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研究概要(一般)

研究背景 ―統合失調症と躁うつ病―

 統合失調症(精神分裂症)と躁うつ病は「2大精神病」といわれ、いまだに原因が解明されていない疾患です。

【統合失調症】


 統合失調症は、およそ100人に1人(1%)が罹患し、主として思春期〜成人早期に発症し、多くは慢性・再発性の経過をたどります。幻覚や妄想などの精神病症状に加え、意欲低下や自閉症などの社会的機能の低下も起こります。罹患者によって重症度はさまざまですが、重症者では人生の大部分の期間を入院生活で送る場合も少なくなく、中等症では社会的・経済的に自立して生活することが難しく、軽症者でも長期的な通院と服薬が欠かせません。
 現在、この病気で入院している患者数は全国で20万人を超え、これはあらゆる病気の中で最も多い数字であり、この病気による苦痛は本人だけでなく家族にも大きな負担となります。治療は、抗精神病薬による薬物療法とリハビリテーションが中心であり、近年、副作用の少ない薬物などが開発されておりますが、いまだに根本的な治療といえる治療法や予防法は見出されておりません。また、およそ15%の患者さんは、自殺という不幸な転帰をたどられるという事実もあります。

● 功刀浩: 統合失調症の克服を目指した脳科学
皆様にご協力頂いている脳科学的検査の結果から、これまで色々なことがわかってきました。

● 堀弘明: 統合失調症・統合失調型パーソナリティの心理・疫学的研究

● 堀弘明: 光トポグラフィーを用いた統合失調型パーソナリティに関する研究


【躁うつ病】


 躁うつ病は、躁とうつの両方を呈する「双極性障害」と、うつだけを呈する「単極性うつ病」に分かれます。双極性障害は人口のおよそ1〜2%に発症し、単極性うつ病は頻度の高いありふれた病気です。躁状態の症状は、高揚した気分、やり過ぎ、誇大妄想などであり、うつ状態では、憂鬱な気分、悲観的な考え、食欲低下、不眠などの多彩な症状を呈します。躁うつ病は本来、時間の経過に伴い自然に回復する病気ですが、躁状態を放置しておくと、重大な社会的逸脱行動を生じることがあり、うつ状態では本人が強い苦痛を感じるうえ、自殺行為に傾き易いため、できる限り早く治療を開始することが重要です。
 治療は、躁状態では気分安定薬、うつ状態では抗うつ剤を中心とした薬物療法、時に通電療法が行われます。自殺者は近年では年間3万人にのぼり、男性で死亡原因の第6位、女性で第8位であり、特に20〜30代では、死亡原因の第1位となっています。全自殺者による直観的、間接的な経済損失は、日本全土で年間およそ2〜3兆円前後にのぼると見積もられます。その自殺者の大多数はうつ病ないし、うつ状態に罹患しているとされます。

 

我々が目指すもの

 当研究部は上記のごとく厚生労働行政上の観点からみて重大な2大精神病である統合失調症と躁うつ病について、その生物学的研究を行い、新しい診断、治療法の開発を目指します。統合失調症と躁うつ病は、遺伝的要因と環境要因とが複雑に関与する病気であるとされます。近年、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患では、原因ないし危険因子となる遺伝子が発見され、その病態を探る研究が飛躍的に進んでいます。統合失調症や躁うつ病においても疾患関連遺伝子を発見することが、その病態解明に最も重要であり、当研究部では倫理的ガイドラインを遵守しつつ遺伝子解析研究を積極的に推進いたします。

 ヒトゲノムプロジェクトによってヒトのDNA塩基配列が解読されることにより、近い将来、精神病の遺伝子が見出されることが期待されます。また、国立精神・神経医療研究センター病院と連携し、統合失調症の高次脳機能障害や躁うつ病の神経内分泌異常に関する生物学的指標に関する研究を行っており、精神疾患の新たな診断法の開発を行っています。さらに、疾患の動物モデルを用いて、遺伝子要因、環境要因、薬物などが精神・行動に影響を与えるメカニズムについて、組織レベル、分子レベルでの解析を行っています。培養神経細胞を用いることにより、精神機能に影響を与えることが知られている分子による神経細胞の形態、可塑性、神経伝達物質放出機能、ネットワーク形成機能などに与える影響についても詳細な解析を行っています。

具体的な研究内容については研究概要(専門)をご覧ください。