Prader-Willi症候群

・疾患の概要
 Prader-Willi 症候群(PWS)は、特異な顔貌・肥満・発達遅滞を主徴をする奇形症候群・隣接遺伝子症候群である.原因は、父から受け継いだ15番染色体上のインプリンティング遺伝子群の欠失または不活化による機能不全とされる.この異常は染色体欠失や母方片親性ダイソミーなどで生じ、それぞれ染色体FISH法とメチル化テストで確定診断が行える.ほとんどが突然変異例で、次子への再発危険率はまずない.

・臨床像
 診断のキーとなる症状は、(胎児期)胎動減少、(乳児期)筋緊張低下・哺乳不良・停留睾丸・小さな手と足、(幼児期以降)過食とそれによる肥満・中等度の発達遅滞・ときに爆発する性格.染色体欠失例では、肌が白い.顔貌の特徴として、アーモンド用眼瞼裂、魚様の三角の口がある.これといって特徴的な症状もなく微細な症状の組み合わせで診断をつける疾患であることから、点数制による診断基準も作成されている(Holmら.Prader-Willi syndrome: consensus diagnostic criteria. Pediatrics 91: 398-402, 1993).

・ 発症機序
 20年ほど前に15染色体q11-q13上の欠失が70%の患者に同定されたことから、遺伝的原因がこの欠失領域にあることが判明した.その後、残りの患者のほとんどに15番染色体の1対がどちらも母から由来する母方片親性ダイソミー(UPD)の存在が判明した.欠失患者とUPD患者に共通 することとして、父由来の15q11-q13領域を欠いていることが考えられ、この領域内に父由来発現遺伝子存在が想定された.その後、このような片親由来発現(インプリンティング)遺伝子の存在が確認された.近年このような遺伝子の1つSNRPN遺伝子の上流に微細な変異を有する患者がみつかり、この患者においてもインプリンティング遺伝子群が不活化されていることから、この上流領域にインプリンティング遺伝子群の発現パターンをコントロールするインプリンティングコントロールセンター(IC)が存在すると考えられている.  さらに最近、SNRPN遺伝子の下流にあるsnoRNA(核小体低分子RNA)遺伝子が、インプリティング遺伝子であること・脳でのみ発現すること・この遺伝子は多数あり染色体上に並んでいること(一つが変異しても他のコピーで機能が代償され、不活化にはすべてのコピーの欠失が必要)などから、知能障害を有する本疾患の特徴を説明できる疾患候補遺伝子として注目されている.

・ 遺伝子診断法
 患者の70%を占める染色体欠失の検出には、SNRPN遺伝子のDNAプローブを用いた染色体FISH法が有用.商業ベースで依頼可能で、保険の適用もある.なお、この欠失は通 常の染色体分析(G-band法)では検出できない. 残り30%の大部分を占めるUPD患者やまれなIC領域異常患者の同定には、メチル化テストが有用.

遺伝子診断手順

・遺伝子検査依頼可能施設
 
・ 染色体FISH法:三菱化学BCL、SRL、BML、シオノギ、メディック、住友金属の各検査会社.
  ・ メチル化テスト:三菱化学BCL(有料)・SRL(有料)
  ・国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第二部(久保田)などの研究施設でも.
   最新情報については、いでん
ネットを参照のこと.

・ 遺伝子診断に際しての配慮事項  
 欠失例・UPD例ともに突然変異で生じる.従って、まれなIC領域変異患者を除けば遺伝性はなく、次子への再発危険率はまずない.本疾患は、染色体・メチル化検査でほぼ100%確定診断が可能であることから、早期に確定診断をつけて、早期から肥満予防のための食事療法や成長ホルモン投与を開始することが、患者のQOL向上のために重要である.


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