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フランス Plan Psychiatrie et Santé mental 2005-2008
背景
1)精神障害罹患率(2003年疫学調査の結果より)
1.  慢性精神障害(psychose délirantes chronique)者は300,000~500,000人おり、その中の20,000~250,000人が統合失調症です。
2.  うつ病性障害の生涯罹患率は12%でその内の1.5%は双極性障害です。
3.  パニック障害の生涯罹患率は1.5%で恐怖性障害を入れると4%です。さらに強迫性障害は2%、PTSDは0.5%です。
2)精神医療・保健・福祉
フランスではセクトゥール制という精神医療体制が整備されています(訳者註:フランス独特の公的精神医療・福祉サーヴィス体制である。地域で生活する住民すべての精神医療・福祉ニーズに対応するために人口地理学的地域を設定した。この中で精神医療・福祉サーヴィスに必要な体制が組織化されている。入院外の継続治療、予防、発症の早期発見、最後に入院治療を目的としたフランス独自の制度が開発された。セクトゥール制とよばれている)。全国に829の成人精神医療セクトゥールと320の小児・児童精神医療セクトゥールがあります。それぞれのセクトゥールには少なくとも一ヶ所のCentre Médico-Psychologique(CMP:医学心理センター)、hopital de jour(昼間病院、デイケア)、apartment thérapeutique(治療的アパート)、Centre d’Accueil Thérapeutique à Temps Partiel(CATTP:時間限定治療センター)などを備えています。セクトゥール制に所属する公的精神病床数は、61,500床でここに6,600人の精神科医が配置されています。個人病院には10,000床、法人組織に3,000床の入院病床があります。
3)問題点
1.  予防(健康政策)と治療との乖離
a.  病床数、後治療機関・施設(訳者註:退院後、病院外で対応する医療・福祉資源)の地域間格差
b.  専門職配置の地域間格差
2.  専門職の員数
精神科医数は13,200人で10万人対19.9人です。この数はスイスに次いで多く、フランス国内の全専門医の13%にあたります。精神科看護師は58,000人で不足しています。この両者に加え、心理士、ソーシャルワーカーその他の専門職の適正配置に関心が高まっています。
概要
2005から2008年に向けての精神保健改善計画が「連帯・健康・家族省大臣(Ministre des Solidalités, de la Santé et de la Famille)」Philippe Douste-Blazyによって2005年7月4日通達として提出されました。表題は、「Plan Psychiatrie et Santé mental 2005-2008」です。この計画は、4つの優先事項と2つの特別計画からなっています。
内容
1)病院の整備、活性化
過去10年間に病床数は50%に削減されました。一方、現存の精神病院の構造的、機能的かつ人的環境は不良のままとなっています。今後病床の削減は保留して現存病院の改築、必要とあれば新たな病院の建設を目指します。完全入院(全日入院)者の居住・治療環境を整備します。精神科専門病院、総合病院精神科病棟、大学病院センターの精神科病棟の居住性の向上、セクトゥールからの患者受け入れの向上を目指します。
2)マンパワーの充実。隔離の壁ではなく人こそ力である。
全日入院者へのサービスの向上、精神病院センター、大学病院での救急サービス体制を整備します。
セクトゥール制勤務医(訳者註:公的制度に基づいた機関に勤務する精神科医)の員数、給料を改善します。精神科医の年250~300人の増員と医師、コメディカルのポストを新たに2,500人分用意します。
3)精神科看護師の養成
病院外勤務の専門看護師5,000人の養成、そのために先輩看護師による新人看護師教育にチューター制度を導入します。
4) 社会的および医療社会的サービスをボランティアと共に充実させます。現在入院中の患者の10,000人は病院外の医療資源の充実で通院可能となります。
訪問治療サービスの拠点を1,900ヶ所作ります。
1,000ヶ所の患者相互扶助機関‘クラブ’を作ります。
1,000ヶ所の医療社会的住居を作ります。
入院に替わる選択肢として、昼間病院、夜間病院、週間病院、医療心理センターを増設します。
5)他の二つの特別計画
1.拘留者への対応
受刑者で治療を必要とする患者はUHSI :Unités hospitalières sédurisées interrégionales(地域間保安病棟)に必要に応じて入院していますが、その数は10年間で5倍に増加しました。したがって、今後19ヶ所のUHSA :Unités hospitalières spécialment amenagées(矯正病棟)を新設します。法務省と協同でそのうち5ヶ所を最重要施設として対応します。
2.うつ病と自殺対策
フランスでは必要以上に抗うつ薬が多用されています。人生上の困難に基づく抑うつ状態への対応は精神医学にとっても困難です。そこで2つの行動計画をたてました
INPES(予防、健康教育研究所)による教育キャンペーンを行います。その中心は、「抑うつ」と「うつ病」とは異なり、悲しみには抗うつ剤は効果が乏しいことを強調することです。フランスは、高齢者の自殺者数がヨーロッパ諸国の中でもっとも高く、青年の自殺は二番目に高くなっています。自殺対策には妙案はないけれども連帯・健康・家族省と教育省が協同で計画をたてています。学校保健担当の専門医師を配置し、生徒の心理的援助をおこないます。
児童思春期病院が未だ配置されていない10県に専門病院を作りさらに児童思春期専門の精神科医を養成します。
上記の計画の予算として、建物に対して2006年から2010年の間に計7.5億ユーロ(訳者注:日本円約1125億円)、活動費に対して2005年から2008年の間に2.8億ユーロ(約420億円)を支出します。
関連サイト
Psychiatrie et Santé mental 2005-2008
2005から2008年に向けての精神保健改善計画の全文がダウンロードできます。
Le livre blanc de la Fédération Francaise de Psychiqtrie 2003-Editions John-Libbey
フランスにおける疫学調査に関して、全文がダウンロードできます。
このページは、社会福祉法人恵友会理事長 菅原道哉先生の全面的なご協力のもとに作成しました。
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