中国
中国の精神衛生法の日本語訳
中国における精神保健に関する法令の原文と日本語訳の対照表を掲載します。この日本語訳は国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部の趙香花、並びに徐暁紅(東京大学大学院総合文化研究科学術研究員)の2名によって翻訳されたものであり、この翻訳の利用に伴い発生した問題については一切の責任を負いかねます。
・中国の精神衛生法
精神障害者関連政策
1.全国精神病予防・治療・リハビリテーション政策
中国では、「障害者保障法(1990)」の制定によって、障害者に対する福祉政策が法的根拠に基づくこととなり、1991年から障害者事業の一環として「全国精神病予防・治療・リハビリテーション政策“八・五”実施方案(以下、「実施法案」と略す)」が展開されています。
主な内容
「実施法案」の主な内容は、
@精神疾患患者へのリハビリテーションサービスの提供、
A貧困患者への医療救助、
B人的資源の養成、
C精神保健知識の普及および宣伝、などです。

当政策は5か年計画で実施されるもので、1996年からは「“九・五”実施方案(1996〜2000)」、2001年からは「“十・五”実施方案(2001〜2005)」が展開されていました。そして、現在は2006から始まった「“十一・五”実施方案(2006〜2010)」の過程にあります。
成果
2007年の中国障害者連合会の統計によると、当政策の実施によって全国の1,555の市・県において440万人弱の重度精神疾患患者に治療とリハビリテーションを提供し、約33.7万人の貧困患者に医療救助を行っていました。また、精神疾患患者の社会復帰率は56.07%で、監禁されていた10,781人の患者が解放されています。
2.精神衛生法の立法状況
中国では1985年から、「精神衛生法」の立法作業が始まっているが国家レベルの「精神衛生法」は未だに成立していません。一方、大都市である上海市では2002年の4月から全国初の「精神衛生条例」が実施されており、その他の地域(寧夏市は2005年、北京市・杭州市は2006年、無錫市は2007年、など)においても精神衛生条例の制定が少しずつ進められています。
3.中国精神衛生事業計画(2002−2010)
中国政府は立ち遅れている精神医療・保健福祉の発展を促進するため「中国精神衛生事業計画(2002−2010)」を打ち出しました。
精神衛生事業計画には@精神衛生法及び関連政策の制定、A精神衛生サービス体系の形成、B精神医療及びリハビリテーションサービスの改善、C精神衛生関連機関の整備、D人材養成、E精神保健知識の普及、などに関する規定が示されています。
4.“686”精神衛生プロジェクト
“686”精神衛生プロジェクトの正式な名称は「中央補助地方衛生経費重度精神疾患管理治療項目(以下、『“686”事業』に略す)」で、事業費用は2004年の686万元から2009年には4633万元に増加しています。
“686”事業の主な内容は
@重度精神疾患患者の登録
A精神科医療費の補助
B監禁患者の開放
C人材育成
などです。
“686”事業の成果
2007年9月、上海市で開催された「世界精神医学会(WPA)」での発表によると、“686事業の実施によって、以下の成果を上げています。
*2006年末までに延32,681人に教育・人材育成を行いました。
*重度精神疾患者の電子カルテを11,854件作成しました。
*重度精神疾患者として65,149人が登録しました。
*貧困患者9,182人に無料給薬サービスを提供しました。
*貧困患者1,038人に無料入院サービスを提供しました。
*その他の医療サービスの提供も延べ81,680件ありました。
関連研究
趙香花、新福尚隆:中国における精神医療・保健福祉の現状と動向.日本社会精神医学会雑誌17(2)、pp197−203、2008.
趙香花:精神保健福祉施策の展開―中国.日本精神保健福祉士養成校協会編:新・精神保健福祉士養成講座B精神科リハビリテーション学.pp307−310、中央法規、2008
このページは、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神保健計画研究部の趙香花先生の全面的なご協力のもとに作成しました。