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2006.07.26
  どうしたら研究のひらめきというのは身に付くようになるのでしょうか、とよく学生さんたちに聞かれます。答えはもちろん一つではなく、その人その人によって異なってくるでしょう。こういうときは体験談を話すことにしています。周辺知識を広く持つことと友人をたくさんもつことが私の場合役立ったかもしれないと思うからです。
  「昔、私が臨床を離れどっぷり研究の生活に入たのは30才の時にソーク研究所に留学した時からです。ソーク研究所には板張りのきれいな図書室があり、多くの図書が並んでいました。英語も出来ない、研究も初めてのことが多く右も左も分からないと言うときに、なぜ思いついたか分かりませんが(たぶんインターネットもなかった時代なので単に情報を集めるというくらいの意味だったでしょう)20冊くらいの雑誌を自分で決めて毎号毎号載っている論文のタイトルをすべてチェックすると言うことを始めました。たぶん当時は自分自身に目的の論文を収集する力がなかったからだと思うのですが、自分の専門以外のがんや免疫や内分泌の雑誌でも神経のことが載っていることが多いのでそれらの分野の雑誌までチェックすることを行いました。いわば非常に効率の悪い作業から始めたわけですが、今振り返ればこれが結果として良かったようです。
  最初はどういう論文かよく分からなくても、ん?と思うような論文が一つの雑誌に一つくらい載っていましたので論文名だけでなく要旨やイントロも読むようにしていました。するとそのうち、それぞれの分野でどういうことが今盛んに研究されているのかが漠然と理解できるようになりました。また少し経つと、こういうことを行えばこういう雑誌に載るのかということも少しずつではありますが考えられるようになりました。専門外の論文ですと正しく理解したかは分かりませんでしたが、これも幸運だったのですが当時ソーク研究所にはそれぞれ分野の異なった日本人研究者が10名前後在籍しており、自分が興味を持ったことについて直接彼ら彼女らから耳学問という形で自分の知識を訂正してもらったり教えてもらうことが出来ました。この人たちとのつながりは目には見えないですが私に取りまして人生の貴重な財産となりましたが、他分野、異分野のことに興味を示したこと、耳学問したこと、これらは結果として私の場合役だったと思います」。 と、このようなことをお話しするようにしています。
  もちろん、私の経験が一人一人の学生さんに当てはまるわけではありません。あくまで私自身の場合はこうでしたという話ですが、何かの参考になればと思っております。

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