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研究内容(研究者の方)

把握運動の制御における脊髄介在ニューロンの機能

ヒトをはじめとする霊長類の手の運動には約27個もの筋肉が関わっており、物を掴んだり、操作したりする際(把握運動)には、これらの筋肉を協調させながら活動させる必要がある。このような多自由度の効果器を操作するためには、如何にしてその冗長さ拘束して自由度を低減させるのかが重要になってくる。

霊長類の中枢神経系がどのように自由度を低減しているのかを調べるために、脊髄介在ニューロンに着目して、その神経活動および入出力関係を電気生理学的に同定する研究を行っている。

1.脊髄介在ニューロンは手指の筋肉を協調させるような投射を行っている

個々の脊髄介在ニューロンがどのような投射を持ち、筋出力を行っているのかを明らかにするために、我々は把握運動中のサルから脊髄介在ニューロンの活動を記録し、同時に記録した筋活動のSpike-triggered averaging(STA)解析を行った。その結果、個々の脊髄介在ニューロンは、単一の筋肉の活動を支配するのではなく、複数の筋活動を協働させる効果を持っていることが分かりつつある1。このように、手の筋肉がどのように協調するのかという基本的なパターンが脊髄介在ニューロンによって定義されることによって、より上位の中枢が手の運動を制御する際の自由度を低減している効果を担っていることが考えられる。

2.脊髄介在ニューロンは大脳皮質とは並列的に把握運動の制御を行っている

脊髄介在ニューロンがどのような入力を受けて筋活動を制御しているのかを調べるために、脊髄介在ニューロン活動および大脳皮質一次運動野の神経活動と筋活動の間の相関(コヒーレンス)を解析した。その結果、大脳皮質と筋活動間のコヒーレンス(CMコヒーレンス)および脊髄と筋活動間のコヒーレンス(SMコヒーレンス)ともに15Hz付近でのコヒーレンスを示すことが明らかとなった1。さらに、ARモデルに基づく有向コヒーレンス解析を行った結果、CMおよびSMコヒーレンスともに両方向性の効果によって相関が生まれていることが分かった。このことは、大脳皮質と脊髄介在ニューロンは筋活動制御において、一部並列的なフィードバックループを形成していることを示す結果であった。脊髄介在ニューロンが独自のフィードバックループにより筋活動の制御を行うことで、大脳皮質をはじめとする上位運動中枢の処理負荷を低減する効果を担っていることが考えられる。

脊髄-筋活動間コヒーレンス(SM coherence)の様子。A:脊髄(頚髄灰白質)から記録されたLFPのパワースペクトル。B:手内在筋(FDI)から記録されたEMGのパワースペクトル。C:脊髄LFPとEMG間のコヒーレンス。15Hz付近にシャープなピークが存在することがわかる。点線:有意レベル(p<0.05)、灰色部分:有意なコヒーレンスのピーク。

(参考文献)

  1. Takei and Seki, J Neurophysiol 99 (4) 2012-20 (2008)
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