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 研究部の概要 

薬物依存研究部

T.研究部の概要

 薬物依存研究部は,「麻薬・覚せい剤等に関する実態調査結果に基づく勧告」(総務庁,平成105月)により,機能強化が要請され,平成11年度より研究室の改組及び1研究室の新設がなされ,下記のように3究室体制となっている.]
心理社会研究室
 (1)薬物乱用・依存及び中毒性精神障害の実態調査研究に関すること.
 (2)薬物依存の発生要因に係わる心理学的及び社会学的調査研究に関すること.
 (3)薬物依存の予防及びその指導,研修の方法の研究に関すること.
依存性薬物研究室
 (1)薬物依存の発生要因に係わる精神薬理学的調査研究に関すること.
  (2)依存性薬物の薬効に係わる精神薬理学的及び心理学的調査研究に関すること.
 (3)中毒性精神障害に係わる精神薬理学的及び心理学的調査研究に関すること.
診断治療開発研究室
 (1)薬物依存の発生要因に係わる精神薬理学的調査研究に関すること.
  (2)依存性薬物の薬効に係わる精神薬理学的及び心理学的調査研究に関すること.
 (3)薬物依存及び中毒性精神障害の診断技術及び治療法の研修に関すること.
  しかし,診断治療開発研究室には人員がつかず, 2研究室体制のままであったが,平成20年10月から人員がつき,3研究室体制となった.従来同様,平成22年度も,官民を問わない各種問い合わせ,講師派遣,調査・研修等各種協力依頼が殺到し,それらは人員的限界を超えるものであったが,最大限の協力を惜しまなかったつもりである.

 人員構成は,次のとおりである.部長:和田 清,心理社会研究室研究員:嶋根卓也,依存性薬物研究室長:舩田正彦,診断治療開発研究室長:松本俊彦,流動研究員:富山健一,水野菜津美

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U.研究活動

A.疫学的研究

1)薬物使用に関する全国住民調査(2011年)
 層化2段無作為抽出により選ばれた全国の15歳以上64歳以下の国民5,000人に対する訪問留置法による医薬品・規制薬物の使用実態と意識に関するわが国唯一最大規模の調査であり,1995年より隔年で実施されている.回収率は63.0%であり,生涯経験率は,有機溶剤1.6%,大麻1.2%,覚せい剤0.4%,何らかの違法性薬物2.7%であった.2009年調査との比較では,覚せい剤,MDMA,いずれかの薬物の生涯経験率は横ばいであったが,それ以外の薬物では減少傾向にあった.わが国の薬物乱用状況は,従来の「わが国独自型(有機溶剤優位型)」から欧米型(大麻優位型)」へと急速に変化していることが再確認された.(平成23年度厚生労働科学研究費補助金:医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業.和田 清,嶋根卓也,小堀栄子)

2)薬物乱用・依存者におけるHIV感染の実態とハイリスク行動についての研究
 薬物依存症者におけるHIV/HCV/HBV感染の実態とハイリスク行動に関するわが国唯一の継続的定点調査である.全国4カ所の医療施設調査(全国の精神科病院に入院中の覚せい剤関連精神障害患者の約12%を捕捉できる)及び6カ所での非医療施設調査を実施した.HIV抗体陽性者は1名認められたが,東アジア某国のMSMであった.覚せい剤関連精神障害患者でのHCV抗体陽性率は38.0%と高かった.覚せい剤関連精神障害患者における感染危険行動は年々低下しているにも関わらず,HCV抗体陽性率は2008年以降上昇傾向にあるが,その原因としては,覚せい剤関連精神障害患者の高齢化が最も疑われた.(平成23年度厚生労働科学研究費補助金:エイズ対策研究事業.和田 清)

3) 様々な依存症における医療・福祉の回復プログラムの策定に関する研究-向精神薬乱用と依存-
 薬物依存症専門外来(首都圏4施設)を受診したBZ(ベンゾジアゼピン)系薬剤の使用障害患者87名について調査した.88.5%の者が、乱用物質であるBZを精神科医療機関から「処方」という形で入手しており、84.0%の者が、前医である一般精神科治療の経過中にBZ使用障害を発症していた。前医での処方には,「短時間作用型薬剤などの依存の危険の高い薬剤の処方」(71.2%)、「薬剤を貯めている可能性を顧慮せずに漫然とした処方が続けられる」(68.5%)、「診察なしで薬剤の処方を受ける」(43.8%)といった問題が認められた。また、主治医から処方される薬剤の依存性に関して,指導や説明を受けていた者は、32.9%にとどまった。向精神薬乱用・依存、過量服薬の予防には、精神科医療の質の向上が必要である。また,向精神薬の過量服薬者に対するゲートキーパーとして薬剤師の活用が期待されているが、埼玉県薬剤師会の薬剤師1,414名に対し、服薬指導や疑義照会に着目した疫学調査を実施した。
 (平成23年度厚生労働科学研究費補助金:障害者対策総合研究事業.松本俊彦, 嶋根卓也, 和田清)

