org/research/ncnp_perform.php (National Center Biobank Networkのサイトへ)

DBS・定位手術

脳深部刺激療法(DBS)

脳の深部を電気刺激で調整し、運動機能を改善させる療法です。パーキンソン病、ジストニア、本態性振戦が適応です。当院では脳神経内科、精神科、脳神経小児科と連携し、DBSが患者さんに相応しい治療かどうかを検討しています。
DBSの最適なターゲット(電極を入れる場所)は患者さんごとに異なります。当院では視床下核(STN)、淡蒼球(GPi)、視床Vim核など、患者さんごとに最適なDBS治療法を提供しています。
パーキンソン病では、下記のようなときにDBSが有効な場合があります。

  • お薬が効くが効果持続時間が短くなり、1日の症状に大きな波がある
  • お薬が効くが、副作用のために飲めない
  • ジスキネジア(動きすぎの症状)が出やすい

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定位凝固術

過剰興奮している脳の一部分を熱により破壊し、運動機能を改善させる治療です。本態性振戦やその他の不随意運動症で広く行われています。DBSと同じように病気の元となる目標に向かって正確に凝固針を入れますが、DBSとの違いは以下のような点です。

利 点 欠 点
DBS 手術の後に刺激の調整が可能(強弱、場所など) 機械管理が必要
感染の危険がやや高い
凝固術 感染の危険が低い
術後の調整が不要
症状に応じた調整ができない

特発性正常圧水頭症(iNPH)

正常圧水頭症(iNPH)に対するシャント術

脳脊髄液が過剰に溜まり脳に障害を生じる病気を水頭症といいます。交通事故やくも膜下出血などの後に生じる水頭症とは異なり、明らかな原因がなく(特発性)、圧力が高くない(正常圧)ものは特発性正常圧水頭症(iNPH)と呼ばれます。iNPHは高齢者に多く、歩行不安定、失禁、認知機能低下が代表的な症状です。シャント手術によって症状が改善することがあり、「治る認知症」と呼ばれることもあります。当院では物忘れ外来や神経内科、整形外科などと連携し、iNPHを見逃さず適切な治療を行えるように取り組んでいます。

検査入院を行って、手術の効果が期待できるか慎重に判断します。手術の方法(脳室腹腔シャント、腰椎腹腔シャント、脳室心房シャントなど)など、患者さんごとに適切な治療方針を提案します。

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三叉神経痛・顔面けいれん

お薬が効かない三叉神経痛や顔面けいれんに対する手術を行っています。血管が三叉神経や顔面神経の出口を圧迫することによって症状が出現している場合は、手術によって圧迫を解除することで症状が改善します。
診察(痛みやけいれんの性質)と画像検査によって、手術が相応しいかどうかを判断しています。

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顔面けいれんに対する微小血管減圧術

スタッフ紹介

岩崎 真樹の顔写真
岩崎 真樹
役職

部長
手術・中央材料部長(兼任)

経歴

東北大医 平成9年卒(医学博士)

専門分野・資格

日本脳神経外科学会専門医
日本小児神経外科学会認定医
日本てんかん学会認定臨床専門医
日本臨床神経生理学会認定医
日本てんかん学会理事・評議員
日本臨床神経生理学会代議員
日本てんかん外科学会世話人

専門:
てんかん
臨床神経生理
正常圧水頭症

金子 裕の顔写真
金子 裕
役職

医師

経歴

東京大医 昭和63年卒

専門分野・資格

日本脳神経外科学会専門医
日本てんかん学会認定臨床専門医
日本生体磁気学会評議員

専門:
てんかん
脳磁図(MEG)

木村 唯子の顔写真
木村 唯子
役職

医師

経歴

弘前大医 平成15年卒(医学博士)

専門分野・資格

日本脳神経外科学会専門医
日本定位・機能神経外科学会技術認定医
日本てんかん学会認定臨床専門医

専門:
脳深部刺激療法(DBS)

飯島 圭哉の顔写真
飯島 圭哉
役職

医師

経歴

群馬大医 平成21年卒(医学博士)

専門分野・資格

日本脳神経外科学会専門医
日本てんかん学会認定臨床専門医
日本定位・機能神経外科学会技術認定医
日本臨床神経生理学会専門医(脳波分野)

林 貴啓の顔写真
林 貴啓
役職

医師

経歴

群馬大医 平成24年卒

専門分野・資格

日本脳神経外科学会専門医
専門:てんかん

診療実績

●手術実績

年間手術件数内訳 2023年 2022年 2021年 2020年 2019年
合計 120 130 97 119 152
てんかん外科 82 65 56 76 86
 海馬切除・側頭葉切除術 11 8 3 5 8
 皮質切除・病巣切除術 18 4 3 19 17
 脳葉切除術 3 0 0 3 8
 多脳葉切除・離断術 4 1 5 5 3
 大脳半球離断術 3 5 7 3 6
 定位的焦点凝固術 2 6 5 1
 頭蓋内電極留置術 2 0 1 5 16
 定位的頭蓋内電極留置(SEEG) 8 10 8 4
 脳梁離断術 13 9 10 12 16
 迷走神経刺激装置植込術 4 4 5 10 6
 その他 14 18 9 9 6
不随意運動症(パーキンソン病など)に対する定位手術 23 30 27 19 44
 脳深部刺激装置植込(DBS) 10 7 7 6 17
 定位的凝固術 0 0 0 0 1
 その他

13

23

20 13 26
水頭症手術 6 14 3 4 6
 脳室腹腔シャント(VPS) 6 13 3 3 5
 腰椎腹腔シャント(LPS) 0 1 0 1 1
 脳室心房シャント(VAS) 0 0 0 0 0
微小血管神経減圧術(MVD) 0 1 0 0 0
脳腫瘍摘出術 0 1 3 2 0
慢性硬膜下血腫 5 12 5 2 4
その他 4 7 3 16 12

●診療実績

2023年度 2022年度 2021年度 2020年度 2019年度
外来新患数 343 327 295 291 389
入院患者 246 243 190 223 246