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プレスリリース詳細

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2017年7月13日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター (NCNP)

NCNP、脳とこころに関連する3つの専門疾病センターを開設
「嚥下障害リサーチセンター」「気分障害先端治療センター」「認知症センター」

 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市 理事長:水澤英洋)は、研究所と病院を併せ持つナショナルセンターの特色を活かして、これまでの7つの専門疾病センターに加えて、新たに3つの専門疾病センターを本年6月に開設致しました。今回新たに開設したのは、(1)神経筋疾患・精神疾患に合併することが多い嚥下障害を克服することを目指す「嚥下障害リサーチセンター」、(2)気分障害(うつ病、躁うつ病)の寛解(かんかい)を目指し、かつ社会機能の回復を見据えた新たな治療法の開発などを目指す「気分障害先端治療センター」、(3)わが国の高齢化と認知症を取り巻く環境からの期待に応じ、従来から取り組んでいる認知症克服を目指す医療と研究開発について更に成果の拡大を目指す「認知症センター」の3専門疾病センターとなります。3つの専門疾病センターの開設に共通する目的は、研究所と病院の集学的・包括的な連携力を発揮することにより①先端的研究と診療の向上を図り、②新たな病態解明と新薬・新治療法の開発、③職種の枠を超えた取り組みによる人材育成、④先進医療・研究モデルの普及等の実現化を目指すことです。
 各専門疾病センターの概要は以下のようになります。


1. 神経筋疾患・精神疾患を対象としたわが国初めての「嚥下障害リサーチセンター」
 平成23年以降、わが国の死亡原因の順位は、悪性腫瘍、心疾患に続いて第3位に肺炎が挙がります。その背景には、嚥下障害による誤嚥性肺炎があると推察されています。嚥下障害とは食物を飲みこむことの障害で、病気だけでなく加齢変化も原因になります。そのため、高齢化社会を迎えるわが国では、嚥下障害に対する医療ニーズが高まっています。NCNP病院では、対応が難しいとされる神経筋疾患領域、精神疾患領域の嚥下障害の診療に早くから取り組んできました。平成22年には専門外来「飲みこみ外来」を開設し、神経筋疾患・精神疾患に合併した嚥下障害に高度な医療を提供してきました。また、嚥下造影検査のデータベースには5000件を越える神経筋疾患・精神疾患の嚥下が記録され、世界に類をみない規模を誇るに至ります。
 こうした実績を生かし、この度NCNPでは神経筋疾患・精神疾患を対象としたわが国初の「嚥下障害リサーチセンター」を開設致しました。「嚥下障害リサーチセンター」は、嚥下障害の克服を目指し、医師、歯科医師、看護師、言語聴覚士など多職種にNCNPの先進医療情報を提供し、専門知識をもった人材を育成していきます。また、より高度な医療を国民に提供するため、関連団体と協力し、地域の中で嚥下障害を治療する診療ネットワークの構築にも取り組んでいきます。病院と研究所が連携できるナショナルセンターとしての強みを生かし、包括的な医療・研究事業を推進していきます。

  

2. うつ病の先端的治療の有効性のエビデンスを集積し、モデル医療の実現をめざす「気分障害先端治療センター」
 精神疾患は5疾病5事業として平成25年度より新たに医療計画に追加されましたが、とりわけうつ病に関しては、現状の治療において不十分な点が多いことが知られています。うつ病や躁うつ病といった気分障害の患者数は直近12年間で2倍以上に増加しております(44万人→96万人、厚生労働省調べ)。そして、うつ病に罹患していても7~8割が専門医を受診しないという調査結果もあり、実際の罹患者数はこの数字よりはるかに多いと推定されています。それに加え、気分障害は休業、失業、自殺などの大きな要因となっています。気分障害に限らず、精神疾患全般においてその治療目標は「改善」から「寛解」へと誘導するのみならず、「社会機能や主観的生活の質(QOL)の回復」であるべきであることが指摘されてきています。気分障害患者さんの社会機能の低下は本人のみならず、国の経済にとっても大きな損失を生んでいます。一方、現在の日常臨床の現場においては気分障害の診断は殆どが面接に基づいており、生化学的・生理学的・あるいは脳画像による客観的指標が殆ど存在しません。予防・治療法についても気分障害の生物学的病態がいまだに不明であることから標的分子やバイオマーカーを開発することが喫緊に求められています。
 NCNPでは、従来から標準的な抗うつ薬療法や修正型電気けいれん療法(mECT)を行うほか、他施設では殆ど行われていない高度な先端的治療法として①経頭蓋反復磁気刺激療法(rTMS)、経頭蓋直流刺激療法(tDCS)等の脳刺激療法(ニューロモデュレーション)や、②認知行動療法(物事の考え方を変えることで気分の改善を図る)、③認知リハビリテーション(記憶・学習などの認知機能の改善を図る)、④栄養学的治療(栄養面の詳しい検査に基づいた栄養補充や食品成分による治療)に取り組んでおります。また、世界最大規模の脳脊髄液バイオリソースを活用したオミックス解析データや、1000人以上のMRI脳画像データを保有しており、バイオマーカーを用いた臨床の開発を推進しております。これらの強みを発揮できる「気分障害先端治療センター」の開設により、研究所と病院の連携体制を更に強化して、近未来の気分障害治療のモデル開発とわが国の新たなガイドラインの策定に貢献することを目指し、気分障害の克服に取り組んでいきます。
 また、気分障害先端治療センターの外来部門は10月開設に向けて現在準備中です。

  

