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『統合失調症・統合失調型パーソナリティの心理・疫学的研究』

流動研究員 堀弘明

 

1) Hori H, Noguchi H, Hashimoto R, Nakabayashi T, Omori M, Takahashi S, Tsukue R, Anami K, Hirabayashi N, Harada S, Saitoh O, Iwase M, Kajimoto O, Takeda M, Okabe S, Kunugi H. Antipsychotic medication and cognitive function in schizophrenia. (Schizophr Res. 2006;86(1-3):138-146) 

 統合失調症患者さんの治療においては、幻覚や妄想などの症状を軽減させることに加え、学業や仕事に再び就けるようになることが非常に重要です。統合失調症患者さんでは、記憶力や注意力、物事を計画立てて遂行する能力、さらには知能に障害がみられ、こういった多様な認知機能の障害が、学業達成や就労などの社会的な機能を低下させる原因となっていることがわかってきています。本研究では、抗精神病薬(統合失調症患者さんにとってもっとも大切な治療薬)を複数、あるいは大量に処方されている統合失調症患者さんでは、一つのお薬を標準的な用量で処方されている患者さんに比べて、これらの認知機能障害がより重いことを明らかにしました。また、非定型抗精神病薬(比較的新しいお薬)を処方されている患者さんは、定型抗精神病薬(従来からあるお薬)で治療されている患者さんに比べて認知機能障害が軽度であることがわかりました。

(Hori et al., 2006 より改変引用)


 

2) Hori H, Noguchi H, Hashimoto R, Okabe S, Saitoh O, Kunugi H. IQ decline and memory impairment in Japanese patients with chronic schizophrenia.  (Psychiatry Res. 2008; 158(2):251-255)

 慢性期の統合失調症患者さんでは知能や記憶の障害がみられることが以前から知られています。ただ、このような障害は病気になる前から存在するという報告と、病気を発症した後に低下するという報告があります。本研究によって、病気になる前には平均的な知能を持っていたと推定される患者さんでも、発症後に知能が低下すること、記憶力の障害はさらに重度であることが示されました。

(Hori et al., 2008 より改変引用)


 

3) Hori H, Noguchi H, Hashimoto R, Nakabayashi T, Saitoh O, Murray RM, Okabe S, Kunugi H. Personality in schizophrenia assessed with the Temperament and Character Inventory (TCI).  (Psychiatry Res. 2008; 160(2):175-183)

 以前から、統合失調症患者さんはユニークな人格特性をもっているのではないかと言われていましたが、この点について調べた研究報告は少数でした。自己申告式の質問紙を用いた本研究では、統合失調症患者さんの人格特性は健常者のものと多くの面で異なっていること、このような人格特性のユニークさは症状の強さと関連していること、さらに、このようなユニークな人格傾向は男性患者さんにおいて女性患者さんより顕著であることを示しました。

 


 

4) Noguchi H, Hori H, Kunugi H. Schizotypal traits and cognitive function in healthy adults.  (Psychiatry Res. 2008; 161(2):162-169)

 血圧や血糖値が高くなって一定の値を超えると高血圧や糖尿病と診断されるように、精神疾患も、何らかの特性が一定の程度を超えると診断がつくレベルになる、という考え方があります。統合失調症では、統合失調型パーソナリティがそれにあたるのではないかと言われています。統合失調型パーソナリティとは、風変わりな思考や行動パターン、対人関係を築くことの難しさによって特徴づけられる、一つのパーソナリティ特性のことです。この特性は、健常者から統合失調症患者さんへと連続的に分布しているだけでなく、健常者の中でも各個人がさまざまな程度にこの特性をもっていると想定されています。

 本研究では、大人の健常者における統合失調型パーソナリティ傾向の強さと、言語性知能の低さが関連するという結果が得られました。したがって、認知機能の面から、健常者の統合失調型パーソナリティ傾向と統合失調症との間に連続性がある可能性を示唆しました。

(Noguchi et al., 2008 より改変引用)


5) Hori H, Teraishi T, Sasayama D, Matsuo J, Kawamoto Y, Kinoshita Y, Kunugi H. Relationships between season of birth, schizotypy, temperament, character and neurocognition in a non-clinical population.  (Psychiatry Res. Epub ahead of print)

 統合失調症の疫学的研究において、冬生まれが統合失調症発症のリスクを10%程度高めることが知られています。そこで私たちは、健常者の統合失調型パーソナリティ傾向についても出生季節の影響がみられるかを調べてみました。結果は、統合失調症における研究と同様に、冬生まれの健常者では他の季節に出生した健常者に比べて統合失調型パーソナリティ傾向が有意に高い、というものでした。

 

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