タイトル画像 研究紹介 [About Our Studies]

新たな地域精神保健医療体制の構築のための実態把握および活動の評価等に関する研究

  • 竹島正・立森久照((独)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所))
  • 森川将行(三重県立こころの医療センター)
  • 久保野恵美子 (東北大学大学院法学研究科)
  • 丸田敏雅(東京医科大学精神医学講座)
  • 粟田主一((地独)東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 河﨑建人(水間病院・全国精神医療審査会連絡協議会)
  • 岩谷力(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 高橋邦彦(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 川上憲人(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)
敬称略 所属は平成27年3月31日現在

医療介護総合確保推進法が成立し、医療法改正によって、一般医療においては、2025年に目指すべき医療機能別必要量等、医療提供体制の枠組みと実現方策が 策定される見込みの中、精神保健医療福祉の改革の進捗状況の把握、その背景となる疾病分類および改革推進の重点課題の検討、精神科医療機能別必要量の算定 方法の検討を目的とした研究が、平成24-26年度に行われました。

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H24-26 総合PDFファイルのダウンロード
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自殺総合対策大綱に関する自殺の要因分析や支援方法等に関する研究

「自殺総合対策大綱に関する自殺の要因分析や支援方法等に関する研究」の報告書については、下記よりご覧ください。

精神保健研究所自殺予防総合対策センター 研究報告書一覧

精神科病院の入院処遇における医療水準の向上システムの開発に関する研究(PECO: Psychiatric Electronic Clinical Observation 研究)PECOページへのリンクボタン

  • 山之内芳雄
  • 三宅美智

精神科入院医療環境の変化に伴い,わが国でも医療の質を考える際に外形的なものからプロセスやアウトカムを求められるようになってきました。しかし,動態サーベイや「良い医療とは何か」に対する答えは未だ明らかにはなっていません。そこで精神科入院医療のプロセスを中心とした中身についての全般的なデータを収集し,国際的な比較も視野に置いたベンチマーキングを提供することの必要性が高まってきました。
現状では,さまざまな立地・文化の中でそれぞれの病院が,日々工夫と努力を重ね精神医療を行っていますが,それらのスタンダードはどのあたりにあるのかを客観的に知り得るソースは限られています。そこで,今,提供している医療はどこがどのくらい良質といえるのか? 自院の優れた点はどこか? について,それが「見える」システムを作成しました。現在,電子カルテから日常の業務での入力内容がそのままデータ収集されるシステムが完成し,その運用を開始しています。今後はより多くの施設に参加していただくことを目指し,システムの普及を推進しているところです。このシステムによりデータが蓄積され,分析を行うことにより,患者がどのような動態をたどるのか,地域における医療資源必要量の推定や,医療体制のあり方の検討における資料になると考えています。また,世界的にもまだ見いだされていない「良い医療とは何か」に対する答えを探索することも目的に研究を行っています。

  • 山之内芳雄 近影
  • 三宅美智 近影

精神科医療サービスの利用状況に関する調査研究(630:精神保健福祉資料に関わる研究)精神保健福祉資料に関わる研究ページへのリンクボタン

  • 立森久照
  • 菅知絵美
  • 加藤直広
  • 臼田謙太郎
  • 後藤基行
  • 竹島正
  • 山之内芳雄

精神保健計画研究部では全国の精神科医療サービスを提供している病院や診療所などを主たる対象に,それらの施設で提供しているサービスの利用状況を明らかにするための調査を毎年実施しています。この調査は精神科医療サービスを提供している施設ほぼ全てを対象としており,これに類する調査は他にありません。この調査結果は精神保健福祉資料として結果が公開され,国や地方自治体の施策の検討や評価の際に利用されています。
また例年の調査に加えて,喫緊の政策課題の検討や施策の評価のために,それぞれの目的に応じた精神科医療サービスの利用に関する調査研究も随時企画,実施しています。その一例として,精神科医療における受療行動の現状把握,受療行動の分析,疾患発生等の将来予測のためのモデルの検討を行っています。この調査研究では,予測モデルの検討のみならず,各地域の特性を考慮した精神科医療サービスの構築のために精神科医療サービス資源やそれらのサービス利用者の分布などを空間疫学的な手法を用いて地図上に可視化することも名古屋大学の研究者などと協同で行っています。

  • 立森久照 近影
  • 菅知絵美 近影
  • 加藤直広 近影
  • 臼田謙太郎 近影
  • 後藤基行 近影
  • 山之内芳雄 近影

抗精神病薬の多剤大量処方の現実的な是正について(減薬に関する研究)抗精神病薬の適正化ページへのリンクボタン

  • 山之内芳雄
  • 吉村直記(病院第一精神診療部医長)

わが国の抗精神病薬の処方は海外と比べて,たとえば4剤・5剤で3000mg(クロルプロマジン換算の1日量) を超えるような処方が未だ多いといわれています。一方で,既に大量処方されている方から急に減量を試みると,DSP(ドーパミン過感受性精神病)という新たな病態を引き起こす恐れもあります。しかし,大量処方の方の高齢化による医療安全の立場からは,多すぎる処方の是正を求める声もあります。
その中で,既に大量処方となっている人が,安全かつ現実的に適度な減量ができるように,研究に取り組んでいます。また,平成24年までに行われた臨床研究の結果と,医療関係者が適度な減量を行える支援ツールを公開しています。

