研究活動及び研究紹介

1.新規ガス性神経伝達物質としての硫化水素

 硫化水素(H2S)は卵の腐敗臭を発する強力な毒ガスである.その毒性については300年前から良く研究されているが,生理活性物質としては考えられていなかった.脳ではシスタチオニンベータシンテース(CBS)H2Sを生合成することと、H2S NMDA受容体を活性化し、記憶のモデルとして知られているLTPの誘導を促進することから、1996年にH2Sを神経伝達修飾物質として提案し、翌97年にはもう1つの生産酵素シスタチオニンガンマライエース(CSE)の存在と、平滑筋弛緩因子としてのH2Sを提案した。これら、発見の歴史については、Science 320, 1155-1157, 2008に紹介されている。2004年には、硫化水素が神経細胞を酸化ストレスから保護することを発見し、心臓や腎臓の虚血再還流障害からの保護の発見につながった。最近、D-cysteineから硫化水素を生産する新規生合成経路を発見し(Nature Commun. 2013)、さらに、硫化水素からできるポリサルファイド(H2Sn)が、脳に存在しTRPA1チャネルの活性化を行うこと(FASEB J. 2013)を示し、新規シグナル分子の可能性を提案した(FASEB B. 2013)。本年はさらに、H2Snの生合成酵素を同定し、H2S3H2S2H2S5が脳に存在することを発見した(Sci. Rep. 2015) その後多くの研究者がこのポリサルファイド研究に参入し、ポリサルファイドが転写調節、癌抑制因子PTEN調節、Nrf2核内移行制御による抗酸化関連遺伝子転写亢進、血圧調節などを制御するが報告されている(総説: Kimura H. Proc. Jpn. Acad. Ser. B. 2015)。

 
2.哺乳動物機能性小分子RNAに関する基礎と応用研究


機能性RNA分子であるsiRNAによって誘導されるRNAiは、簡便な遺伝子ノックダウン
技術として様々な研究分野で利用されている。我々は、この技術を疾患治療に応用す
るために研究開発を行っている。本年度は、多重重複変異に起因するパーキンソン
疾患に対してその原因遺伝子の異常発現を正常化する特殊なRNAiノックダウンの実現を
目指し研究を行った。そして、その成果を国際誌に報告した。さらに、近年注目されて
いる血液中のCell free核酸(cf核酸)についても研究を開始し、神経変性疾患や老化に
伴って変化するcf核酸の探索を行った。

 

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国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所

神経薬理研究部

Department of Molecular Pharmacology