私たちは「ヒトの脳がいかにかたちづくられ機能するようになるのか?」という疑問に答えるべく様々な切り口から基盤研究を推進しています。これは分子神経発生生物学の基本課題でもあり、その疑問究明によってヒト脳の健やかな発達や病態の理解に欠かせない重要な情報が得られることが期待されます。




F1-21 #3.jpg もう少し絞っていうなれば「ヒトを含めた哺乳類に特異的な大脳皮質領域が発生あるいは進化の過程でいかにかたちづくられ機能するようになるのか?」を理解することが私たちの当面の中心課題です。大脳皮質は6層の細胞組織構築で大別される哺乳類に特有の脳領域で、高度な認知機能の中枢であると考えられています。大脳皮質層の組成が部位(前頭葉、後頭葉、頭頂葉、側頭葉など)によって異なることは既に100年前に見出されており、その後の研究で皮質層構築の相違が機能の違いに反映されることもわかってきました。これら皮質内の組織構成単位である「機能領野」が正しく形成されることは正常な脳機能の発動に必須のできごとで、実際ヒトでは特定領野形成不全のため精神発達に異常をきたす疾患例が多く知られています。よって機能領野形成機序を明白にすることは様々なヒト脳先天性疾患の発症機序ひいては「こころ」の理解につながる重要課題ともいえるでしょう。しかしながら皮質機能領野を規定する遺伝的プログラムについてはほとんど未知なのが現状です。

 私たちはマウス大脳皮質で領域特異的に発現する分子群に着目し、これら分子群が個体発生過程でいかにして領域特異的発現に至るのか、そしてそういった発現様式が大脳皮質領域特異性形成にどのような役割を担っているのかを体系的に明らかにしようとしています。またこれら分子群に領域特異的発現を促すプロモーターやエンハンサー活性を利用してマウス大脳皮質のごく一部分の細胞集団に遺伝的標識を施し、今まで決してみることができなかった皮質発生過程におこるダイナミックな変化を可視化する試みが進行中です。さらには大脳皮質の進化的側面に迫る目的で、鳥類からマウス、霊長類へ至るまでにこれら分子群の役割がどのように遷移したのかについても順次解析する予定です。

 以上の課題を解くにあたって、私たちの研究グループでは一般的な研究室でおこなわれている様々なモデル動物や培養細胞を用いた細胞分子生物学的、生化学的手法はもちろんのこと、世界的にみてもユニークかつ超高度な解析技術を導入しており、専門スタッフ指導のもと研究室配属期間内の習得が十分可能となっています。例えば私たちが恒常的に使っているBacterial Artificial Chromosome (BAC) 操作を含めた最新の分子生物学的手法、遺伝子チップ解析法、分子イメージング技術等は各種ゲノムプロジェクト終了後の医学、生物学研究体系に欠かせないものばかりで、近い将来独立した研究者となった時にきっと役立つツールといえるでしょう。また私たちは発生工学的手法を大きな武器としており、in situ hybridization 等の胚組織染色法からトランスジェニックマウス作出法、着床後の哺乳類胚を胎盤がついたまま母体から取り出して培養する特殊技術、そして全胚培養技術をもとに私たちが独自に確立したエレクトロポレーション法に基づくマウス胚の特定領域へ時期特異的に外来遺伝子を直接導入する技術等も体得できます。さらに私たちは最先端ゲノム編集技術CRISPR/Cas系をトランスジェニックシステムに導入することにも成功し、日々著しい速度で進歩する脳神経科学分野を先導する研究テーマが進行中です。(テクニカル・アドバンテージも参照ください。)

 このように先端技術や情報に囲まれた恵まれた環境で自由な発想のもと、新たな概念や方法論の創出に携わってみませんか? さらなる詳細に興味がある方は、井上(tinoue (at) ncnp.go.jp, atを@にかえて下さい)に直接お問い合わせください。


2014. 05. 13
2015. 10. 01 メンバー、業績を更新しました
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2016. 9. 29 メンバー、業績を更新しました
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