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精神科 研修プログラム 臨床研究グループ

気分障害研究グループ

 気分障害の研究は神経研究所の疾病研究第3部、精神保健研究所老人精神保健部と連携して行っています。
主な課題研究は、

  1. (1) 遺伝子解析
  2. (2) 気分障害の生物学的マーカー研究
  3. (3) ゲノム創薬
  4. (4) 画像研究

です。

 遺伝子解析に関しては全国組織(JGIMD)によってDNAを集積し、遺伝子解析を行っています。生物学的マーカー研究のひとつとして、現在DEX-CRH負荷試験を用いた研究を進めています。これはうつ病患者の多くにHPA系のレギュレーションに問題があることが知られていますが、さらに詳細を検討する手法としてデキサメサゾンを投与した後にCRHを負荷するDEX-CRHテストが開発されており、その有用性を検討するものです。

 このプロジェクトはドイツのマックスプランク研究所との共同研究です。研究所では疾病研究第3部が中心に行っています。ゲノム創薬の研究は老人精神保健部(うつ病研究グループ)が中心で行っています。

 抗うつ薬の作用機序はまだ十分には解明されていません。これまでの研究は脳に存在する既知の神経伝達物質中心に展開されてきました。しかし、抗うつ薬の投与によって脳内で変化する物質はこれら既知のものに限られません。そこで、うつ病の治療に用いられる薬物や電気けいれん療法などに共通して見られる脳内の遺伝子の変化を捕らえて、そこから新たな手がかりを得ようとする試みが行われているのです。画像研究に関してはPETやSPECTを用いてうつ病のさなかと回復期を比較して、責任病相を明らかにし、治療に対する反応性を予測するなど広範な研究が行われています。

今日、わが国では自殺者が6年間にわたり毎年3万人を超えており、大きな社会問題になっている。自殺者の9割に何らかの精神障害が存在し、そのうち6割はうつ病であるとの報告もある。このような点からもうつ病研究は今最も精力を注ぐべき研究課題のひとつと言える。

脳画像研究グループ

脳の構造MRI画像研究

 脳の構造の異常とはどのようなことでしょうか?それは脳の形態が健常者の脳とは異なるところがあるということです。

 実際に多くの精神疾患で、そのような形態の異常があることが知られています。しかし通常は、そのような異常はとても微細なもので、視察では判りません。そこで詳細なT1強調MRI画像に、voxel-based morphometryという画像解析の方法を使うことで、視察では判らないような微細な構造の異常を発見することができます。

 もうひとつの有力な構造異常を判定する方法に拡散画像があります。実際、MRIはさまざまな脳内の現象を写し出すことができます。その中のひとつに、脳内に含まれる水のブラウン運動、つまり拡散現象があり、これによって脳内の微細な構造の違いを、先ほどとは別の側面から検討することが可能になります。

 この手法をさらに推し進めたものが拡散テンソル画像です。実は神経細胞は非常に細長い格好しているものが多いのです。この細長い部分を構成するのが、神経細胞から出て次の神経細胞に電気を伝えるための電線で、軸索と呼ばれています。軸索は当然水の分子をたくさん含んでいます。しかし、それがあまりにも細長いために、ブラウン運動で自由に動き回る水分子の方向は限られているのです。つまり軸索が伸びている方向には、水分子は自由に動き回ることができますが、それ以外の方向ではあまり動けません、動くとすぐに軸索の細胞膜にぶつかってしまいます。

 このようなわけで、どの方向にブラウン運動しやすいかが分かれば、逆に軸索がどの方向に伸びているかが分かるのです。この考えを元に、方向による拡散の違いを画像に表したものを拡散テンソル画像といいます。わたしたちは、統合失調症の遺伝子研究という大きなプロジェクトのなかで、双子の画像研究を受け持ち、上記のような方法を使って、双子の脳の間の微細な構造の相違を検討しています。この研究は、統合失調症の遺伝研究で、将来基礎的なデータを提供することになるのです。

脳の機能MRI画像研究

 脳の機能は神経細胞の電気的活動を基礎としています。頭皮上からこの脳組織の電気活動を計測するのが脳波です。脳波は、脳のとても速い活動を的確に捉えることができます。

 しかし、その捉えた活動が脳のどこから発しているかをはっきりとは教えてくれません。一方MRIは、磁場と電波の力を借りて、脳内の水のプロトン原子の核磁気共鳴信号から脳の画像を作ります。さらに、BOLD contrast imagingという技術を使えば、そこに脳内の血流の情報を載せることができます。つまり、脳内のある場所が活発に活動すればその部分の血流が増えますが、その場所を脳のMRI画像上に描きだしてくれるのです。この技術を機能MRIと呼んでいます。機能MRIはとても高速に脳内を写し出してくれます。一枚の画像を写すのに0.1秒もかからないのです。そこで、わたしたちはこの脳波と機能MRIを同時に計測できる技術を独自に開発しました。なぜそんなことを?

 それは、これら二つの計測を同時におこなうと、これまで見えなかった脳波の活動をMRI画像の上に描き出すことができるようになるからです。

 現在、わたしたちはこの技術を使って、さまざまな応用を試みています。例えば、てんかんでは、発作を引き起こす異常波がいったい脳のどこから発しているかを的確に描き出すことができます。これによって、てんかんの特徴を明らかにし、効果的な薬物の選択・判定に役立てることができるのです。わたしたちは、この検査をてんかんの標準検査にすべく、試験的な検査を続けています。あるいはまた、睡眠中の脳波には、覚醒中の脳波にはないさまざまな特徴的な形をした脳波が見られます。しかし、それらがどこから出現するのか、これまでわかりませんでした。わたしたちはこのような脳波現象にも挑戦し、紡錘波と呼ばれる波が脳のどこから出現しているのかを明らかにしました。今後はさらに応用範囲を広げて、この技術を精神疾患の診断や治療に役立てていくつもりです。

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