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2007.09.10
  前回「夢を語ろう」のコラム書いた折、何人かの若い人たちから具体的に創造性を高めるにはどうしたらいいのでしょう?と相談を受けました。夢を語るにしてもその方法をもう少し具体的に教えて欲しいと言うことのようです。もちろん解答は人、人によって違うわけでその人本人が努力の中から見つけださないといけないわけですが、参考までに経験を少しお話ししておくことにしました。

1.いま自分の行っている研究をたとえ話にしましょう。

  一般の方に「あーよく分かりました。そういうことなのですね」と理解いただくようなたとえ話を作ることが訓練になると思います。例えば私は、蛋白質の凝集を部屋にたまる塵に例え、部屋を神経細胞に例え、神経変性の機序やその治療法について掃除機や引っ越しの話などを持ち出して、神経変性の理解をいただくための話をすることがよくあります。
  このように非常に身近なものを題材にして誰にでも理解していただけるような話を作りましょう。やってみると分かりますが、意外とこれが難しいかもしれません。全体像をある程度把握していないと良いたとえ話は生み出されてこないからです。逆にたとえ話を磨くことによって全体像が広がるときもあります。全体像はこれまでにも書きましたように創造性の向上と非常に関連があると思いますので、皆さんも是非たとえ話作りを行ってみてください。

2.日常生活からヒントを。

  例えば、前項に関連して埃を集めたゴミが蛋白質で、ゴミ袋がユビキチン、ユビキチン化蛋白である(ゴミの入った)ゴミ袋を回収に来るゴミ収集車がプロテオソームと思いましょう。
  ゴミ収集車はゴミ出しのポイントを認識して集めに来ますが、ユビキチン化蛋白にはゴミ集積所のようなところがあるのでしょうか?プロテオソームはゴミ収集車のように移動してゴミ袋を回収に来るのでしょうか? それともゴミ袋をゴミ収集車まで運ばないといけないのでしょうか? とまあこのように日常の出来事を自分の扱っている遺伝子や蛋白質に置き換えて考えてみるのも楽しいでしょう。

3.日常生活で見出した興味や疑問を科学的に考えましょう。

  手前みそで恐縮ですが、いまCRESTで行っている研究のそもそもの発端は「赤ちゃんの頭は大人と違いどうしてあんなに大きいのか?」という疑問からでした。生命体はその仕組み自体が合目的に出来ているだろうと考えた場合、赤ちゃんの頭が大きいことにも必然があるのではないか、と考えたわけです。
  このように、日常当たり前すぎて見過ごしている事柄に今一度疑問符を付けてみるのがよいと思います。なぜか?という疑問符です。例えば、年を取れば髪の毛は白くなり、薄くなったりします。老化という一言で片付けるのでなく、白くなることにも、薄くなることにも合目性があるとしたらどんな合目性になるのだろうか、と考えてみるのも良いでしょう。あるいは、有ったらおもしろいな、ということがらに題材を探してみるのも良いでしょう。
  いま研究所ではソフトボール大会が行われています。実は私はサウスポーなのですが、「左利きだったのですか?」と驚かれることもあります。そこで、一例ですが、左利きということをキーワードに、例えば、サウスポーのマウスやショウジョウバエっているのかな?もしいると仮定して、それを見つけるためにはどうしたら出来るだろうか、なんて考え始めてみるのも良いでしょう。脳機能の局在という神経科学上の重要な命題を考える上でとっても貴重なヒントが得られるかもしれません。

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