大会長挨拶

第27回日本病態生理学会大会の開催にあたりまして
      国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
      トランスレーショナル・メディカルセンター センター長 和田 圭司

 この度、平成29年8月18日から20日までの3日間、国立精神・神経医療研究センターにおきまして第27回日本病態生理学会を開催する運びとなりました。

 日本病態生理学会は日本生理学会をその母体に持ち、主に生理学の手法を用いて生体の病態を探求し、その本質に迫るとともに、正常とは何かを明らかにすることを目的としています。医学、看護学、薬学、リハビリテーション医学、鍼灸学、栄養学などの医療系分野だけでなく、農学、獣医学、理学、工学系領域からも多数が参加する学際的で連携感に溢れた学会です。また、学会の活性化はどの学会でも課題ですが、日本病態生理学会では検討された企画がすぐに実行されるなど迅速性と展開力において数ある学会の中でも大変ユニークな存在として注目を浴びています。最近では、学部学生、大学院生の口演機会の拡大にも努めており、若手研究者の建設的な育成を目的に活発な議論が行われる学会として成長してきています。

 今回の大会テーマは「多臓器円環と病態生理学:人とは? その理解への挑戦」です。最近は要素還元型の研究が主流になってきていますが、その研究手法だけでは人間や生命を理解できないということは広く認識されています。全体のシステムとしてどのように調和を取り機能しているのかという視点が人間や生命の理解には必要です。疾患研究においても、各疾患を当該臓器の疾病と捉えるだけでなく、多臓器円環というシステムのなかでの障害、つまりネットワーク障害として捉え直すことが重要です。多臓器円環の考えは、従来型の治療薬・治療法開発にない新たな発想の息吹を吹き込むとともに、システム調和をより重視することから予防についてもその概念を一新します。臓器単位の変調予防でなく、人間が個体としての活動する中で予防を考えていく道を開拓します。また、個体としての活動は日常生活そのものですので、多臓器円環研究の浸透は人間というものを見直すきっかけにもなります。副題の「人とは? その理解への挑戦」はそういう意味が込められています。

 今回の大会では特別講演として、多臓器円環研究の提唱者のお一人である入來篤史先生に「治未病と心身相関の人間生物学(黄帝内経の科学的基盤)」というテーマでご講演をいただきます。教育講演においては本田学先生に「情報環境から脳の健康に迫る新たな戦略「情報医療」の可能性」というテーマでご講演をいただきます。さらに企画シンポジウムでは「マルチシステムネットワークの解明が切り開く病態生理の新展開」をテーマに新進気鋭の研究者にご講演をいただきます。いずれも今大会のテーマにふさわしいものと考えております。細見記念講演では乾誠先生に「心筋細胞内カルシウム輸送調節の分子機構と心不全治療標的」をテーマに心臓研究の醍醐味をご講演いただきます。また、第3回目を迎えます病態生理学教育シンポジウムでは「多職種連携で認知症に取り組む」をテーマに実地医療の課題とその解決に向け、社会的観点を含む幅広い視点からご講演をいただきます。今回の大会が疾患研究に対して新たな1ページを開くことを期待しております。

 今回の大会から、従来の学部学生、修士課程学生を対象にした学生口演に加えまして博士課程の学生を対象にした大学院生口演も新たにスタートします。学生口演、大学院生口演では優秀な発表に賞が贈られます。従来の奨励賞受賞者選考講演も予定しておりますので、若い方々は奮ってご応募いただきたいと考えております。

 小平は多摩の地におけます学園都市として知られています。またブルーベリー栽培の発祥の地としても有名です。地元名産品も多数ございますので、議論の疲れを癒し今後の英気を養う機会にしていただけましたら幸甚です。みなさまの多数のご参加を心よりお待ちしております。