TOP > 研究の紹介(一般向け)

研究テーマ
 脳は、物ごとを考えたり、大事なことを覚えたり、手足を動かしたりするときにとても大事な働きをします。 また景色を見たり、音を聞いたり、物をさわって熱いと感じたり、というときにも脳が働きます。 脳神経系の病気ではこれらのことがうまくできなくなります。 脳神経系の病気にはいろいろなものがありますが、特に神経細胞といわれる脳の中の細胞の機能が低下し、 やがて神経細胞が病的に死んでしまう病気を神経変性疾患と呼びます。 アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症などがこれに該当します。 特に脳は、脳の中の場所場所で司っている機能が異なってくるために、 脳の中のどこが具合が悪くなったかによって症状が異なってきます。 アルツハイマー病では物忘れがおこったり、パーキンソン病では歩きづらくなったり手足が震えたり、 脊髄小脳変性症では体が揺れたりするのはこのためです。 また、いずれの病気も神経難病とも称されますように、 原因や病気が形成される過程が不明でなかなか良い治療法がない現状があります。 私たち疾病研究第四部ではこれら神経変性疾患の原因と病気が形成されていく機序(発症機序)を解明し、 根本的に治すための予防・治療法の開発をめざしています。 まだまだ未解決の部分が多くあり課題が山づみですが、着実なあゆみが必要です。 そのため、モデル動物などを使用し、遺伝子、蛋白質の解析を中心とした実証主義的研究を行っています。

 神経細胞が病的に死んでしまう理由は最近の研究でいくつかあることが示されていますが、 私たちは特に蛋白質の変性、凝集という面から研究をしています。 神経細胞の中にはいろいろな蛋白質があり、普段は溶けている状態で存在するわけですが、 神経細胞に障害が加わったりしますと溶けていた蛋白質が形を変え溶けきれないようになり、神経細胞の中にたまってきます。 たとえ話をしますと、朝目覚めてカーテンを開けたとき、差し込む日の光に埃がキラキラと目にはいることがあります。 いまここで埃を蛋白質としましょう。普段は部屋の中に浮いているわけです。 こまめに掃除をすれば埃は床にたまることがありませんが、3週間、3ヶ月と掃除をしなかった状態を想像してください。 床に相当埃がたまるのではないでしょうか。しかも大きな固まりとして。 この状態が「蛋白質が溶けきれずにたまってきた」状態です。 では、3年、30年とそのまま掃除をしないとどうなるでしょうか? 膝まで埃がたまったりしまいには口の付近まで埃がたまってきたりしますと、息がしづらくなります。 住んでいる部屋を神経細胞に例えれば、神経細胞が病的な状態になったことが想像できるのではないでしょうか。 このような状態を治すにはどうしたらよいでしょうか? 容易に想像できるのは掃除機でゴミを吸い取るという作業です。 神経細胞にも掃除機の役割をする機能が備わっています。 蛋白質を分解する機能です。私たちはそこで蛋白質を分解する機能を研究しているわけです。 さて、部屋を取り替えるという発想はどうでしょうか? 「だめになったものは新しい物で置き換える」という発想ですが、私たちの研究分野でも似た発想があります。 幹細胞を使った再生医学の発想です。もちろん埃そのものを出来なくしようというのも優れた方法です。 蛋白質はメッセンジャーRNAというものの中に含まれる情報を頼りに作り出されますので、メッセンジャーRNAを加減すれば当然蛋白質を加減することも可能なわけです。 私たちは「蛋白質を分解する機能」、「再生医学」、「メッセンジャーRNA」について研究を進めています。

 さて、脳の中には神経細胞とならんでグリア細胞という細胞もたくさん存在します。 グリア細胞は長らく神経細胞に栄養を与える細胞として位置づけられ、脳の機能にはそれほど関係しないと考えられてきましたが、 最近の研究から脳の機能にかなり関わっていると言うことが分かってきました。 神経細胞とグリア細胞は互いに情報交換を行っていることも分かってきていますし、グリア細胞が原因で病気になる場合があることも知られてきています。 私たちはこのグリア細胞についても研究を進めています。

 最後に、脳の変化はパーキンソン病など神経の病気だけでなく、統合失調症やうつ病などの精神領域の病気を引き起こす場合もあります。 私たちは脳を全体的に捉え、神経の病気だけでなく精神の病気も総合的に理解しようと試みています。 さらに、脳は脳以外の体のいろいろな場所からの情報(生体情報)の処理を行う重要な器官です。 脳の中だけを研究するのでなく、生体情報を統合的に処理する脳ということを常に考えて研究を進めています。 また最近は子どもの脳はどのように発達していくのかについても、特に母体と子どもの物質的なやりとりを中心に研究を進めています。 より詳しい情報は「研究紹介(専門家向け)」に書いてあります。 また、一般の方に向けた最近の報道・講演・著述などは「社会的活動」に情報をのせております。あわせてご参照ください。

Copyright (C) 2006 National Institute of Neuroscience. All Rights Reserved.
本サイトに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます