融合領域研究
- 循環器疾患と精神疾患
- 糖尿病とうつ病 奥村泰之, 小林未果, 伊藤弘人
- がんと精神疾患 小林未果
- 科学的根拠に基づく実践 奥村泰之
- 精神疾患の身体状況・向精神薬の身体への影響 伊藤弘人
融合領域研究
- 伊藤弘人 (国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部 部長)
身体疾患と精神疾患には強い関連性がある。総説によると、循環器病、糖尿病やがんと精神疾患との結びつきは強く、身体疾患が重度になるほど、患者は「こころの病」を経験する。「循環器病」の場合、冠状動脈疾患や脳卒中を発症するリスクは、うつ病性障害があると2倍となり、心筋梗塞のリスクは4倍以上、心筋梗塞後6ヶ月以内に死亡するリスクは4倍である。うつ病性障害を治療することで、循環器病の発症や重症化をいかに予防できるかについては、国際的にも関心が高い。
また、「糖尿病」があると、うつ病の有病率は2倍となり、うつ病のある糖尿病患者は、服薬が不規則になり、合併症が多くなり、救急に搬送される割合も高く、健康関連QOLが低い。糖尿病に関する医療費は、うつ病があると、ない場合に比較して4倍以上になり、海外では政策的観点から研究の必要性が提起されている。精神疾患を併発すると、在院日数が長くなるため、在院日数の制限の厳しい急性期型病院では、精神科に転棟させる傾向があるとも聞いている。
さらに「がん」患者に精神障害、とくにうつ病が多くみられる。効果的なうつ病治療は、痛みや症状を緩和するとともに、免疫機能を改善する。「喘息」についても、半数以上が抑うつや不安を抱えているともいわれている。
一方で、精神障害における身体疾患も課題が多い。1990年代に導入された非定型抗精神病薬の一部は、肥満、高血糖や糖尿病との関連が指摘されている。心臓への影響のある抗精神病薬が存在するが、精神障害者の心臓突然死の詳細は十分に検討されているとはいえない。入院ケアから在宅ケアへの移行が促進されているが、地域で生活するようになると、自由度が高まり、そのために生活習慣病が増加するのではないかという懸念もある。
身体疾患とメンタルヘルスの問題は、国民のニーズも高いが、複数の専門領域を融合して進める領域であるため、アプローチの難しいテーマでもある。当研究部では、政策研究(診療報酬改定や自殺対策に資する研究)と管理研究(処方の標準化研究)とともに、身体疾患とメンタルヘルスに関する融合領域研究を進める予定である。国内外のネットワークを活用し、ナショナルセンターの強みといえる多施設による研究を通じて、社会のニーズに応えるエビデンスの提供を目指している。


