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プレスリリース詳細


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2013年10月17日
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
Tel:042-341-2711(総務部 広報係)

筋ジストロフィーに対するステロイド治療の長期効果を立証
-神経筋疾患患者情報登録「Remudy」におけるデータ解析から-

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市、総長:樋口輝彦)病院(病院長:糸山泰人)の竹内芙実研究生、中村治雅研究生(現・医薬品医療機器総合機構 新薬審査第3部審査役代理)、NCNPトランスレーショナル・メディカルセンター(センター長:武田伸一)の米本直裕室長、木村円室長らのグループが、神経筋疾患患者情報登録「Remudy」に登録されたデータの詳細な解析を行ったところ、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者に対するステロイド治療が、歩行可能期間を延長していることが明らかになりました。

これは、日本人の筋ジストロフィー患者に対する治療薬の長期効果を検討した初めての臨床研究です。また、ステロイド治療の長期効果を検討した研究はこれまでにも行われていますが、患者登録制度を活用した研究は世界でも初めてであり、現時点で世界最大規模の臨床研究となります。

この研究成果は、9月22日に国際的科学誌『Journal of Neurology』のオンライン版(http://link.springer.com/article/10.1007/s00415-013-7104-y)に掲載されました。

 

■筋ジストロフィーのステロイド治療の有効性が明らかに

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対するステロイド治療の有効性は、1974年に初めて報告されて以降、主にヨーロッパと北米における研究結果によりステロイド治療の短期効果(半年から2年の間、筋力を増強し運動能力を改善させる)が実証され、欧米のガイドライン等で積極的なステロイド治療が推奨されてきました。

しかしながら、今日に至るまで日本においては多数例を検討した臨床研究はなく、日本人のDMD患者に対するステロイド治療の有用性は示されていませんでした。また、ステロイド治療による長期効果(歩行可能期間の延長、心肺機能温存、側彎進行抑制など)を多数例で検討した研究は世界的にみても多くありません。

そこで本研究グループでは、神経筋疾患患者情報登録「Remudy」の運用が開始された2009年7月から2012年6月までに登録されたジストロフィン異常症患者を、ステロイド未使用群と使用群(現在使用中と過去に使用)の2群に分け、両群の歩行不能になる時期を後方視的に検討しました。その結果、歩行不能年齢の中央値はステロイド未使用群が10歳1か月、使用群が11歳0か月となり、ステロイド使用群の方が歩行不能になるまでの期間が有意に延長していることが明らかになりました(図1)。

今回の結果は、日本だけでなくアジアを始めとする各国においても、DMD患者・医療者の治療法の選択に対して有用な情報を提供していると考えられます。

図1)ステロイド薬(プレドニゾロン)による歩行機能の延長効果
図1)ステロイド薬(プレドニゾロン)による歩行機能の延長効果

■希少疾患全般の治療の実現化へ大きく前進する一歩に

今後期待される展開としては、DMD患者のステロイド治療に関する詳細な臨床情報(使用量、開始時期、副作用等)の解析と、心肺機能温存、側彎進行の抑制など長期効果につながる安全で有効な投与方法を明らかにすることが期待されます。また同時に、新規治療法の評価につながるデータを集積し病態の進行や治療反応性を予測するバイオマーカーの解明を進めることが重要です。さらには、希少疾患全般の登録システムを整備し、同様の研究手法を他の難治性希少疾患の臨床研究に応用することで、それぞれの疾患の治療の実現化に向けた開発研究が大きく前進することが可能となります。

※本研究は、独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター精神・神経疾患研究開発費(23-4)による研究資金で行われました。

 

【用語の説明】

■デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)とは:

最も頻度の高い重篤な遺伝性筋疾患であり、ジストロフィン遺伝子の変異により発症します。日本における正確な患者数は把握できておらず、最新の研究から2,500人から5,000人のDMD患者がいると推測されています。

神経筋疾患患者情報登録「Remudy」とは:

患者本人が自分の意志によって登録し、担当医と専門家によって正確な臨床情報・遺伝情報を備えた日本初の希少疾患のナショナルレジストリー。2009年7月より筋ジストロフィーの患者登録システムとして、独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター内に創設され、日本全国の患者、家族、医療機関、患者支援団体などの多大な協力により、臨床研究・治験の速やかな実施を目指し継続的に運用されています。このレジストリーは、研究者・開発企業、希少疾患患者および支援団体、医療者などの橋渡しを行う世界規模のネットワーク「TREAT-NMD alliance (http://www.treat-nmd.eu)」に重要なメンバーとして参加しており、臨床開発試験の情報提供や参加者のリクルートにも貢献しています。2013年9月末時点で、1,190名のジストロフィン異常症患者が登録されています。

 

【原論文情報】

論文名: Prednisolone improves walking in Japanese Duchenne muscular dystrophy patients.
著 者: Fumi Takeuchi, Naohiro Yonemoto, Harumasa Nakamura, Reiko Shimizu, Hirofumi Komaki, Madoka Mori-Yoshimura, Yukiko K Hayashi, Ichizo Nishino, Mitsuru Kawai, En Kimura, Shin'ichi Takeda
掲載誌: Journal of Neurology, 2013; Advance Online Publication September 2013, DOI: 10.1007/s00415-013-7104-y


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TEL: 042-346-2309
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