3. 認知症関連疾患に対する、精神科・神経内科の両面から、研究と臨床の両面から集学的に取り組むわが国初めての「認知症センター」
 わが国の高齢者の約4人に1人が認知症の人、またはその予備軍となっているのが現代という時代です。国民の高齢化の進展に伴い、更に認知症の人が増加することが予想され2025年には、認知症の人の数が約700万人になると予想されています。認知症はアルツハイマー病をはじめとする、さまざまな病気により、記憶などの脳の認知機能が障害された状態です。認知症を引き起こす病気の殆どは精神科・神経内科が診療するものに含まれます。NCNPでは、従来から認知症を含むさまざまな脳疾患を診療し、地域モデルの構築を含む地域との連携などで成果を挙げてきています。「認知症センター」の開設により、早期治療と早期診断を実現するため、病院と研究所が密接な連携を図り、認知症関連疾患の診療向上、先端的診断法開発と根本的治療法開発、病態解明、人材育成、先進モデルの普及を目指します。また、既に着手している患者登録システムIROOPの運用とも連携して、治験などの先進医療の推進の一層の加速を図っていきます。

  

■用語解説
・専門疾病センター

 NCNP病院では2010年より、いくつかの病気について診療科や専門分野を超えたチームにより高度専門的診療を行う体制を組み(これを診療科横断的と言います)、専門疾病センターを開設しております。他の専門外来と同様に、窓口になる診療科の医師が診療を行いますが、必要に応じて他科・他の専門分野や研究所の協力を得て、より掘り下げた高度専門的診療を行います。研究所と協力して新しい診断法・治療法の開発に取り組むこともあります。こうした専門疾病センターにより、1つの診療科だけでは対応が難しい病気に診療科を超えて取り組み、また治療法が十分確立していない疾患に対して研究所と連携して先駆的治療を試みることも可能となっています。これまでに開設した7つの専門疾病センター、多発性硬化症センター、筋疾患センター、てんかんセンター、パーキンソン病運動障害疾患センター、地域精神科モデル医療センター、睡眠障害センター、統合失調症早期診断治療センターに加え、この度新たに3つの専門疾病センターを開設致します。
 専門疾病センターホームページ:http://www.ncnp.go.jp/hospital/disease/index.html
・誤嚥性肺炎
 誤嚥した食物や唾液が原因になった肺炎。
・嚥下造影検査
 嚥下機能を評価するための検査。X線透視下で造影剤を飲み、嚥下を評価する。
・気分障害
 抑うつ気分、高揚気分などの気分の異常を主症状とする精神疾患で、うつ状態のみを示すうつ病とうつ病相と躁病相を呈する躁うつ病(双極性障害)に大きく分けられる。
・寛解
 病気の症状が概ね消退して安定した状態。
・修正型電気けいれん療法(mECT)
 麻酔をかけて脳に数秒~10秒間、100ボルト程度の通電を行う。週に2~3回の頻度で2,3週間行うことによって、精神症状が改善することが多い。
・経頭蓋反復磁気刺激療法(rTMS)
 気分障害と関連する脳部位を磁気で刺激することにより(通常、毎日、3週間程度)、精神症状の改善を図る治療法。
・経頭蓋直流刺激療法(tDCS)
 前頭葉の頭皮から弱い直流電流で刺激を行い、精神症状の改善を図る。
・認知行動療法
 患者の考え方のクセを見直し、考え方をかえることで気分や感情の改善を図る治療法。
・オミックス
 タンパク質の網羅的解析(プロテオミクス)、代謝産物の網羅的解析(メタボロミクス)、遺伝子多型の網羅的解析(ゲノミクス)など生体試料にあるあらゆる分子を網羅的に解析する方法
・認知症関連疾患
 アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、慢性外傷性脳症などの疾病
・IROOP
 NCNPは2016年6月より、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の認知症研究開発事業の支援により国立長寿医療研究センターなどとともに認知症の発症予防を目指したインターネット健常者登録システムIROOP(Integrated Registry Of Orange Plan;アイループ)を開発し、登録運用しております。IROOPは公的機関の主導する認知症予防を目的とし、40歳以上の健康な日本人を対象とした数万人規模のインターネット登録システム(レジストリ)の運用で、日本初の取り組みです。この健常者登録システムは、認知症の発症を予防するための方策を見つける研究や認知機能の改善が期待される薬の効果を確かめる治験に関するご案内をご希望者へ提供しており、2017年6月時点で約4700人が登録されています。

  

■お問い合わせ先
【「嚥下障害リサーチセンター」 に関するお問い合わせ】
山本 敏之(やまもと としゆき)
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院
嚥下障害リサーチセンター長 / 病院 神経内科 医長
〒187-8502 東京都小平市小川東町4-1-1
TEL: 042-341-2711(代表)
E-mail:E-mail

【「気分障害先端治療センター」 に関するお問い合わせ】
功刀 浩(くぬぎ ひろし)
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院
気分障害先端治療センター長 / 神経研究所 疾病研究第三部長
〒187-8501 東京都小平市小川東町4-1-1
TEL: 042-346-1714(直通)
E-mail:E-mail

【「認知症センター」 に関するお問い合わせ】
塚本 忠(つかもと ただし)
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院
認知症センター長 / 病院 神経内科 医長
〒187-8502 東京都小平市小川東町4-1-1
TEL: 042-341-3711(代) 3315 (塚本)
E-mail:E-mail

【報道に関するお問い合わせ】
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
総務課 広報係
〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1
TEL: 042-341-2711(代表) Fax: 042-344-6745
Email:Email

 

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