National Center of Neurology and Psychiatry

脳病態データサイエンス研究室の目指すもの

精神・神経疾患の生物学的基盤としては、ゲノム、遺伝子発現、タンパク、代謝物、神経生理、脳画像など、多階層に渡るビッグデータが収集され、それぞれの階層で疾患との関連が指摘されてきました。しかし、こういったバイオマーカーは効果サイズが小さく、疾患症状を十分に説明するには至っていません。こういった背景に対して、我々は、脳における情報処理の数理モデルを起点とすることで、多階層の生物学的情報を統一的に説明し、病態解明と治療法開発に貢献することを目指します。
脳における情報処理の数理モデルの作成には第二研究室(計算論的精神医学研究室)と協調する一方で、より生物学的妥当性に力点を置き、生物学的大規模データに基づいた研究も行っております。このように生物学的妥当性の高い、脳の情報処理モデルを作成するために、理論的手法(計算論的精神医学)とデータ駆動的機械学習手法を統合した手法の開発に取り組んでいます。

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脳デジタルツインを用いた病態解明・治療開発

デジタルツインとは、デジタル空間に現実世界の存在を「双子」のように再現し、シミュレーションをする技術です。産業・工業領域で発展した概念ですが、昨今では医学領域においても応用が進んでいます。心臓等の比較的単純な機能の臓器では、患者個人の臓器のデジタルツインを作成し、シミュレーションを通して個人に最適な治療を選択することが実現されようとしています。脳はそれ自身が情報処理を行う点で特異な複雑性を有する臓器ですが、我々は、計算理論に基づく脳の情報処理プロセスの数理モデル化とデータ駆動的な機械学習アプローチを融合させることで、脳デジタルツインの開発を目指しています。脳デジタルツインのシミュレーションにより、新規治療開発プロセスを大幅に加速させたり、人間には思いつかない新規治療の仮説を提案したり、個別化医療に貢献することが期待されます。

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データ駆動型特徴量抽出を用いた大規模データ解析

デジタルツインに個人の脳を反映するためには、生物学的データから疾患に関連する特徴量を抽出する必要があります。しかし、これは簡単なことではありません。精神・神経疾患の多くの疾患では、一つひとつのバイオマーカーは表現型に対して微小な効果しか有さず(ポリジーンモデル)、こういった微小な効果を互いの相互作用も考慮して効率的に統合するモデルが必要です。さらに医学データでは他の分野と比較して、サンプル数(n)に比較して変数(p)が多くなってしまうn<<p問題もあり、疾患の生物学的基盤の議論を難しくしています。こういった問題を解決するために、我々のグループでは、大規模データに機械学習を用いることで、ゲノムや代謝物からの特徴量抽出、リスク因子間相互作用について報告を行ってきました。このように、生物学的データをより効果的にデジタルツインに反映させる基盤技術として、データ駆動型特徴量抽出技術の開発に取り組んでいます。

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研究体制

精神・神経疾患のデータサイエンス・計算論的精神医学を主導する研究室と密接な連携の元、研究に取り組んでいます。
<主な共同研究先>
* 東北大学病院(精神科)
* 長崎大学(情報データ科学部・植木研究室)
* 慶應義塾大学(理工学部・村田研究室)

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募集

脳病態データサイエンス研究室では、研究員・研究補助員を募集しています。
また、現在複数の大学・研究機関などから研究生・大学院生を受け入れており、当研究室での研究で学位を取得することも可能です。

脳病態データサイエンス研究室で研究を希望する方は、室長の連絡先まで問い合わせください。

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