Pelizaeus-Merzbacher病

・疾患の概要
 Pelizaeus-Merzbacher病(PMD)は、乳児期に出現する眼振と頭部の振戦を特徴とするX連鎖劣性遺伝病.白質ジストロフィー症の1型.X染色体上のPLP1遺伝子の異常による中枢神経のミエリン形成異常が原因.興味深いことに、本疾患はPLP遺伝子の発現低下と過剰発現のどちらもが原因となりうる.PLP1遺伝子の重複と欠失を有する例は、FISH法で迅速に診断が行える.患児で診断が確定すれば、十分なカウンセリングのあと出生前診断も可能.

・ 臨床像
  本疾患の典型例では、乳児期早期に眼振と頭部の振戦が出現し、以後これらが軽快し一旦落ち着くが、その後ゆっくり進行し、歩行時のふらつき、企図振戦、現ご紹介、視神経萎縮、痙直などの症状を呈するようになる. 早期診断には頭部MRIが有用で、乳児期から著しいミエリン化の遅れが見られる(胎児期の脳のミエリン化に相当する所見). 上記の典型的経過を辿る例の他、新生時期から痙攣発作を認める先天型(重篤なタイプ)もある.

・ 発症機序

  PLP1遺伝子は中枢神経のミエリン蛋白を規定する.遺伝子変異や遺伝子欠失によりミエリン蛋白が産生が低下が原因と考えられていた.1996年、遺伝子が同一X染色体上にタンデムに並んでいる遺伝子重複も本疾患の原因であることが判明した.したがって、ミエリン蛋白がつくられなかったり、逆に過剰に作られたりすることで、ミエリン化遅延をきたす本症が発症すると考えられている.PLP遺伝子を多コピー導入したトランスジェニックマウスでも、細胞死による脱ミエリン化と重篤な神経症状がみられている.ヒトの剖検所見では脳の脱随は一様ではなく、ところどころ島状のミエリン形成領域が残る.遺伝子変異・欠失・重複の各遺伝的タイプの割合は、それぞれの15-20%、2%以下、50-75%と重複例が過半数を占める.この3種に該当しない原因不明のPMD例が5-20%ある.

・遺伝子診断法
 PLP遺伝子の欠失例と重複例は、FISH法で迅速に診断が行える.PLP遺伝子の変異については、塩基配列の決定が必要であり、解析に時間がかかる

遺伝子診断手順

・遺伝子診断依頼可能施設
 ・ 国外ではあるが米国Baylor College of Medicine (Kleberg Cytogenetics Laboratory, Houston, TX)が、   FISH検査を迅速に施行してくれる(有料).最新情報については、GeneTestsを参照のこと.国内では三菱化学BCL社 がFISH検査を準備中.
  ・ 変異解析においては、これを行っている研究施設が国内にあるが、詳細はいでんネットを参照. 遺伝子診断に際  しての配慮事項  FISH検査により重複または欠失が確認できた例においては、母親を検査することで保因者診断が行 える.母親が保因者であることが判明した場合、十分な遺伝カウンセリングを前提に、羊水を採取し同様のFISH検査 を行うことで次子の出生前診断が可能となる.


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