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プレスリリース詳細

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平成25年8月9日
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
総務課広報係 TEL:042-341-2711

ミトコンドリア病MELAS(メラス)に対するEPI-743の臨床研究を開始

 独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP 東京都小平市 総長:樋口輝彦)病院(病院長:糸山泰人)、神経研究所(所長:髙坂新一)疾病研究第二部部長 後藤雄一らのグループは、米国のベンチャー企業エジソン社が開発したミトコンドリア病試験剤「EPI-743」を用いたミトコンドリア病の一種MELAS(メラス)に対する臨床研究を、エジソン社と共同で開始することになり、8月中旬にも最初の投与が開始される見込みとなりました。
 ミトコンドリア病は、細胞内の小器官であるミトコンドリアの機能低下がもたらす病気の総称で、中でも最も患者数の多いMELAS は脳卒中様の症状を呈するものです。これまでにもアルギニンやタウリン等による治療が試みられていますが、酸化ストレス剤としてすでに製剤化されているEPI-743がMELASの症状に対して有効かどうかを調べるのが今回の臨床研究の目的です。

■MELASとは

 ミトコンドリアは身体のどの細胞の中にも存在し、細胞機能の維持に必要なエネルギーを産生しています。そのミトコンドリアの働きが低下するのがミトコンドリア病で、いろいろな種類の細胞が障害されることにより様々な症状が出現します。中でも、MELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes)は、小児においても成人においても最も多い病型で、脳卒中様症状を特徴としています。また、症状は脳だけに止まらず、筋肉(疲れやすい、筋力低下)、心臓(心筋症)、ホルモン(低身長、糖尿病など)など、様々な症状を合併します。
 ミトコンドリア病の診断は難しく、またMELASの診断基準も世界的に確定していないため正確な患者数は把握できませんが、英国とフィンランドの統計で、10万人に4~6人とされており、日本では500人~800人くらいと推計されています。

■MELAS治療の現状と臨床研究の目的

 ミトコンドリア病に対しては、ミトコンドリア機能を回復させる様々な治療薬が試みられています。MELASにおいては、脳卒中発作を契機に症状が重篤化することが多いので、発作の予防が重要であると考えられてきました。アルギニンは、血管を拡張させる効果があるため発作予防に有効であるとされて臨床試験が行われ、今後保険承認の申請が行われる予定です。また、タウリンの大量投与で7年間発作がなくなった症例を経験したことから、医師主導治験が始まろうとしています。このように作用機序の異なる複数の薬剤が試みられており、今後、新しい治療法が見いだされることが期待されているところです。
 今回、臨床研究を行う試験薬EPI-743は、エネルギー産生に係わる経路にあるNADH-キノン酸化還元酵素という名前のタンパク質のはたらきを高めると考えられており、すでにミトコンドリア病の重篤な臨床病型であるリー脳症に対する臨床試験で効果があるとの報告が欧米で出ています。
 今回の臨床研究の目的は、そのEPI-743をMELASに適応し、日本人におけるEPI-743の薬物動態を調べるとともに、MELASの臨床症状に効果があるかどうかを調べることにあります。
 なお、臨床研究の期間は、2013年8月より2014年3月を予定しています。

■臨床研究参加者について

 国立精神・神経医療研究センター病院の神経内科、小児神経科で継続的に診療を行っているMELAS患者は30名程度です。またNCNPでは、全国の病院から依頼を受けて、年間200例近くのミトコンドリア病患者の確定診断をおこなっております。今回の臨床研究の実施に関しては、当院で診断した方々を中心に、東京都、千葉県、神奈川県などの近隣の病院に通院している患者さんもエントリーしており、約10名の患者さんにこの臨床研究に参加していただく予定です。

■EPI-743について

 エジソン社が開発したミトコンドリア病試験剤で、ミトコンドリア病に対する有効な治療薬になることが期待されている薬剤です。EPI-743は経口投与され、ミトコンドリアの機能低下により発生した酸化ストレスを除去することにより効果を発揮します。また、エジソン社は、現在、米国及び欧州において、ミトコンドリア病の一種であるリー脳症を対象に第IIb 相臨床試験を実施しており、日本における同様な臨床試験は大日本住友製薬が行うことになっております。

■エジソン社について

 エジソン社(Chairman and CEO:Guy Miller, MD, PhD)は、2006年に創設され、米国カリフォルニア州マウンテンビューに本社を置くバイオベンチャー企業で、ミトコンドリア病疾患の低分子治療薬の創薬、開発を事業基盤としています。

【用語の説明】
■ミトコンドリア病とは

ミトコンドリアは、細胞小器官の一つでエネルギーを産生する機能などを持っていますが、そのミトコンドリアの働きが低下して起こる病気を総称してミトコンドリア病といいます。ミトコンドリアは全ての細胞にあるため、どの細胞にも起きる可能性があり、けいれん、脳卒中、精神症状、低身長、糖尿病、難聴など様々な症状が現れます。その中でも、エネルギーを多く必要とする神経、筋、心臓などで症状が現れやすいと考えられます。
現時点では根治治療法のない難病であり、厚生労働省から特定疾患に指定されています。

【お問い合わせ先】

【研究に関すること】

後藤 雄一
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所
疾病研究第二部 部長
TEL: 042-341-2711(内線:5121)
e-mail:

【報道に関すること】

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 広報係
TEL: 042-341-2711/FAX: 042-346-2094

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