脆弱X症候群

・疾患の概要
 脆弱X症候群(fragile X syndrome: FRA X)は、精神遅滞・巨大睾丸・染色体検査による脆弱X所見を主徴をする奇形症候群.原因は、X染色体上のFMR1遺伝子の機能不全とされる.この異常は、ほとんどの例で、FMR1遺伝子内のCGG反復配列の伸長により検出され、サザンブロット法で確定診断が行える.罹患男児の母親に中等度の反復配列伸長を認める.次子への再発危険率は、次の男子においてこの母親から伸長を有するX染色体が伝達され、さらに著しい伸長が生じた場合となる.

・臨床像
 本疾患は通常男児で典型的、その特徴は、精神遅滞・長い顔・大きな耳・下顎突出・巨大睾丸.多動・注意障害・ぎこちない話し方が特徴.精神遅滞は、年齢とともに進行する.女児にも発症することがあるが、男児に比較して軽症.

・発症機序
  FMR1遺伝子の機能不全の原因は、この遺伝子の第一エクソンにあるCGGトリプレットリピート反復配列の異常な伸長と考えられている.反復配列が200回以上伸長 (full mutation) すると、この領域のみならず近傍のCpGアイランド(プロモーター)がメチル化され、遺伝子発現が抑制される.反復回数は、正常人で6-54回、保因者で54-200回 (premutation).Premutationをもつ保因者女性の卵巣から子供に伝達される際に、full mutationに変化しやすいと言われる.最近のノックアウトマウスの研究によるとFMR1タンパクは、神経細胞の樹状突起の形成に重要な働きをしているらしい.

・遺伝子診断法

 
CGG反復配列数の伸長とメチル化の同定には、サザンブロット法が用いられる.Premutationの同定にはPCR法が有効.以前は、葉酸欠乏培地を用いた染色体検査により患者のX染色体がXq27.3領域で切断されやすい性質を利用した検査法が用いられていたが(これが本症候群の名前の由来)、正確さからDNA検査にとって代わられた.

遺伝子診断手順

・遺伝子診断依頼可能施設
 サザンブロット法:三菱化学BCL、BML、シオノギ、東洋紡の各検査会社.

・遺伝子診断に際しての配慮事項
 
片方のX染色体上にpremutationを有する女性から生まれた男児に発症することが多い.しかしこのような女性からpremutationXをうけついだ男児の全例が発症するわけではない.逆にX染色体上にfull mutationXを有する場合、女性でも軽症ながら発症を認めることがある.最近、premutationの反復数が60-80の場合、次世代でfull mutationに伸長する確率が14%であるのに対し、80以上ではその確率が89%と著しく上昇するというデータが示された.したがって女性の保因者診断は、次子(とくに男児)での発症の可能性を考えた場合、遺伝カウンセリング上重要となる.本症の出生前診断は羊水・絨毛を材料に反復数をもとに欧米では多数施行されているが、本症はきわめて重度の疾患とはいえず、その施行においては倫理的討議が必要がある.まれにCGG反復配列数の伸長を認めないFMR1遺伝子異常例(プロモーターの異常メチル化例)もあるので伸長回数だけでは確実な診断できず、メチル化状態の検索も必要(上記のサザンブロット検査は両者を見ている).臨床症状からはPrader-Willi症候群との鑑別 が必要となる場合があり、このような場合はPrader-Williの項も参照.

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