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2017年1月6日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
Tel:042-341-2711(総務部 広報係)

皮膚筋炎の高感度バイオマーカーを発見

  

 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市、理事長:水澤英洋)神経研究所(所長:武田伸一)疾病研究第一部(部長:西野一三)の漆葉章典、西川敦子、鈴木理恵らのグループは、厚生労働省指定難病の一つである皮膚筋炎の診断において、筋細胞上に発現するMxA(ミクソウイルス抵抗蛋白質A)が、従来のものと比較して最も優れた診断バイオマーカーになることを明らかにしました。
 皮膚筋炎は筋肉と皮膚に炎症をきたし、筋力低下や皮膚の発疹を起こす疾患です。間質性肺炎やがんといった生命に関わる合併症を伴うこともあることから、より早期からの正確な診断が求められます。研究グループは、皮膚筋炎患者の筋細胞上に発現するMxAを検出することで、従来の診断方法に比べて高感度で診断できることを発見しました。この研究成果は、今後の皮膚筋炎の診断精度の向上に大きく貢献するものと期待されます。
 この研究内容は、日本時間2016年12月31日午前6時に米国神経学アカデミー学会誌「Neurology」オンライン版に掲載されました。また本論文は当該号の表紙を飾ることになっています。
 

■研究の背景
 皮膚筋炎は小児から高齢者にまで幅広く発症する、炎症性筋疾患の中では比較的頻度の高い疾患です。病因の詳細は不明で、厚生労働省の指定難病に挙げられています。筋肉と皮膚に炎症が生じ、筋力低下や筋痛、顔や手指などの皮膚に生じる発疹が主な症状ですが、一部の患者では間質性肺炎やがんといった生命に関わる合併症を伴うことがあり、早期に診断して適切な治療介入を開始することが重要です。
 皮膚筋炎の正確な診断のために、筋肉の一部を採取して行う筋病理診断が有用とされています。特に線維束周囲性萎縮という筋病理所見が皮膚筋炎の診断で重視されていますが、実際にはその検出感度は低く、確定診断がつかないケースが多いことが問題です。また初期に明らかな皮膚病変を伴わないケースもあり、そうした患者においては皮膚筋炎の診断を身体診察所見に基づいて行うことも困難であり、診断の遅れが懸念されます(van der Meulen MF, et al. Neurology 2003. Amato AA, et al. Continuum 2013)。こうした背景から、研究グループは皮膚筋炎のより高感度の診断バイオマーカーの開発に着手しました。

■研究の内容
 研究グループはまず、バイオマーカーの候補物質としてMxA(ミクソウイルス抵抗蛋白質A)に着目しました。近年、皮膚筋炎の発症に1型インターフェロンと呼ばれる炎症物質が関わることが報告されていますが、MxAは1型インターフェロンによって誘導されて発現する蛋白質の一種です(Greenberg SA, et al. Annals of Neurology 2005など)。そして、筋検体でのMxAの発現を解析したところ、皮膚筋炎患者34例中24例(71%)でMxAが筋細胞上で発現していることが観察され(図1)、これは従来の皮膚筋炎の診断マーカーである線維束周囲性萎縮や毛細血管への補体沈着における陽性率(各47%、35%)よりも高く、最も高感度であることが示されました(図2)。
 

図1 MxAの筋細胞上での発現
図1 MxAの筋細胞上での発現

 [左図]皮膚筋炎患者の筋組織。多くの筋細胞上にMxA(茶褐色)が発現していることが観察される(矢印で示される楕円形の構造が筋細胞)。
 [右図]対照の自己免疫介在性壊死性ミオパチー患者の筋細胞には、MxAの発現は見られない。
 

