歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA)

・疾患の概要  
  歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA) は、ミオクローヌス発作、痴呆、協調運動の障害、不随意運動を主徴とする常染色体優性遺伝病.日本人に好発し、脊髄小脳変性症の中では日本では一番罹患者が多いタイプ.
  本疾患の名前は病理学的に脳基底核である歯状核、赤核、淡蒼球、ルイ体に異常を認めることに由来し、その遺伝的原因が12番染色体上のDRPLA遺伝子の異常であることが判明した.遺伝子の異常は、この遺伝子の蛋白翻訳領域内のCAG繰り返し領域が異常に伸長しているトリプレットリピートの一つであること、すなわち異常に長いポリグルタミンを含む遺伝子産物をつくってしまうことが病因であることが明らかにされた.CAGリピートの異常な伸長はPCR検査で簡便に検出される.この検査により発症前診断が可能であるが、治療法が確立していない現在、その実施にあたっては周到な配慮が必要.

・臨床像
 
本疾患の臨床的特徴は、歩行障害など協調運動の障害ではじまり、次第に不随意運動やミオクローヌス発作(筋の短時間の不随意な収縮)を認め、痴呆や精神症状を呈するようになり、最終的に死にいたる進行性の経過である.発症年齢は30-50歳台が多いが、その家系内で後の世代に遺伝していくと徐々に発症年齢が早くなり、小児期に難治性てんかん症状などで発症する例もある.

・ 発症機序
  連鎖解析研究により本疾患の責任遺伝子座は12番染色体上にあることが判明し、それまでの知見で脊髄小脳変性症のいくつかがCAGリピートの異常な伸長で発症していることから、12番染色体上でCAGリピート領域をある遺伝子の蛋白翻訳領域内に同定.正常では7-23回のリピートである領域が、DRPLA患者では49-75回と異常に伸長していることが明らかにされた. CAGリピート数が多いほど発症年齢が早くなる傾向も判明した.さらに異常に伸長したCAGリピートは、次の世代に遺伝するとさらにリピート数が増加する傾向があり、この傾向は、母親から遺伝した場合より父親から遺伝した婆合(精子形成過程で)強く見られることも明らかになった.したがって成人期発症のDRPLAを有する父親から伸長したCAGリピートをもつDRPLA遺伝子を受け継いだ子供は、著しい伸長(90回)を有し小児期に発症した例も報告されている.CAGリピート伸長の程度が強い程早期に発症する傾向(anticipation)は、マウスを用いた実験でも証明されている. 遺伝子診断法 CAGリピート伸長の判定は、PCR法で比較的迅速に検出できる.

遺伝子診断手順

・遺伝子検査依頼可能施設
 
国内の検査会社(東洋紡、BML、塩野義)や研究施設に依頼可能.研究施設の最新情報は、いでんネットを参照のこ と.

・遺伝子診断に際しての配慮事項  
  遺伝子が同定されたことで、遺伝子検査により診断が正確に確定できるようになった.罹患者の子供に本症が遺伝する確率は1/2であり、その子供が将来本症を発症するかを調べる発症前診断も可能である.しかしながら本症には有効な治療法や予防法が確立していないため、発症前に診断を確定してしまうことはクライアントのためになるとは限らない.この点をふまえ、クライアントの意思を複数の医師により十分に確認するなど、安易に発症前診断を行わないような一定のカウンセリングプログラムを設定しておくことが望ましい.

リスト(カテゴリー別 )にもどる

リスト(アルファベット順)にもどる

はじめにもどる