Beckwith-Wiedemann 症候群

・疾患の概要  
  Beckwith-Widemann 症候群 (BWS)は、臍帯脱出(E)・巨舌(M)・巨体(G)を主徴とする常染色体劣性遺伝病.症状の頭文字を合わせてEMG症候群ともいわれる.少数例でウィルムス腫瘍などの悪性腫瘍を合併することがあるが、一般 に新生児期に顕著であった諸症状は年齢と共に消褪し、予後はよい.知的障害は通 常認めない.遺伝学的異常が染色体異常から遺伝子異常まで多彩であることより遺伝子診断が行いにくい.臨床的問題が軽微であるわりに遺伝子診断が複雑であることから、あえて遺伝子診断する利点は臨床上余りない.生命予後・知的予後は通 常良好であるため、出生前診断の適用はない.

・臨床像  
  BWSの特徴は新生児期に最も著明であり、巨大児出生(平均3,900g)、臍帯脱出もしくは臍ヘルニア、新生児期一過性低血糖が特徴的である.顔貌は、巨舌、ギョロ目、前額部の線状隆起、耳たぶの線状痕、耳輪後縁の小さな凹みが特徴的.巨大な体格は成長と共に目立たなくなり多くの所見は成人期までに消えてしまうが、耳の所見は比較的残る.したがって、患児の母親などで耳たぶの所見が残りあとで本症であったと診断できる成人もいる.染色体の不均衡転座例など特殊なケースを除き、知能障害はない.学童期にウィルムス腫瘍や副腎皮質癌、性腺芽腫などの悪性腫瘍を合併する例が7.5.%いるといわれる.数多くの特徴的症状から、新生児期での臨床診断は一般 に難しくはない.本症が疑われたら、5ー6歳迄は腹部エコーを定期的に行い、7.5%に見られる腹部悪性腫瘍の早期診断に努めるのがよいとされる.

・発症機序
 
複数の染色体異常症例から本症候群の責任遺伝子座は11p15であることがわかった.さらに均衡型転座例における転座染色体が全例母由来であること、片親性ダイソミー(1対の11番染色体のp15領域が同一親由来)が全例父由来であることから、11p15領域内の母性片親発現を示すインプリンティング遺伝子の機能不全、もしくは父性片親発現を示すインプリンティング遺伝子の過剰発現が原因となるインプリンティング疾患であると考えられるようになった. 本症の過成長に関する病態として、父性片親性ダイソミーなどによる11p15領域の父方発現遺伝子IGF2の発現アレル数の増加が想定されており、もともとこの遺伝子の機能が胎児期の細胞増殖の促進であることから、発現アレル数の増加によりIGF2が胎児期に過剰発現し、その結果 巨大児として成長すると考えられている.また増殖促進機能の促進が生後、腫瘍に罹患しやすい原因と考えられている.逆に母性染色体上の転座例の病態としては、転座切断点にあるp57 KIP2遺伝子がIGF2遺伝子発現抑制機能を有し、p57 KIP2遺伝子の断裂もしくは変異によりIGF2が抑制されなくなり過剰発現となることが想定されている.最近p57 KIP2遺伝子などの母方発現遺伝子を抑制するアンチセンス転写因子LIT1がこの近傍で見つかりこの異常とBWS発症の関係も注目されている .

・遺伝子診断法

  多型解析により父方片親性ダイソミーの同定が、また塩基配列決定法によりp57 KIP2変異の同定が可能.しかしながら、いずれも患者のごく一部に見られるに過ぎず、その手間と診断率の低さから、あえて行う意味は少ない. 遺伝子診断手順 本疾患の遺伝的原因が多様のため、どの方法で遺伝子異常の同定を試みても診断率は高くない.したがって遺伝子診断の手順はとくにない.

・ 遺伝子診断依頼可能施設

  国外ではあるが、トロント小児病院(Dr. Rosanna Weksberg)やオランダのアカデミック医療センター遺伝子診断研究室(Dr. Marcel M.A.M. Mannens)などで塩基配列決定、UPD検索、メチル化テストなどを行っている.国内では検査会社、研究施設とも行っているところはない.最新情報については、GeneTestsを参照のこと.

・遺伝子診断に際しての配慮事項
 
遺伝子診断法が確立されておらず、それにおいての配慮事項もとくにない.
  研究目的を除けば、本症の診断を遺伝子解析でつける例は非常に少ない

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