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・軍司敦子(知的障害研究部)が日本小児神経学会第28回優秀論文賞を受賞しました(2010年5月)

Gunji A, Inagaki M, Inoue Y, Takeshima Y, Kaga M. Event-related potentials of self-face recognition in children with pervasive developmental disorders. Brain Dev. 2009. 31:139-147.

 広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder; PDD)児は,他者が示す行動の意味やその感情を理解することが難しいとされる.これは,顔や動作の認知,それらの情報の統合における脆弱性,あるいは,コミュニケーションの基盤となる社会性認知の障害によるものと考えられている.そこで私たちは,発達途上にある子どもたちのコミュニケーション能力やソーシャルスキルの治療的介入における臨床応用を目指し,他者理解に関連する行動や認知機能を客観的に把握するツールの開発に取り組んでいる.本研究は,自己と他者に注目した顔認知の点から,コミュニケーション機能を神経生理学的に明らかにすることを狙ったものである.

 定型発達児および健常成人では,自分の顔や親しい人の顔,知らない人の顔を見ているときの事象関連電位(脳波)のうち,弁別や判断の処理過程を反映するP300成分が自己顔や既知顔に対してその振幅が有意に増大すると判明した.したがって本成分が,自己や他者,既知性の識別から展開する記憶照合や理解,判断の情報処理過程を反映すると示唆された.一方,PDD児のP300成分には刺激顔の種類による振幅の相違が認められなかった.これらより,PDD児では自己や他者認知における異質性ないし特異性があるものと考えられた.本検査を利用したコミュニケーション機能の把握は,PDDの病態を理解するうえで重要な手がかりとなり,彼らの障害理解や支援の手がかりとしての活用が期待される.