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プレスリリース詳細

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平成24年8月14日
国立精神・神経医療研究センター

(独)国立精神・神経医療研究センター・三島和夫部長らの研究グループが、
睡眠リズム異常の原因を解明
- 新たな診断法の開発に期待 -

■ 本成果のポイント

  • 1. 概日リズム睡眠障害(非同調型)では体内時計周期(一日の長さ)が異常に長くなっていることを世界で初めて明らかにしました。
  • 2. 強い夜型生活者でも体内時計周期の異常が見られました。24時間社会で生活リズムが破綻しやすいハイリスク群であることが明らかになりました。
  • 3. 概日リズム睡眠障害の新たな診断法の開発に応用が期待されます。

 (独)国立精神・神経医療研究センター・三島和夫部長、北村真吾研究員らの研究グループが、概日リズム睡眠障害(睡眠・覚醒リズム障害)の一型である非同調型の発症に体内時計周期の異常が関連していることを世界で初めて明らかにしました。
本症は、同じ時刻に眠ることができず、睡眠時間帯が毎日1時間ほど遅れてゆく睡眠障害です。月の半分以上は日中に起きていられず、時差ぼけ症状に苦しみ、社会生活に大きな支障が生じます。
 本研究では、非同調型の患者さん6名、夜型生活者8名、標準的な生活リズムの9名に、強制脱同調試験に参加していただきました。昼夜や時刻が全く分からない隔離実験室内で14日間にわたり特殊な睡眠スケジュールで生活してもらい、その間に生じるホルモン分泌・体温リズム位相の変化を測定することで体内時計の周期を精密に測定する方法です。
 本研究の結果、標準型生活者の体内時計周期(その人の一日の長さ)は平均24時間7分であったの対して、非同調型では平均24時間29分と大きく延長していました。非同調型では周期が異常に長いため、遅れてゆく体内時計を24時間の昼夜リズムに日々時刻合わせをすることが困難になっている(慢性的な時差ぼけに陥っている)ことが明らかになりました。実際、周期が長い患者さんほど治療が困難でした。さらに、一部の夜型生活者でも非同調型に匹敵するほど長い周期が認められました。夜型生活者は非同調型を発症しやすいことが知られていましたが、本研究によりそのメカニズムも明らかになりました。
 本成果を利用することで、非同調型をはじめとする各種の概日リズム睡眠障害の精度の高い新規診断法の開発やハイリスク者の同定、予後の判定などが可能になると期待されています。
 本研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム、および国立精神・神経医療研究センター精神・神経研究開発費事業の一環として行われ、2012 年7月30日に科学雑誌「BIOLOGICAL PSYCHIATRY」のオンライン速報版http://www.biologicalpsychiatryjournal.com/article/S0006-3223(12)00582-3/ に掲載されました。

■研究の背景
  近年、睡眠・覚醒リズムの異常を訴える患者さんが増加しています。自分が望む時刻に寝つき、朝に起床することが困難であるため、学校や会社でも遅刻を繰り返し、欠席や休職などで引きこもりがちな生活になると、さらに睡眠リズムが不規則になる悪循環に陥ります。不眠症とは異なり自分の寝やすい時間帯では良眠できます(むしろ長時間睡眠)。このように睡眠時間帯を社会生活に合わせることができなくなるタイプの睡眠障害は概日リズム睡眠障害(睡眠・覚醒リズム障害)と呼ばれます。
 代表的な概日リズム睡眠障害として、1)明け方にようやく寝ついて昼頃に目を覚ます睡眠相後退型(極端な夜型、昼夜逆転型)、2)睡眠時間帯が毎日遅れてゆく非同調型があります。ともに慢性疾患であり、意志の力や家族の声かけなどでは治らず、患者さんの社会生活に深刻な影響を及ぼします。
 非同調型の病因は不明でしたが、体内時計の何らかの調節異常の関与が疑われていました。なぜなら、体内時計の調節に重要な環境光を感受できない全盲の方の約半数が概日リズム睡眠障害に罹患していること、視覚障害のない人でも時刻情報のない隔離環境下(洞窟内など)では同様の睡眠状態に陥るからです。しかし、視覚障害がなく通常生活環境下でも非同調型リズムに陥る原因については不明でした。

