国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
心身医学研究部
Department of Psychosomatic Research
ホーム
概要
研究紹介
スタッフ
業績集
お知らせ
アクセス
リンク
Q&A

文字の大きさ
標準

研究紹介

現在の主な研究課題は下記の通りである。
1. 心身症の病態解明と効果的治療法の開発
2. 摂食障害の病態解明研究ならびに疫学的研究
3. 日常生活下調査による心身症をはじめとする病態解明研究
4. その他


1. 心身症の病態解明と効果的治療法の開発

心身症・摂食障害では、中枢と末梢の生物学的異常とストレス、情動、認知、行動、生活習慣などの心理社会的要因がその発症・持続・悪化に関与しています。心身症の病態の評価や診断は現在、面接法や質問紙法を中心に行われており、より客観的な評価・診断法の確立が求められています。一方、治療法においては海外で認知行動療法(CBT)が心身症や摂食障害に適用され有効性が報告されていますが、わが国では普及していません。
本研究では心身症・摂食障害の客観的な病態評価と診断技術を確立し、説明・検証可能な治療法を開発することを目指します。多施設共同研究により、心身症の病態の客観的指標として@Ecological Momentary Assessment (EMA)法、A機能的MRI、B自律神経系指標、CストレスホルモンやサイトカインD腸内フローラの検討を進めています。また「機能性消化管障害」、「肥満症」、「摂食障害」を対象にしてCBTを基盤とした心理療法的介入の開発と有効性の評価を行います。

▲ページの先頭へ


1−1.日常生活下のストレスの多面的評価法の開発

心身症の病態評価には、心理的ストレスの経時的評価が必須になります。生態学的妥当性が高く、時間軸が正確で時間解像度の高いこと、客観的指標を含め多面的に評価すること等を踏まえて、日常生活下のストレスの評価法の開発を行っています。

1−2.機能性消化管障害のCBT開発研究

機能性消化管疾患(過敏性腸症候群や機能性胃腸症)は代表的心身症で有病率は非常に高く、慢性に経過しQOL低下や医療資源への負荷が大きいとされています。欧米では過敏性腸症候群に対するCBTが開発されています。認知行動療法センター、病院消化器内科、東北大学の協力を得て、わが国での過敏性腸症候群に対するCBT導入へ向けて開発を行っています。

▲ページの先頭へ


2. 摂食障害の病態解明研究ならびに疫学的研究

2−1.摂食障害の生物学的マーカーの研究

摂食障害(神経性食欲不振症や神経性過食症)患者では様々な生物学的異常が認められますが、ほとんどがやせや食行動の異常による2次的な障害を示すもので、摂食障害の特異的なマーカーとして確立されたものはありません。摂食障害の発症に遺伝的要因が関与していることがわかっています。当研究部は全国の摂食障害診療施設からなる摂食障害遺伝子解析協力者会議を組織し、多施設共同研究により候補遺伝子法やゲノムワイド相関解析、新規変異の探索などを進めています。関連遺伝子以外のいくつかのマーカーについても研究を進めています。生物学的マーカーの研究によって摂食障害の病態解明や治療法の開発に貢献することを目指しています。

▲ページの先頭へ


2−2.摂食障害に関する機能画像研究:他者比較における自己評価

自己の体型の評価のゆがみは摂食障害の中核的な病理であり、体型の不満は摂食障害発症の予測因子として注目さていることから、体型比較課題を用いた機能画像研究(fMRI)を行っています。

2−3.摂食障害に関する疫学研究・調査研究

若年者の摂食障害の増加が指摘されています。中学生の摂食障害の実態を把握し、児童・思春期の摂食障害への対策に寄与する目的で、首都圏と地方の都市の中学生6,000人を対象に摂食障害診断用自記式質問紙(EDE-Q6.0)を用いて調査を実施しました。その結果、摂食障害の頻度は女子が1.9%、男子が0.2%と推定されました。また排出行動の危険因子として性的トラウマ体験が抽出されました。  また、摂食障害患者をもつ家族の精神的負担は大きいことから、効果的な家族への心理的サポートの確立のための調査を行っています。

▲ページの先頭へ


3. 日常生活下調査による心身症をはじめとする病態解明研究

3−1.食行動と生物心理社会的因子の経時的関連に関する包括的モデルの開発

食行動と生物心理社会的因子の経時的関連の包括的理解を、生態学的妥当性および栄養学的正確性の高いデータに基づき行うことを目指し、ecological momentary assessment(EMA)法および携帯情報端末による食事記録システムを用いて調査・解析を進めています。

3−2.自覚症状の記憶特性と評価の妥当性に関する検討の実施

東京大学大学院教育学研究科山本義春教授との共同研究により、自覚症状の評価法の一つであるDay reconstruction method(DRM)とEMAの比較などを通して、自覚症状の記憶特性や評価法の方法論的検討をおこなっています。

▲ページの先頭へ


4. その他

一般人口に対する質問紙調査を行い、アレキシサイミア評価法の一つであるTAS-20 の高得点群に異なるパーソナリティ傾向を有する群が混在していることを示しました。  ストレスやその回復プロセスに関して、生理指標を用いた研究を行っています。

▲ページの先頭へ

国立精神・神経医療研究センターHP
© 2011 Department of Psychosomatic Research.