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クリティカルパス(クリニカルパス)について

地域における取り組みの例 地域連携パスの統合を目指す医療政策研究フォーラム

定義(語の説明)

 次項に示す通り診療報酬の算定要件を踏まえると、「入院初期に医師、看護師及び精神保健福祉士等が共同して診療計画を策定し、想定内の入院期間で退院することをめざして、計画に基づいた診療を行うこと」です。
 つまり、本来パスというのはパスシートとよばれる紙面そのものを指すのではなく、パスシートを作成する背景にある「日常の活動」こそが重要なのです。
 したがって、当ページでは、パスを「医療の過程が類似する特定の疾患について、医療内容と時間経過との2次元のクリティカルパスシートを用いて行う、医療施設の継続的な質改善活動のひとつ」*と説明いたします。

<文献>
*伊藤弘人.精神科医療のストラテジー,東京,医学書院,2002.
アウトカム(outcome):結果として得られることがらを指します。例:症状の安定、3カ月以内の退院等
バリアンス(variance):パスの通りに進まなくなる事態のことを指します。例:症状の悪化、死亡等

歴史

 クリティカルパスは、医療とは全く異なる領域で考案された方法論です。ひとつは、1958年にアメリカ海軍が潜水艦建造のために開発したPERT(program evaluation and review technique)です。できるだけ効率的に、かつ経済的に作業を進めるために考案されたものです。もうひとつは、デュポン社で考え出された製造物の工程管理方法であるクリティカルパス法(critical path method)で、工場を工期の無駄なく建設するために開発されたものです。
 工業界で開発されたクリティカルパスは、1980年代に米国で医療に導入されました。
 この時期、米国では診断別定額支払方式(Diagnostic Related Groups/ Prospective Payment System: DRG/PPS)が導入されました。これは、診断により患者さん一人が1回入院するたびに医療機関に支払われる金額が決まるという方式のことです。たとえば、「○○病の患者さんへの入院治療・ケアは、1入院あたり何ドル」という具合です。当時の米国には(いわゆる日本式の)健康保険制度がなかったため、医療費は個人が加入する民間の保険会社が負担していました(註:現在は、オバマケアと呼ばれる改革が始まっています)。民間の事業者ですから、保険商品としての契約上、「入院一日当たりいくらまで」「どの病気だといくらまで」「この病気のときに保険の対象とするのは、この薬剤とこの処置まで」など、支払う保険金をどう設定するかについては、とくに敏感にならざるを得なかったのです。
 この制度により、医療機関にとっても、患者さんの診断によって入院による医療費収入が予め決まってしまうため、利益を増やそうと考えた場合には、患者にかかる支出(コスト)をできるだけ抑えようと考えることになります。コストに最も大きく関与するのは一般に在院日数ですから、支出を抑えるために在院日数を短縮しようとする努力が加速化したのです。まず考えられたのは、入院中の無駄な時間をなくすことであり、そのために導入された手法がクリティカルパスなのです。
 医療におけるパスということで、クリニカルパスと呼ばれることもあります。その他にもさまざまな名称がつかわれています。以下では、総称してパスと書きます。
 わが国では、平成18年4月の診療報酬改定により大腿骨頸部骨折に導入された「地域連携診療計画管理料・地域連携診療計画退院時指導料」を皮切りに、脳卒中(平成20年)、がん(平成22年)、認知症と、診療報酬の裏付けを得ながらパスの対象となる疾患の範囲が広がってきております。
 精神疾患については、日本精神科病院協会をはじめご関係者のご尽力もあって、平成26年度の診療報酬改定により、「院内標準診療計画加算」(200点)が新設されました。精神科救急入院料、精神科救急・合併症入院料、精神科急性期治療病棟入院料(精神科急性期医師配置加算算定病棟)の病棟で、統合失調症または気分障害の入院患者さんが「院内標準診療計画書」に基づいた診療により60日以内に退院した時に1回だけ算定できることとなっております。パスは、算定要件にある「院内標準診療計画書」に相当するものとして位置づけられました。この「院内標準診療計画加算」が新設された趣旨は、「急性期の精神疾患患者に対するチーム医療」の推進と、「早期退院」の促進にあります。

上図(入院クリニカルパス実施病院)出典:伊藤弘人.精神科医療クリニカルパス:総論.日本精神科病院協会誌 33:5-10, 2014.(拡大版JPEGファイルはこちら

パスの種類

 パスには大きく分けて次の種類があります。

  • 機能別パス

    パスシートの構成は、検査や訓練など、何をするのかメニューごとに行(縦軸)を設定し、列(横軸)には「入院時」「1ヶ月目」などの時期を設定します。
    患者さんにとっては、「検査は何をするのか、訓練は何をするのか」というように、自身に起きることが把握しやすくなります。

  • 職種別パス

    パスシートの構成は、医師や看護師など、どの職種が何をするのか、職種ごとに行(縦軸)を設定し、列(横軸)には「入院時」「1ヶ月目」などの時期を設定します。
    職員にとっては、自身の属するチームが何をするのか把握しやすくなります。

  • 患者手帳型パス

    患者さんやご家族が、患者さんに関する情報を記録していく形式のもので、冊子の形態をとるものが多いです。母子手帳やお薬手帳等が参考となる例です。
    とくに、地域の関係者が情報を共有することができるよう、地域の医療機関や相談機関などの利用に関する情報をまとめて記録する機能を有したものを「地域連携パス」と呼びます。精神疾患に関連したものとしては、近年、認知症、脳卒中、発達障害をはじめとして、各地で独自のものが作成されています。→こちら

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