  • 山之内芳雄 近影

「精神疾患予防とこころの健康増進に関する研究」

  • 西大輔
  • 臼田謙太郎
  • 三宅絵美

私たちは現在,うつ病をはじめとする精神疾患の予防およびこころの健康増進に関する研究に携わっています。主なものに,妊婦の精神健康に関する研究,産業精神保健に関する研究,健康日本21に関する研究があります。
妊婦に関しては,妊娠中のうつ病が母子の双方に悪影響を及ぼしうるため,胎児期からの予防という観点からも妊婦の精神健康が重要であることが指摘されてきています。また,妊婦がうつ病等になった場合には薬物療法を行いにくいため,安全で有効な予防法・治療法の開発も求められています。そこで,東京医科大学,中国医薬大学(台湾),戸田中央産院,国立成育医療研究センター等と連携し,日本における妊娠中の精神保健上の問題やその関連要因を明らかにするとともに,妊娠うつ病の治療および産後うつ病の予防として栄養学的介入の安全性・有効性を検討するための研究を実施しています。
また,現在わが国では,うつ病をはじめとする精神疾患による休職者や,労災申請件数・支給決定件数が相当数に上っており,職場におけるうつ病等への対策や予防が重要な課題になっています。そこで,東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野とも連携しつつ,働く人および職場のメンタルヘルス増進に寄与する研究を行っています。 さらに,厚生労働省が推進している健康日本21(第2次)の「こころの健康・休養」では,睡眠による休養を十分取れていない者の割合の減少が目標に挙げられていることを踏まえ,睡眠衛生向上に資する研究にも取り組んでいます。

主要著書・監訳書:
「うつ病にならない鉄則」(マガジンハウス、2012)
「レジリエンス:人生の危機を乗り越えるための科学と10の処方箋」(岩崎学術出版社、2015)

論文等の業績は下記をご参照ください。
http://researchmap.jp/d-nishi/
http://researchmap.jp/2887/

  • 西大輔 近影
  • 臼田謙太郎 近影
  • 三宅絵美 近影

こころの健康についての地域疫学調査

  • 立森久照

精神障害への罹患などを含めたこころの健康問題は,それを経験する本人への影響が大きいだけでなく,家族,友人,職場の同僚などの周囲の人々,ひいては社会全体へも大きな影響をもたらします。そうした影響を小さくするための対策を考えるためには,そのような問題が,どこにどれだけ存在するのか,どのような人に起こりやすいのかなどの基本的な情報が必要です。
そこで,一般にcommon mental disordersと呼ばれる気分障害,不安障害,PTSD,アルコール・薬物依存症などの比較的頻度の高い精神障害の地域住民における頻度および社会生活への影響を明らかにすることを目的とした調査研究を実施しています。また効果的な介入やサービスを利用しやすい環境作りの検討のために,こころの健康問題によるサービス利用の実態やcommon mental disordersと関連する要因についての情報も集めています。
現在は東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野と協同して,ストレスと健康・全国調査2014(世界精神保健日本調査セカンド)(外部リンク)を実施しています。またこの調査の前身のこころの健康に関する疫学調査(世界精神保健日本調査)の結果などもご覧いただけます。
またこの研究は世界保健機関(WHO)とハーバード大学医学部が進めている世界最大の精神障害についての地域疫学研究の国際共同研究プロジェクトWorld Mental Health(外部リンク)の一環でもあります。そこでは,東京大学,ハーバード大学,キングス・カレッジ・ロンドンなどの国内外の大学,研究機関の研究者と協同でこころの健康問題によるサービス利用の実態を明らかにするために,世界中の国々から集められた大規模データを用いた分析などを行っています。

  • 立森久照 近影

階層ベイズモデルを用いた政策評価および臨床研究の方法論的検討と応用

  • 立森久照
  • 加藤直広
  • 伊庭幸人

データ解析を行う際には「分けるか分けないかの二分論では上手くいかない」ことが多くあります。例えば,ある特定の病気の治療のために,さまざまな施設でいろいろな治療を受けた患者のデータを利用して,医療の質指標として治療後の死亡の発生のリスク(以下,死亡リスク)を推定する場合を考えます。
全体をひとまとめにして,治療後の死亡リスクを推定することはできますが,それによって分かるのは全体を平均したリスクです。実施施設や治療方法が異なれば,死亡リスクが異なる可能性が高いので,それを考慮した推定も行いたいのが通常だと思います。また,死亡リスクが異なる様々な施設や治療方法をひとまとめにして扱ったために,推定に偏りが生じる危険性もあります。 では,実施施設や治療方法ごとにデータを細かく分割して単純に解析を行えばよいかといえば,そうではありません。データを細かく分割すると,今度はそれぞれの分割した部分に含まれる症例数が少なくなり過ぎて,死亡リスクの推定のバラツキが大きくなりすぎます。
そこで,データを分けるか分けないかの二分論ではない手法が必要となります。階層ベイズモデルでは階層事前分布で柔らかく縛ることで実施施設や治療方法ごとのリスクの安定した推定が可能となります。
以上は臨床研究を例に説明しましたが,当部のもう一つの関心領域である政策評価の文脈では,地域や実施したプログラムごとの目標値の改善効果の安定した推定が可能になることに対応しています。
この研究では臨床研究や政策評価において階層ベイズモデルを利用して,上述の問題に対処した推定値の算出を行っています。また既存の階層ベイズモデルの手法の実データでの応用だけではなく,臨床や政策評価のデータに合った新しい手法の展開も必要なため,統計数理研究所の研究者などと協同して方法論の開発にも取り組んでいます。