■研究の内容
 本研究では、長期罹病している非同調型の患者さん6名、夜型生活者8名、標準型生活者9名に、強制脱同調試験に参加していただきました。強制脱同調試験とは、昼夜や時刻が全く分からない隔離実験室内で14日間にわたり特殊な睡眠スケジュールで生活していただき、その間に生じるホルモン分泌・体温リズム位相の変化を連続して測定することで体内時計の周期をきわめて精密に測定する方法です。
 本研究の結果、標準型生活者の体内時計周期は平均24.12時間(24時間7分)であったの対して、非同調型では平均24.48時間(24時間29分)と異常に延長していました。ちなみに、人の体内時計の周期は25時間と書かれていることがありますがこれは古い方法で測定された値で正しくありません。強制脱同調試験で精密測定した標準生活者の体内時計周期は平均24時間10分前後、23.9〜24.3時間の範囲にあり24時間にとても近いことが明らかになりました。これは米国人のデータとほとんど同じです。それに比べて本研究で確認された非同調型の周期は極端に長いことが分かります。標準型生活者との周期の差(22分)は睡眠習慣に非常に大きな影響をもたらすことがシミュレーション研究からも明らかになっています。今回の研究に参加された患者さんでは、周期が長いほど睡眠リズムを調節する治療(時間療法)の効果が得られにくかったことも、非同調型の発症と治療経過に体内時計の周期の長さが重要な役割を果たしていることを示唆しています。
 本研究では、一部の夜型生活者でも非同調型に匹敵する長周期が認められました。実際、それらの被験者は昼夜逆転に近い生活に陥っていました。夜型生活者の中には失業などで社会生活の縛り(目覚ましなど)がなくなったり、体内時計調節に重要な日照が弱くなる冬季などに非同調型を発症するケースが知られていました。また概日リズム睡眠障害の患者さんの多くでは幼少時から夜型傾向が見られます(環境ではなく体質が強く関連)。本研究により夜型と非同調型との間にも睡眠リズムが崩れやすくなる共通の生物学的基盤が存在することが明らかになりました。

■今後の展開
 24時間社会の中で睡眠リズムが不規則になっている人々が増えています。夜勤従事者も就労者の20%以上に達しています。このような生活環境下では、体内時計周期が長い人は睡眠リズム異常の大きなリスクを抱えています。日照を活用し、規則正しい就床、運動、食習慣を心がけるなどの対策が必要です。
 今後、本成果をもとに、非同調型をはじめとする概日リズム睡眠障害の診断やハイリスク者の同定、治療予後の判定に応用されることが期待されています。現在、患者さんからいただいた皮膚細胞を培養して体内時計の調節に関わる遺伝子(時計遺伝子)の機能を解析することで、周期をより簡便に測定する技法の開発に取り組んでいます。

■論文名
原著名:Intrinsic Circadian Period of Sighted Patients with Circadian Rhythm Sleep Disorder, Free-Running Type

和訳:視覚障害の無い概日リズム睡眠障害(非同調型)の内因性の生物時計周期

※ご取材の際には、事前に下記までご一報くださいますようお願い申し上げます。

<本発表資料のお問い合わせ先>:
氏名:三島和夫
機関・所属名:(独)国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所・精神生理研究部
住所:〒187-8553 東京都小平市小川東町4-1-1
TEL: 042-346-2071 Fax: 042-346-2072
Email:

<本リリースの発信元>
機関名:(独)国立精神・神経医療研究センター
担当者:上野広報係長
住所:〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1
TEL: 042-341-2711 Fax: 042-344-6745
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<文部科学省 脳科学研究戦略推進プログラムに関するお問い合わせ>
脳科学研究戦略推進プログラム 事務局
担当:大塩
TEL: 03-5282-5145 FAX: 03-5282-5146
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