図2 皮膚筋炎診断マーカーの感度
図2 皮膚筋炎診断マーカーの感度

 MxAの筋細胞上での発現は、従来の診断マーカーである線維束周囲性萎縮、毛細血管補体沈着より高感度である。


 またMxAの発現は、重度の間質性肺炎を伴うタイプの皮膚筋炎や、がんを伴った皮膚筋炎においても観察されました。さらに他の炎症性筋疾患患者(多発筋炎、抗合成酵素症候群、封入体筋炎、自己免疫介在性壊死性ミオパチー)でMxAが陽性であったのは120例中2例(1.7%)のみであり、特異性の観点でも従来の診断マーカーと同等以上であることが確認されました。


■研究の意義・今後の展望
 MxAの筋細胞上での発現は、皮膚筋炎の診断において感度71%、特異度98%という高いポテンシャルをもち、これは従来の診断マーカーである線維束周囲性萎縮(感度47%、特異度98%)や毛細血管補体沈着(感度35%、特異度93%)と比較して最も優れた診断マーカーになることが示されました。また従来の診断マーカーより判定が容易であることも利点と考えられます。この研究成果は、皮膚筋炎の診断精度の向上に大きく貢献すると期待されます。


■用語解説
1) 皮膚筋炎
 小児から高齢者にまで幅広く発症する、炎症性筋疾患の中では比較的頻度の高い疾患。病因の詳細は不明で、厚生労働省の指定難病に挙げられる。筋肉と皮膚に炎症が生じ、筋力低下や筋痛、顔や手指などの皮膚に生じる発疹(ヘリオトロープ疹と呼ばれる上まぶたに生じる腫れぼったい紅紫色の皮膚病変や、ゴットロン丘疹・徴候と呼ばれる手指関節やその他の関節の伸側に生じる、かさつきのある紅色の皮膚病変)が主な症状であるが、一部の患者では間質性肺炎やがんといった重篤な合併症を伴うことがあり、早期の正確な診断と適切な治療介入が重要である。従来、線維束周囲性萎縮という筋病理所見が皮膚筋炎の確定診断では重視されるが、その検出感度の低さが問題とされている。

2) MxA(エム・エックス・エー、myxovirus resistance protein A)
 ミクソウイルス抵抗蛋白質A。ウイルス感染においては白血球から分泌された1型インターフェロンと呼ばれるサイトカイン(炎症物質)によって誘導・合成され、ウイルスの複製を抑制する働きをもつ。また一部の自己免疫疾患においては、その病態形成に関係しているとされる。

3) 筋病理診断
患者から採取された筋肉を染色し顕微鏡で観察して診断すること。筋疾患の診断ではしばしば必要となるが、高い専門性が求められるため、国立精神・神経医療研究センターは全国の医療機関に筋病理診断サービスを提供している。年間600~800件の診断依頼を受け、これまでの診断件数は累計15,000件以上であり、これは世界有数の診断実績である。


■原論文情報
論文名: Sarcoplasmic MxA expression - a valuable marker of dermatomyositis
著者: 漆葉章典*、西川敦子*、圓谷(鈴木)理恵、濱中耕平、桑名正隆、渡邊由里香、鈴木重明、鈴木則宏、西野一三(*:共同筆頭著者)
掲載誌: Neurology(米国神経学アカデミー学会誌)オンライン版(日本時間2016年12月31日、米国時間30日)
DOI: 10.1212/WNL.0000000000003568
URL: http://neurology.org/lookup/doi/10.1212/WNL.0000000000003568


■助成金
 本研究は国立精神・神経医療研究センター精神・神経疾患研究開発費(26-8)、科学研究費助成事業・基盤研究C(26461298、慶應義塾大学)、厚生労働省難治性疾患(神経免疫疾患)政策・実用化研究班(慶應義塾大学)の研究助成を受けて行われました。
 

■お問い合わせ先
【研究に関するお問い合わせ】

西野一三(にしの いちぞう)
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
神経研究所 疾病研究第一部 部長
メディカル・ゲノムセンター(MGC) ゲノム診療開発部 部長(併任)
TEL: 042-341-2711(代表) FAX: 042-346-1742
Email:
〒187-8502 東京都小平市小川東町4-1-1

【報道に関するお問い合わせ】
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
総務課 広報係
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