  • 立森久照 近影
  • 加藤直広 近影

精神保健医療福祉に関連するアーカイブズを利用した精神病床入院の研究

  • 後藤基行
  • 中村江里
  • 竹島正

現在,精神保健医療福祉の領域では,いかに入院医療中心から地域生活中心への改革を推し進めることが出来るかが政策的なミッションであり,そこでは,まず30万床を超える精神病床をいかに削減していくかが課題となっています。
しかしながら,そもそもなぜ日本はこのような大規模な精神病床ストックを保持しているのか,なぜ持つことが出来たのかという問いがあります。これは,現代の問題の背景にはいかなる構造があったのか,ということを問うことです。そして,この原因の解明には,歴史的な検証しか回答を与えてくれません。
NCNPには,NCNP病院の起源である傷痍軍人武蔵療養所時代のものを含め,戦中期から戦後にかけての精神医療に関係する貴重な診療録や全国疫学調査のオリジナル資料が,相当量の規模で保管されています。
これらの資料の保存措置と整備を行いつつ,精神病床入院が歴史的にどう展開されてきたのかについて,特に医療費支払区分別という観点,ならびに家族世帯の社会的要因に着目しながら,量的・質的な研究を行います。
これまでの研究によって,戦後の急激な精神病床増・入院増を牽引してきたのは,先行研究が強調する措置入院に象徴される公安的なものではなく,家族の同意による「同意入院(医療保護入院)」と生活保護法での医療扶助の組合せという、救貧・公的扶助的な入院だったことが明らかになってきています。このような研究を通じて,臨床的な医学的見解とは別に,どのような社会経済的諸要因が精神病床入院と関係があったのか,またどのような要因が長期在院化と関係があったのかについて,政策史的・社会科学的な検証を行っています。

論文等の業績は下記をご参照ください。
http://researchmap.jp/mgoto/

  • 後藤基行 近影

精神医療の行動制限最小化に参画するピアサポーターの教育プログラムの開発と普及

  • 三宅美智

精神科入院医療において,隔離・身体拘束者数の増加は深刻な問題となっています。その対策として,多くの精神科病院では行動制限を最小化するための検討を行うための委員会を定期的に開催しています。しかし,隔離・身体拘束者数は増加の一途をたどっている現状があります。委員会の開催だけでは,この現状に変化をもたらすことが困難であるということが言えます。そこで,隔離・身体拘束を減少させるための新たな手法の確立が必要であると考えました。
隔離・身体拘束の実施を減少させるためには,医療従事者の意識改革が必要であると言われています。しかし入院環境で提供される医療は閉ざされており,意識改革には第三者の働きかけが必要です。その第三者として,精神障害を抱える当事者がその役割を担うことができると考えています。平成24年度から三年間かけて,精神障害を抱える当事者とともに,病院で行われている行動制限最小化委員会への参加や,病棟で隔離・身体拘束の体験を振り返るためのグループを行いました。それにより,行動制限を最小化するための活動に当事者が参加することが,臨床現場にさまざまな影響をもたらすことが分かりました。その一方で,当事者を活用することに,医療従事者が多くの不安を抱えていることも分かりました。
現在は,行動制限の最小化に当事者が参画できるように,また医療従事者が安心して当事者を活用できるように,そのために必要な教育プログラムについて検討する研究を行っています。

  • 三宅美智 近影

精神保健医療に関する政策系のクラスターチーム

  • 山之内芳雄・西大輔・立森久照(精神保健計画研究部)
  • 藤井千代・佐藤さやか・山口創生(社会復帰研究部)
  • 鈴木友理子(成人精神保健研究部)
  • 菊池安希子・河野稔明(司法精神保健研究部)

この精神保健研究所には,社会政策を取り扱う部門がそれぞれの目的に応じて複数あります。喫緊の政策課題の解決のための研究活動を行うには,複数部門が垣根を越えた総合的な検討をする必要があります。
地域医療構想への適切かつ効果的な対応,人口減少社会での地域移行「後」の地域精神保健のあり方,医療観察法運用で作られた医療モデルの一般精神医療への展開,などを,関係団体・厚生労働省などと緊密に協議しながら,研究所の役割の中で課題に向かっていきます。

  • 山之内芳雄 近影
  • 西大輔 近影
  • 立森久照 近影