Angelman 症候群

・疾患の概要  
 Angleman症候群(AS)は、重度の精神遅滞・てんかん・失調歩行などを主徴をする奇形症候群.原因は、母由来15番染色体上のUBE3A遺伝子コピーの欠失または変異による機能不全とされる.UBE3Aの異常は、約75%の患者においては染色体欠失や父方片親性ダイソミーが原因となり、これらの同定に染色体FISH法やメチル化テストによる迅速な遺伝子検査が有用.ほとんどが突然変異例で、次子への再発危険率はまずない.

・臨床像  
 
Happy puppet(笑顔の操り人形)とも称されるこの疾患の特徴は、意味のある言葉のでない重度の精神遅滞・小頭・両手をたたく動作・筋緊張低下・落ち着きがないこと・けいれん発作・笑い発作(誘因のない笑い)など.染色体欠失例では肌が白い.顔面 ・頭部の特徴は下顎突出・舌の挺出・平たんな後頭部など.睡眠障害も特徴的.脳波検査も診断に有効.診断基準(Williams CAら.Angelman syndrome: consensus for diagnostic criteria. Angelman Syndrome Foundation. Am J Med Genet 56:237-8, 1995)に照らしての診断が望ましい.

・発症機序
 
1994年、Prader-Willi 症候群(PWS)と同様の15染色体上の欠失が、AS患者においてもその70%の患者に同定された。同じ領域の欠失をもちながら異なる疾患が生じる理由は、PWSの欠失は父から伝達された15染色体上に、ASの欠失は母から伝達された15染色体上に生じているためであることが判明した.このことから、本疾患の原因遺伝子はインプリンティング(片親発現)遺伝子であることが推測された。さらにごく少数(2%)のAS患者では、PWSでみられた母方片親性ダイソミーとは逆の、父方片親性ダイソミー(UPD:1対の15 番染色体がいずれも父から伝達)が生じていることも明らかとなった. 近年、欠失もUPDも認められない患者の中に、母方染色体のSNRPN遺伝子上流に微細な欠失や変異をもっている患者が存在することが判明し(5%)、ここが母方染色体の片親発現遺伝子群の発現を調節するインプリンティングセンター(IC)でことが明らかにされた.
  ASではPWSとは異なり、兄弟例の報告があることから単一遺伝子変異でも生じることが推測されていたが、近年、欠失・UPD・IC変異のいずれももたいない患者の多くが、欠失領域内に存在するUBE3A遺伝子の異常で発症していることが判明した.この遺伝子は母由来コピーのみ発現を示すインプリンティング遺伝子で、この遺伝子の内部の変異例はもとより、母方染色体欠失例・父方UPD例・母方IC変異例のいずれもこの遺伝子の機能不全を生じることから、この遺伝子がASの責任遺伝子と考えられている。UPE3Aはユビキチンープロテオソーム系タンパク分解経路の成分であり、中枢神経系におけるタンパク分解機構の障害が発症機序と考えられている.

・遺伝子診断法
  患者の70%を占める染色体欠失の検出には、DNAプローブを用いた染色体FISH法が有用.この欠失は通 常の染色体分析(G-band法)では通常検出できない. UPD患者やIC異常患者はまれであるが、メチル化テストが有用. 残りの患者においてはUBE3A遺伝子変異の同定により診断をつけることが可能だが、国内外に変異解析サービスを行っている施設はない.

遺伝子診断手順

・遺伝子検査依頼可能施設
1) 染色体FISH法:三菱化学BCL、SRL、BML、シオノギ、住友金属の各検査会社.
2) メチル化テスト:三菱化学BCLや国立精神・神経センター 神経研究所疾病研究第二部(久保田)などの国内研究施
  設で行っている.最新情報については、いでんネットを参照のこと.
3)UBE3A遺伝子変異の解析:この解析を診断サービスとして行っているところは今のところない.

・遺伝子診断に際しての配慮事項  
  欠失例・UPD例ともに突然変異で生じる.従って、まれなIC領域異常患者を除けば遺伝性はなく、次子への再発危険率はまずない.本疾患は、染色体・遺伝子検査で過半数確定診断が可能であることから、早期にFISH解析またはメチル化テストで確定診断をつけ、抗てんかん薬や睡眠周期改善薬の投与を考慮することが、患者のQOL向上のために重要である.

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