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Medical Science Digest Vol.34 No.13 2008年11月号

特集―統合失調症の生物学的研究(特集編輯:功刀浩)

 

功刀浩:統合失調症の疾患概念と生物学的研究

【要旨】 近年の神経心理学的研究によって、統合失調症における認知機能障害が明らかにされ、知能、記憶、実行機能、情報処理、運動など多岐にわたる障害が存在し、それが就職率などの社会的機能に強く影響していることが明らかになった。病態の全体像をみると、統合失調症は幻覚・妄想を特徴とする疾患であるという概念から、「若年性汎高次脳機能障害」という言葉で示されるような再定式化が必要ではないかと考えられる。生物学的診断法は、複数の指標による総合的な診断が必須であろう。脳画像研究や遺伝子研究からは、特定の脳領域や分子経路が明らかになったというより、むしろ種々の脳領域や分子が関与することが示唆されている。薬物療法は、非定型抗精神病薬が主流になり、錐体外路系副作用の軽減など進歩を遂げているが、今後は認知機能障害を標的にした薬物療法の開発が必要である。

 

堀弘明、功刀浩:統合失調症の神経生理学的研究

【要旨】 統合失調症ではさまざまな神経生理学的異常が存在することが明らかになってきた。その代表的なものとして、驚愕反応のプレパルスインヒビションの減弱、種々の眼球運動障害、脳波における事象関連電位の振幅減少・潜時延長、脳波や脳磁図における神経同期発振現象の強度低下や同期性の障害、近赤外線スペクトロスコピーにおける認知課題遂行中の前頭部低活性などが挙げられる。これらの異常所見は、統合失調症患者で顕著に認められるだけでなく、統合失調症患者の親族や、統合失調症との病因的連続性を想定されている統合失調症型人格傾向においても報告されていることから、統合失調症の素因を反映する指標(エンドフェノタイプ)であると考えられている。本稿では、統合失調症の診断や経過判定指標として有望な上記の神経生理学的検査について概説する。