4) クラブユーザーにおけるMDMA等のクラブドラッグ乱用実態に関する研究
 関東地方のクラブで開催された音楽イベント来場者237名を対象に疫学調査を実施した。(平成23年度厚生労働科学研究費補助金:医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業.嶋根卓也,和田清 )

5) インターネットによるMSMのHIV感染予防に関する行動疫学研究
 わが国のHIV感染者の過半数を占めるMen who have Sex with Men(MSM)におけるHIV感染予防行動と、安全な性行動の阻害要因としてのアルコール・薬物使用を調べるために、インターネットによる行動疫学調査を実施した。合計10,442名のMSMより回答を得た。(平成23年度厚生労働科学研究費補助金:エイズ対策研究事業.嶋根卓也)

6) 薬剤師を情報源とする医薬品乱用の実態把握に関する研究
 鎮咳薬など一般用医薬品(OTC薬)の乱用・依存症例が引き続き報告されているため,「薬局におけるOTC薬の販売」という視点で、薬物依存者および薬剤師対象の聞き取り調査を実施し、薬物乱用・依存の防止策を探った。(平成23年度厚生労働科学研究費補助金:医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業.嶋根卓也 )

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B.臨床研究

1)薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究
 独自に開発した認知行動療法による薬物依存症治療プログラム(SMARPP)、ならびに、SMARPPと同種の治療プログラムを、国立精神・神経医療研究センター病院(外来及び医療観察法病棟)、埼玉県立精神医療センター、東京都多摩総合精神保健福祉センター、東京都中部総合精神保健福祉センター、さらには刑事施設である播磨社会復帰促進センターや美祢社会復帰促進センター、栃木・千葉・館山・横浜の各ダルクなどの、性質の異なる援助機関で実施し、介入前後の評価尺度の変化、治療継続状況、感想に関する自由記述などの情報を収集し、評価を行った。また、プログラム実施に併せて、本プログラムの研修会、講演会などを通じて本プログラムの広報,普及と均てん化を試みた。(平成23年度厚生労働科学研究費補助金:障害者総合対策研究事業.松本俊彦)

2)医療観察法指定入院医療機関における物質使用障害治療プログラムの開発とその効果に関する研究
 NCNP病院医療観察法病棟における物質使用障害治療プログラムの介入効果判定研究を行った.物質使用障害治療プログラムによる介入後には,アルコール問題に関しては,SOCRATESの下位尺度「病識」および総得点において有意な上昇傾向が認められ,薬物問題に関しては自己効力感スケールの下位尺度「全般的な自己効力感変化」において有意な得点上昇が認められた.また,介入後には「抗酒剤」の服用率および自助グループへの参加同意率の顕著な上昇が認められた.(平成23年度精神・神経疾患研究開発費, 松本俊彦 )

3)司法関連施設における少年用薬物乱用防止教育ツールによる介入効果とその普及に関する研究
 少年鑑別所入所中の薬物乱用者を対象として開発した再乱用防止のための自習ワークブック「SMARPP-Jr.」を、薬物乱用問題を持つ成人女性の刑事施設被収容者135名に対して教育プログラムと共に実施し、薬物の誘惑に抵抗できる自信、問題認識の深度や援助に対する必要性の認識に関する評価尺度の得点変化を検討した。その結果、本ワークブックによる自習プログラムを含む介入結果は、成人男性を対象とした先行研究ほどには明確なものとはいえず、薬物問題の重症度と介入効果との関係も直線的なものではなかった。女性の場合には、併存する精神医学的問題やトラウマ関連問題を抱える薬物乱用者が少なくなく、薬物問題の重症度だけでは分類しきれない、不均質な集団である可能性が高いと考えられる。(平成23年度厚生労働科学研究費補助金:医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業, 松本俊彦)


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C.基礎研究

1)合成カンナビノイドの精神依存性に関する基盤的研究
 脱法ハーブには,大麻の精神活性成分であるΔ9-THCと薬理作用が類似した合成カンナビノイド(脱法ドラッグ)が含まれていることが明らかになっている.そこで,脱法ハーブに含まれている合成カンナビノイドの精神依存性について,条件付け場所嗜好性試験により検討した.その結果,合成カンナビノイドのJWH-210およびRCS-4は,精神依存形成能を有する事が判明した.また,薬物弁別試験から,JWH-210およびRCS-4はΔ9-THCと類似の自覚効果(感覚効果)を示すことが明らかになった.合成カンナビノイドの薬物依存性は,条件付け場所嗜好性試験と薬物弁別試験を利用する事で,効率よく評価できると考えられる. (平成23年度厚生労働科学研究費補助金:医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業.舩田正彦,富山健一) 

