DMDはX染色体上にあるジストロフィン遺伝子の異常で生じる、男児約3,500人に一人という比較的高頻度に発生する遺伝性疾患です。ジストロフィン遺伝子異常によりジストロフィン蛋白が全く存在しないことが原因となります。当研究部では様々な視点からDMDの治療研究を行なっています。


第一のアプローチはエクソン・スキップ誘導療法です。
難治性遺伝性疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する新規治療法として、モルフォリノや2’O-メチルなどのアンチセンス人工核酸を用いたエクソン・スキップ療法の臨床応用が有望視されています。当研究部では、DMDモデル動物(筋ジストロフィー犬、エクソン52欠損マウス)やヒト由来細胞を対象に、人工核酸を用いたエクソン・スキップの前臨床的研究を、国立小児医療センター(ワシントンDC)とも協力して精力的に行っています。これらの成果を受けて、DMD患者さんを対象にしたエクソン51スキップ療法の国際共同治験が、当センター病院で開始されました。


第二のアプローチは、AAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターを用いた遺伝子治療です。
当研究部では、これまでに同ベクターに組み込むことができる短縮型の「マイクロジストロフィン」を開発し、ジストロフィンを欠損するmdxマウスの筋変性を抑えることに成功しました。臨床応用へ向けたさらなるステップとして、2001年より臨床所見がきわめて人に近い動物モデルである筋ジストロフィー犬を日本ではじめて中型実験動物施設に導入し、同モデルを用いた治療研究を行っています。


第三のアプローチは、幹細胞移植治療です。
成体の骨格筋や骨髄には、複数の細胞を作る幹細胞(Multipotent Stem Cell)が含まれています。これらの細胞のうち、骨格筋に効率よく分化するものを集めて移植することにより、血管系を介して全身の骨格筋の治療を行うことができる可能性があります。さらにiPS細胞を骨格筋の幹細胞に分化誘導して移植治療に用いることを視野に入れた研究も行なっています。


さらに上記の治療研究に加え、筋ジストロフィーの複雑な病態の分子メカニズムを明らかにするために、ジストロフィン結合タンパク質(サルコグリカン、シントロフィン、神経型一酸化窒素合成酵素、アクアポリンー4)の機能解析なども行っています。