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Nishi D, Koido Y, Nakaya N, Sone T, Noguchi H, Hamazaki K, Hamazaki T, Matsuoka Y Fish Oil for Attenuating Posttraumatic Stress Symptoms among Rescue Workers after the Great East Japan Earthquake: A Randomized Controlled Trial.
Psychotherapy and psychosomatics 2012; 81: 315-317.

12th International Congress of Behavioral Medicine(2012年8月29日-9月1日:ブダペスト)において、西大輔氏(精神保健計画研究部)の研究成果に対してEarly Career Awardが授与されました。

[研究概要]
 大きな災害が発生した後には、被災者だけでなく救援者も心的外傷後ストレス障害(PTSD)になり得ることがこれまでの研究で明らかになっています。PTSDの予防法として認知行動療法の有効性は実証されていますが、専門的な治療を行える人的資源は不足しており、より簡便により多くの人に適応できる科学的根拠に基づいた予防法の開発が望まれています。
 これまでの研究で、青魚などに含まれるオメガ3系脂肪酸が海馬の神経新生を活性化させることと、海馬における神経新生の程度が恐怖記憶の脳内処理にかかわることなどが明らかになっており、オメガ3系脂肪酸によって海馬の神経新生を活性化させることで、海馬依存性の恐怖記憶が減弱し、PTSDが予防される可能性が示唆されています。
 本研究では、東日本大震災の被災地で2011年3月に救援活動を行った災害派遣医療チームの隊員172人を、心理教育に加えてオメガ3系脂肪酸サプリメントを提供する群(オメガ3系脂肪酸約1.7g/日)に86人、心理教育のみの群86人にランダムに割り付け、2011年4月から7月まで12週間の介入を行いました。
 研究の結果、二群間のPTSD症状には有意な差を見出せませんでしたが、層別化解析では女性で二群間に有意な差を認め、PTSD症状を測定する自己記入式質問紙Impact of Event Scale-Revisedの得点がオメガ3系脂肪酸群は心理教育のみ群に比べて3.9点分緩和されていました。
 本研究は震災直後に急きょ実施した研究であったため、対照群にプラセボを提供できなかったことなどさまざまな限界がありますが、女性においてPTSD症状が有意に緩和したことから、災害時における精神健康増進の選択肢の一つとしてのオメガ3系脂肪酸の可能性が示されました。