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・松岡豊(成人精神保健研究部)が日本脂質栄養学会第19回大会において大塚賞を受賞しました(2010年9月3日)

Matsuoka Y, Nishi D, Yonemoto N, Hamazaki K, Hashimoto K, Hamazaki T: Omega-3 fatty acids for secondary prevention of posttraumatic stress disorder after accidental injury: an open-label pilot study. J Clin Psychopharmacol 2010 Apr; 30(2):217-9.

 交通事故や転落などで重傷を負うことが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の重要なリスク因子になることはよく知られています。重傷後のPTSD予防法として、認知行動療法の有効性は実証されていますが、専門治療の資源は多くの施設で不足しており、より簡便により多くの人に適応できる科学的根拠に基づいた予防法の開発が望まれています。松岡室長らは、青魚などに含まれるオメガ3系脂肪酸が海馬の神経新生を活性化させることと、富山大学・井ノ口馨教授らが発見した海馬における神経新生の程度が恐怖記憶の脳内処理にかかわることに着目し、オメガ3系脂肪酸摂取によって海馬の神経新生を活性化させることで、海馬依存性の恐怖記憶が減弱し、PTSD予防に働くのではないかとの仮説を立てました。

 松岡室長らは、都内の救命救急センターに搬送された重傷者を対象に、脂がのったサンマ1~1.5匹分に相当する量のオメガ3系脂肪酸を3ヵ月間摂取してもらい、PTSD症状を評価するオープン試験を世界に先駆けて行いました。PTSD症状はつらい体験が突然甦る「再体験」、出来事にまつわる場所を避けるなどの「回避」、不眠などの「過覚醒」の症状について頻度や強さを点数化して評価しました。その結果、3ヵ月後のPTSD症状の点数は、交通外傷患者を対象に行った観察研究から臨床試験を行う前に推測した仮説平均値に比べて低く抑えられていました。

 この結果から受傷後早期からのオメガ3系脂肪酸摂取はPTSD発症抑制に有効である可能性が示されました。現在進行中のランダム化比較試験において有効性が実証されれば、オメガ3系脂肪酸を含む青魚をとるという食習慣を取り入れることにより、PTSDの予防対策に役立つことが期待されます。