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研究概要(専門)

研究テーマの紹介

 当研究部は、統合失調症と躁うつ病という2大精神病の生物学的研究を行い、その病態メカニズムの解明、新しい診断・治療法の開発をめざしています。こころの病気の研究を行うため、ヒト、動物、細胞レベルでの統合的アプローチを行っています。

遺伝子解析研究
心理学的研究
脳画像解析
動物モデルの解析
細胞生物学研究

遺伝子解析研究

精神疾患の原因解明や治療法開発に役立つ情報を得ることを目的に、統合失調症および気分障害の方を対象に、以下のような方法で遺伝子の解析を行っています。

SNP解析: DNA塩基配列中には各個人によって異なる配列部分が存在しますが、1つの塩基のみが個人間で異なっている箇所をSNP(一塩基多型)とよびます。SNP解析では、候補遺伝子のSNPが精神疾患や臨床症状にどのような影響を与えているかを調べます。

ゲノムワイド関連解析(GWAS): 数十万〜百万のSNPの遺伝子型を同時に解析し、臨床データとの関連を調べます。

DNAマイクロアレイ: ヒト細胞内で発現している遺伝子情報を網羅的に検出することによって、精神疾患および精神疾患の各症状が、どの遺伝子の発現と関連しているかを調べます。

SNPs Genotyping Assay
精神疾患に関連する遺伝子多型の探索

染色体上のSNPs分布
うつ病における網羅的遺伝子解析結果

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心理学的研究

当研究チームでは、統合失調症や気分障害、健常者を対象とし、神経心理学的検査やパーソナリティ検査、近赤外線スペクトロスコピィ等を用いて多角的に心理機能を検討してきました。
→<より詳しい内容へ(一般向けと共通)>

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脳画像解析

当研究チームでは統合失調症や双極性障害、うつ病を中心とした疾患を対象に、磁気共鳴断層装置(MRI)を用いた臨床研究による病態や早期診断法、治療評価法の開発を国立精神神経センターの放射線診療部と共同して取り組んでいます。また、これらのツールを用いたヒト脳機能データベースの構築にも取り組んでいます。MRIはその撮像方法により脳構造や白質線維連絡(DTI)、神経活動(fMRI)や脳血流(ASL)などの詳細な検討が可能であり、これらと認知機能検査や性格検査、臨床重症度などの計測を組み合わせて統合的に精神疾患の病態の理解を目指します。

1.5T MRI (Siemens)

3-dimensional T1-weighted image

Tract fiber that run through the frontal region.

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動物モデルの解析

  精神疾患の病態機序の解明には、疾患モデル動物を用いた解析が不可欠です。精神疾患の発症には、遺伝要因と環境要因の双方が重要な役割を果たすと考えられており、遺伝要因によるモデル動物(遺伝子改変マウス)や環境要因によるモデル動物(ストレス、ホルモン投与、向精神薬投与など)の2つのアプローチを行っています。遺伝子改変マウスにおいては、神経発達や可塑性に重要な働きをしている遺伝子のノックアウトマウス等を用いて、行動薬理学的解析を中心に脳組織学的検討や遺伝子発現などの生化学的解析を行っています。また、低出生体重が神経発達に与える影響や環境要因によるストレスが脳の遺伝子発現や神経新生にどのように影響するかなどについて解析しています。これらの研究は、精神疾患の病態を解明することにより新たな創薬のターゲットを見出すことを目指しています。さらに、このような精神疾患モデル動物は、その後の治療薬開発のスクリーニングにおいても有用となると考えられます。

Open Field Test
新しい環境に対する反応をみる試験

Elevated Plus Maze Test
不安様行動を測定する試験

動物実験用マウス
行動実験、遺伝子改変

   

組織切片
マウス海馬の染色

   

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細胞生物学研究

研究の概要
ニューロンは神経伝達や神経分泌など、様々な方法で互いにコミュニケーションをとっています。神経細胞から分泌されるタンパク質の中でも、脳由来神経栄養因子(BDNF: Brain-derived neurotrophic factor)は、神経細胞の生存や突起伸展、そして神経活動依存的なシナプス可塑性において非常に重要なはたらきを持っています。中枢神経系の細胞にとってBDNFはなくてはならない存在ですので、BDNFの機能障害がうつ病や統合失調症などの精神疾患の一因となっているのではないかと考えられています。

私たちの研究の最終目標は、
BDNFの機能障害がどのようにして引き起こされるのか?
BDNFの機能障害がどのようにして精神疾患を引き起こすのか?

 

ストレス応答ホルモンがニューロンの機能に影響を及ぼす
私たちは、ストレス応答ホルモンや精神攪乱物質、向精神薬(グルココルチコイド、フェンサイクリジン、イミプラミンなど)が、ニューロンに与える影響を、細胞・分子レベルで解析を行っています。一例として私たちは、大脳皮質ニューロンにおける、グルココルチコイドレセプター(GR)とBDNFのレセプター(TrkB)との相互作用を見いだしました(Numakawa et. al. 2009 PNAS)。さらに、このGR-TrkBの相互作用がBDNFの神経伝達における機能を制御することもわかりました。ストレスによって血中濃度が上昇するグルココルチコイドが、このGR-TrkBの相互作用を減少させ、結果として神経ネットワークの活動低下を引き起こすことから、グルココルチコイドによるBDNFの機能障害がうつ病の一因となっている可能性があります。

BDNF の細胞内輸送と分泌機構
私たちはまた、BDNFの細胞内の挙動を明らかにしようと試みています。BDNFはニューロンから分泌され、レセプターであるTrkBに結合して機能を発揮しますが、ニューロンの内部でのふるまい(発現から分泌まで)もないがしろにはできません。BDNFの細胞内輸送や分泌のメカニズムが明らかになることによって、精神疾患の病因解明の糸口となる可能性があります。様々な蛍光タンパク質のタグを付けた BDNF を発現させることによって、BDNFがニューロンの中を輸送される様子や、分泌される様子をリアルタイムで観察することができます。

精神疾患発症の分子メカニズムに興味のある方、私たちと一緒に研究しませんか?

 

遺伝子を導入した神経細胞を可視化したもの

神経細胞内を輸送される BDNF-GFP

BDNFによる細胞内シグナルの活性化(ERK)

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