2)合成カンナビノイドの細胞毒性評価に関する研究
 脱法ハーブに含まれている合成カンナビノイドの細胞毒性について検討を行った.NG108-15(細胞樹立細胞株)を使用して,JWH-210およびRCS-4の作用を検討した. NG108-15細胞において,JWH-210およびRCS-4は強力な細胞毒性を示し,この細胞毒性の発現には,カンナビノイドCB1受容体が重要な役割を果たしていることが明らかになった.合成カンナビノイドは数多くの類縁誘導体が存在するため,培養細胞を利用した細胞毒性の評価は,迅速かつ正確な毒性評価法として有用であると考えられる.(平成23年度精神・神経疾患研究開発費:アルコールを含めた物質依存に対する病態解明及び心理社会的治療法の開発に関する研究.舩田正彦,富山健一)

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V.社会的活動 

 当研究部は,研究部創設以来,厚生労働省に限らず,薬物乱用・依存対策に関係する各省庁・自治体・市民団体等と連携を取り続けてきており,独自に研修会を主催するのみならず,各種研修会への講師派遣,啓発用資料および教材作成,調査等への協力などを行っている(細目は研究業績参照).

1)保健医療行政・政策に関連する研究・調査,委員会等への貢献
・政府委員会
  厚生労働省薬事・食品衛生審議会臨時委員(和田 清),厚生労働省医薬食品安全局依 存性薬物検 討会 委員(和田 清),厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課「地域依存症対策推進モデル事 業の評価に関する検討会」委員(和田 清),厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課   「公募型補助金事業(平成23年度依存症回復施設職員研修事業)評価検討会構成員(和田 清),文部科学 省スポーツ・青少年局「高等学校における薬物乱用防止啓発DVD作成協力者(和田 清),法務省保護局「 薬物処遇研究会」メンバー(和田清, 松本俊彦),法務省矯正局「少年院矯正教育プログラム(薬物非行 )開発会議」メンバー(和田 清,松本俊彦),文部科学省スポーツ・青少年局「薬物乱用防止広報啓発 活動推進協力者会議」委員(松本俊彦)、参議院法務委員会「刑の一部執行猶予法案」審議 参考人(松 本俊彦)、内閣府共生社会政策「アメリカにおける青少年の薬物乱用対策」企画分析会議委員(松本俊彦 ), 文部科学省スポーツ・青少年局「薬物等に対する意識等調査に関する協力者会議」委員(嶋根卓也)

・その他公的委員会
  東京都薬物情報評価委員会委員(和田 清),独立行政法人医薬品医療機器総合機構専 門委員(和田 清),東京地方裁判所登録精神保健判定医(松本俊彦),世田谷区自殺対策 連絡協議会会長(松本俊彦), 中央区自殺対策検討委員会委員長(松本俊彦),東京都脱 法ドラッグ専門調査委員会専門委員(舩田正彦),社団法人全国高等学校PTA連合会薬物 乱用防止啓発パンフレット編集委員(嶋根卓也),社団法人埼玉県薬剤師会職能委員会(嶋根卓也)、財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター資材改善委員会(嶋根卓也)
 
 ・研究成果の行政貢献
  ・「脱法ドラッグ」「指定薬物」について,依存性・細胞毒性等を評価し,薬物使用
   の禁止・制限について具体的な提案(依存性薬物の指定)を行った(厚労省医薬食品
   局)。  
  ・「刑の一部執行猶予」制度導入を見越して,薬物依存者に対する「保護観察所にお
   ける治療プログラムの開発」、ならびに、「地域支援ガイドライン」(案)の策定に
   貢献した(法務省保護局)。
  ・ 少年院収容者対する薬物離脱指導プログラム導入に対して,「矯正教育プログラム
   (薬物非行)」策定に貢献した(法務省矯正局)。
  ・自殺との関連が指摘されている向精神薬の過量服薬に関する研究を実施し、その成
   果としての向精神薬の過量服薬および薬剤師の関与について,自殺予防総合対策セ
   ンターによる自殺総合対策大綱改正に向けての提言に盛り込んだ。(厚労省社会援
   護局)

2)市民社会に対する一般的な貢献
 ・市民向け講演会:(W.研究業績 C.講演 参照)
 ・報道:(W.研究業績 G.その他(1)取材 参照)

3)専門教育面における貢献
・研修会・研究会
 ・第25回薬物依存臨床医師研修会(主催),第13回薬物依存臨床看護研修会(主催)  
・各種研修会等への講師派遣(W.研究業績 C.講演 参照)
 ・大学教育
   星薬科大学非常勤講師(舩田正彦),津田塾大学非常勤講師(嶋根卓也),
   国立障害者リハビリテーションセンター学院非常勤講師(嶋根卓也).
 ・その他
   "Addiction" Editorial advisory board (和田 清),
  Psychiatry and Clinical Neurosciences Reviewer(和田 清,松本俊彦)


      

  
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