筋強直性ジストロフィー症


・疾患の概要
 筋強直性ジストロフィー症(Myotonic dystrophy; DM)は、新生児期の筋緊張低下、顔面 筋麻痺、精神運動発達遅滞などを主徴とする常染色体優性遺伝病.19番染色体上の蛋白キナ−ゼ遺伝子の下流に存在するCTG反復配列の異常な伸長が原因.反復増加が高度であると先天型となり、中等度であると成人発症型となる.CTGの異常な伸長の検出はサザンブロット法などで比較的簡便に行える.出生前診断目的の検査を受け入れている検査施設もある.

・臨床像
 本疾患の臨床的特徴は、成人発症型は筋力低下や筋強直、白内障、性腺機能不全・心筋異常や心電図異を認めるが、先天型では、新生児期の筋緊張低下、顔面 筋麻痺、中等度の精神運動発達遅滞が主体となる.先天型では、胎動減少や新生児期の呼吸不全も特徴的で、筋強直や白内障などは成人になってから認める.

・発症機序
 
連鎖解析研究により本疾患の責任遺伝子座は19番染色体上にあることが判明し、その後この染色体上の蛋白キナ−ゼ遺伝子(dystrophia myotonica protein kinase gene)の3ユ非翻訳領域にあるCTG反復配列が患者では異常に伸長していることが分かった.反復数は正常者で5-30、軽症者(成人発症型)で50-80、重症者(先天型)で2,000以上といわれ、反復数が多いほど重症化する傾向がある.さらに反復数は世代を経ると増加する傾向があり(Anticipation効果 )、典型的な家族例は、まず母親が成人発症型に罹患し、卵子形成過程で反復数が増加し、それを受け継いだ児が先天型に罹患するというものである.本疾患は、父親より母親から遺伝した方がリスクが高い.CTGの伸長がどのように病気を引き起こすかについては、CTGが蛋白翻訳領域内のリピート病のように単純に説明できず、依然はっきりはしていないが、最近の染色体研究から、CTG伸長により周辺のクロマチン構造が変化したり、近傍の遺伝子に異常なメチル化が生じるという報告された.一方RNA研究からは、DMPK遺伝子のCTGリピート領域の転写 産物特有に結合する蛋白(CUGBP)が見つかり、これがhuman cardiac troponin T (TNNT2)の転写後の修飾(RNA splicing)に関与していることが判明し、このことからCTGの異常な伸長が筋細胞等で、正常な転写 後修飾をさまたげていることが、原因と考えられるようになった.またマウスの筋芽細胞を用いた実験系により、DMPK遺伝子のmRNAにおいてCTGを57回に伸長させるとDMPK遺伝子の発現が低下し、200回伸長させたものは筋芽細胞の分化を不良させるという報告がある.異常伸長したCTGを有するmRNAは核内に異常蓄積するとも言われている.

・ 遺伝子診断法
 
CTGリピート伸長の判定は、サザンブロット法やPCR法で比較的容易に検出できる.

遺伝子診断手順

・遺伝子診断依頼可能施設
  国内の検査会社では、三菱化学BCL、東洋紡、BML、シオノギで行っている.

・遺伝子診断に際しての配慮事項
 母由来で反復数が増加しやすい傾向は、脆弱X症候群に似る.先天型の確定診断に、遺伝子診断は非常に有用.その際、母親において軽度伸長を確認することが、次子への遺伝カウンセリングの重要な情報となる.先天型においては、出生前診断を行う例は欧米を中心に多いようであるが、その際に両親への十分な遺伝カウンセリングが必要と思われる.

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