MELAS
(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes)

・疾患の概要
 MELAS (mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes) は、ミトコンドリア病の中では頻度の高い病気であり、脳卒中様症状を特徴とするものの、合併する臓器症状が多様で、しかも発症年齢の幅が広く、中枢神経疾患に限らず数多くの疾患の鑑別 にあげられるのが特徴である。

・臨床像

 臨床症状については、脳卒中様症状が特徴的である。初発年齢は、0-1歳が1%、1-5歳が10%、5-10歳が37%、10-15歳が21%、15歳以上が31%であり、15歳未満が全体の約70%を占める。脳卒中様症状とけいれんが初発症状であることが多い。脳卒中様症状や進行性知能障害などの中枢神経症状以外では、筋症状(筋力低下、高CK血症など)、内分泌症状(低身長など)がよく認められる。心筋症状(心筋症、伝導障害など)は、比較的頻度は少ないが、MELAS患者の死亡原因としては重要な症状である。約半数の患者に感音性難聴を認める。

・発症機序

 分子遺伝学的には、mtDNA の2つのロイシン転移RNAの一つ、tRNALeu(UUR) 内の点変異である3243変異が約80%の患者で認められる。同じ転移RNA内の他の変異である3271変異、3252変異、3256変異、3260変異、3291変異などでも、MELASの症状を呈す場合があることが報告されているが、3271変異以外はまれである。また、ロイシン転移RNA以外の転移RNA領域の点変異をもつ例も報告されている。これらの変異に共通 している性質として、他の多くのmtDNA異常と同様に、変異型DNAと野生型DNAとが共存している状態、ヘテロプラスミー(heteroplasmy)が認められる。このヘテロプラスミーは、個体内ばかりか、臓器内、組織内、さらには一細胞内でも証明される。  一方、転移RNA領域ではなく、mtDNAの蛋白をコードしている領域に点変異もMELAS患者で報告されてきている)。これらの病因としての意義についてはさらに検討を要する。  

・遺伝子診断法

 PCR法でmtDNAの3243変異、3271変異、3291変異、13513変異を調べる。これらで、MELAS患者の80%以上がカバーできる。

遺伝子診断手順

・遺伝子診断依頼可能施設
 国内の検査会社では、東洋紡、BML、SRLで行っている.  国内の研究機関でも行っている.その最新情報については、いでんネット(大学等の研究施設で行われている遺伝子検査の情報)を参照のこと.

・ 遺伝子診断に際しての配慮事項
 mtDNAは母系遺伝する。したがって、患者で変異DNAが証明されれば、その母にも変異DNAが検出できることがほとんどである。しかし、MELAS患者の母は、変異mtDNAをもっていても、臨床症状はないか、あっても軽いことが多い。本人の診断で、mtDNAの点変異の存在が判明した場合、母や母方親族の負担にならないよう、配慮することが必要である。その際に重要なことは、1)変異mtDNAは細胞内で野生型と混在しており、変異型が優位 になったときにはじめて細胞に障害が起こること、2)変異型が血液での検査で見つかったからといって、病気ではないこと、3)血液を調べたことで、全身の細胞の様子が分かるわけではないので、予後については確実な情報を提供できないこと、4)すべてのヒトに、低比率であるが変異mtDNAが検出できること、などを話す。それでも不安の強いときは、国立精神・神経センター武蔵病院遺伝カウンセリング外来(後藤)まで、お問い合わせ下さい。

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