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放射性トレーサー研究室

新規標識反応を基軸にした精神・神経疾患等の画像診断に有用な放射性薬剤やPETトレーサーの合成および開発を行います。

室長プロフィール

加藤 孝一
Kohichi Kato, Ph.D.
博士(理学)

愛知県出身。1999年に名古屋大学大学院理学研究科博士後期課程を修了し学位(理学)を取得。大学院在学時は、日本学術振興会特別研究員制度の支援により、プロスタサイクリンの受容体プローブの合成研究に従事した。その後、日本学術振興会海外特別研究員制度等の支援により、2003年までUppsala大学のPETセンターで博士研究員、2005年まで大阪市立大学大学院医学研究科で博士研究員、2006年まで理化学研究所で研究員、2011年3月まで放射線医学総合研究所で主任研究員を経て、2011年4月より現職。学位取得後は、一貫して現在の研究テーマである短寿命ポジトロン放射核種の標識法の開発とPETプローブの合成研究に従事している。
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研究室紹介

新しいPET薬剤の開発研究は、標的分子の設計から始まり、薬剤の標識合成、モデル動物等を用いた評価を経てヒトへ臨床応用されます。標的分子の分子設計では、放射性同位元素を導入する標識反応も考慮してリード化合物を設定しなければなりません。また標識反応は分子設計後の標識合成にも関わっています。

11C標識に有用な反応の研究は、新規PET薬剤開発の基盤となる重要な分野ですが、これまでほとんど手がつけられてきませんでした。その結果、11C標識薬剤の設計において考慮される標識反応のほとんどは、最も一般的な標識前駆体であるヨード[11C]メタンを利用した窒素、酸素、硫黄上への[11C]メチル化反応です。標識前駆体はsub-micromolarスケールの希薄かつ微量な条件下で取扱う必要があり、かつ12Cの混入量は制御できないことから、堅牢で信頼性が高い反応が標識合成には求められるからです。また、標識合成は11Cの半減期が約20分と短いことに加えて、放射線防護の観点から遮蔽ホットセル内に設置した合成装置を利用する必要もあり、操作、時間等非常に限られた条件で実施しなければなりません。さらに、薬剤合成には、反応のみならずHPLC等による分離精製も含めた工程全体の考慮も必要です。新規標識反応の開発やPET薬剤の合成研究にブレークスルーをもたらすためには、こうした短寿命ポジトロン放射核種を取扱う化学の特徴を考慮した「有機放射化学」という新しい研究概念が必要であると考えています。

放射性トレーサー研究室は、「有機放射化学」に基づく新しい標識反応の開発を出発点としながら、新規PET薬剤の合成開発研究を展開しています。その狙いは、基盤となる標識反応を増やすことで、反応を基軸にした柔軟な分子設計が可能になり、標識できる薬剤の裾野を格段に拡げることにあります。そのような研究成果は、これまでになかった化学構造を持つ多彩なプローブの開発と、分子イメージング研究全体の発展に繋がると考えています。 また、放射性トレーサー研究室は、国立精神・神経医療研究センター病院で実施されるPET研究に使用されるPET薬剤の合成も支援しています。現在、[18F]FDGに加えて[11C]メチオニン、[11C]PIB、[11C]ラクロプライドの標識合成が可能であり、今後さらに様々なPET薬剤の合成にも対応する予定です。

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