自閉スペクトラム症(ASD)

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自閉スペクトラム症(ASD)とは

 言葉や、言葉以外の方法、例えば、表情、視線、身振りなどから相手の考えていることを読み取ったり、自分の考えを伝えたりすることが不得手である、特定のことに強い興味や関心を持っていたり、こだわり行動があるといったことによって特徴付けられます。自閉スペクトラム症は、人生早期から認められる脳の働き方の違いによって起こるもので、親の子育てが原因となるわけではありません。

ASDの症状

診断の時期

 自閉スペクトラム症の症状は、幼少時から認められ、多くの場合、3歳までに診断が可能です。目と目が合わない、にっこりと笑いかけてもほほえみ返さない、指さしが少ない、模倣が少ない、言葉の発達が遅い、語彙が広がらない、こだわりが強い、感覚の過敏さがある、同世代の集団の中に入っていけないといったことがあり、1歳半検診や3歳児検診で指摘されることがあります。しかし、知的能力障害(知的障害)を伴わず、言葉の発達が良好である場合には、小学校入学後や、成人になってから初めて診断を受けることもあります。

特性の現れ方は人それぞれ

 自閉スペクトラム症という同一の診断であっても、話し言葉がない場合から、むしろとても流ちょうに話すけれども会話を双方向的に展開するのが苦手だという場合まで含まれます。目と目が合わない、目を合わせると背けてしまうという人もいれば、日常での社会的やりとりには困難がないけれども相手の考えていることを表情や言葉のニュアンスから読み取ることができない人もいます。また、体を前後に揺すったり、くるくると回ったり、光の前で手をひらひらさせるという人もいれば、昆虫や機械系には強くて、一目置かれているような博士タイプの人もいます。つまり、自閉スペクトラム症に共通する特性はあっても、その特性の程度や困難の現れ方は、人それぞれ異なります。

医療と支援

診断と評価

 医療に求められる役割のひとつは診断です。診断のためには、発達の歩みの過程を確認していき、さらに現在のご様子や経験している困難について確認をしていきます。知能検査では、得意、不得意の差が大きいことが多いのですが、あくまでも参考に過ぎません。てんかんの併存が疑われる場合には、脳波検査が必要になることもあります。また、知的能力障害を始めとする他の神経発達症、うつ病双極性障害、強迫症、不安症、統合失調症などを伴うこともあります。

子ども・学齢期の支援
 
 自閉スペクトラム症の子育てには、さまざまな工夫が必要です。子育ての支援は、医療機関だけではなく、地域における子育て支援機関や療育機関などでも行われます。その子どもが家庭や保育園・幼稚園・学校などで安心して活動でき、さまざまなスキル(コミュニケーション、対人スキル、日常生活スキルなど)を学べるように、その子自身だけではなく、むしろその子の養育に関わる保護者や学校などでの支援を整えていくことが大切です。

思春期以降の支援

 発達段階とともに、その子が直面する発達課題も異なってきますし、思春期以降では、進路や人間関係、就労や家庭生活、余暇活動、自己実現などもテーマになってきます。当事者がその人らしく歩めるような支援を提供できるように準備し、相談に応じられるインフラとして機能することが医療や支援機関の役割といえます。

薬物療法

 薬物療法については、自閉スペクトラム症に認められることの多いかんしゃくなどに抗精神病薬などが使用されることがあります。また、併存する精神疾患には、その病状に応じた薬物療法が実施されます。

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