自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議
平成十七年七月十九日
参議院厚生労働委員会
警察庁が公表した「平成十六年中における自殺の概要」によると、我が国では昨年一年間に三万二千三百二十五人が自ら命を絶っており、七年連続で三万人を上回っている。また、人口十万人当たりの自殺死亡率は、我が国では約二十五・三人となっている。欧米の先進諸国と比較すると、我が国の自殺死亡率は突出して高い。さらに、自殺未遂は既遂の十倍以上あると言われており、年間自殺者が三万人を上回るということは、未遂者が三十万人以上いると推計される。また、自殺や自殺未遂により、遺族や友人など周囲の少なくとも数人が深刻な心理的影響を受けるとされており、全国で毎年、百数十万人の人々が自殺問題に苦しんでいることになる。

政府は、平成十三年度から自殺防止対策費を予算化し、相談体制の整備、自殺防止のための啓発、調査研究の推進等の対策に取り組んできた。平成十四年には、自殺防止対策有識者懇談会が「自殺予防に向けての提言」を取りまとめ、包括的な自殺防止活動の必要性を訴えている。しかしながら、その施策が個人を対象とした対症療法的なものに偏っていたこともあり、その後も自殺者数は、なお高い水準にある。

多くの自殺の背景には、過労や倒産、リストラ、社会的孤立やいじめといった社会的な要因があると言われている。我々は、世界保健機関が「自殺は、その多くが防ぐことのできる社会的な問題」であると明言していることを踏まえ、自殺を「自殺する個人」の問題だけに帰すことなく、「自殺する個人を取り巻く社会」に関わる問題として、自殺の予防その他総合的な対策に取り組む必要があると考える。

政府においても、このような認識の下に、これまでの自殺防止関連施策が十分に効果を発揮していない現状を検証し、自殺による死亡者数の減少と自殺死亡率の引下げを図るとともに、自殺した人の遺族や自殺未遂者に対するケアの充実を図るため、次の事項について、緊急かつ積極的に施策を推進することによって、自殺問題に関する総合的な対策を講ずるべきである。

一.政府は、自殺問題に関し、総合的な対策を推進するため、関係府省が一体となってこの問題に取り組む意志を明確にするとともに、対策の実施に当たって総合調整を進める上で必要な体制の確保を図ること。

二.効果的な自殺予防対策を確立するため、自殺問題に関する調査研究や情報収集・発信等を行う拠点機能の強化を図るとともに、自殺の原因について、精神医学的観点のみならず、公衆衛生学的観点、社会的・文化的・経済的観点等からの多角的な検討を行い、自殺の実態の解明に努めること。

三.自殺問題全般にわたる取組の戦略を明らかにし、個人を対象とした対策とともに社会全体を対象とした対策を重点的かつ計画的に策定し、その実施に必要な予算の確保を図ること。

四.情報の収集・発信等を通じ、関係府省が行う対策を支援、促進し、地方公共団体や日夜相談業務等に携わっている民間団体等とも密接に連携を取りながら、総合的な対策を実施していく「自殺予防総合対策センター(仮称)」を設置すること。

五.自殺した人の遺族や自殺リスクの高い自殺未遂者に対する支援については、プライバシーへの配慮を含め、万全を期すこと。その際、全国で百万人を超えると言われる遺族や自殺未遂者に対する心のケアが自殺の社会的・構造的要因の解明や今後の自殺予防に資することの意義についても、十分認識すること。

右決議する。