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プレスリリース詳細

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  2017年10月2日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター (NCNP)

NCNP、薬物依存症治療のための専門疾病センターを開設
「薬物依存症治療センター」

 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市 理事長:水澤英洋)は、研究所と病院を併せ持つナショナルセンターの特色を活かして、これまでの10専門疾病センターに加えて、新たに薬物依存症に対する専門疾病センター「薬物依存症治療センター」を本年9月に開設致しました。薬物依存症は自分の意志では薬物の使用をコントロールできなくなってしまう障害でれっきとした精神医学的障害です。決して意志が弱いからでも反省が足りないからでもありません。そして精神医学的障害である以上、いくら説教や叱責、あるいは罰を与えても、それでよくなるものではありません。なぜなら、薬物を使ったことのある脳は、いつまでも薬物の快感を記憶していて、自分でも気づかないうちに、その人の思考や感情を支配してしまうからです。そのため、薬物依存症に対する専門治療が必要になります。
 わが国では、2016年6月施行の「刑の一部執行猶予制度」や、同年12月に成立した「再犯防止推進法」の法制度に加え、厚生労働省内に設置された依存症対策推進本部の設立により薬物依存症に対する地域支援体制の整備を図っていく方策も講じられ、政策的な取り組みが充実してきています。一方、薬物依存症に対する医療体制の整備・拡充は重要な課題となっているにも関わらず、現状は依然として乏しい状況です。
 NCNPでは、2014年以降、厚生労働省の依存症治療拠点病院事業において薬物依存症に関する全国拠点を担ってきた経緯もあり、さらに取り組みを加速させるために、このたびNCNP内に薬物依存症の治療に取り組む専門疾病センターを設置することとなりました。今回、NCNP内において薬物依存症に対する医療サービスを集約化することで、病院と研究所が有機的に連携し、質の高い医療サービスを提供するとともに、危険ドラッグの成分分析や毒性評価、ならびに心理社会的治療プログラムの開発や薬物療法などの生物学的治療法の開発を行い、その研究成果を迅速に臨床に還元し、薬物依存症に対する先端的な診断・治療サービスを確立して参ります。また、「薬物依存症治療センター」主催の研修事業を通じて、薬物依存症に対する医療体制の普及・整備の促進も図って参ります。

薬物依存症治療センターホームページ
URL:http://www.ncnp.go.jp/hospital/disease/center_10.html


■設立の背景と目的
 薬物依存症対策はわが国喫緊の課題であり、政策的には2016年6月「刑の一部執行猶予制度」施行、同年12月の「再犯防止推進法」の成立、同年12月に厚生労働省内に依存症対策推進室の設立で地域支援体制整備を強化していくなど、重要な方策が講じられてきています。一方、保健医療的資源の側面では、精神科医療関係者の忌避的感情や専門医・専門医療機関の不足、具体的な治療プログラムの未確立、など深刻な医療資源不足があることが課題です。NCNPでは、2014年から厚生労働省依存症治療拠点病院の全国拠点として事業を開始していることに加え、(1)薬物依存症に対して病院と研究所とが有機的に連携し、質の高い医療サービスを提供していくこと、(2)危険ドラッグの成分分析や毒性評価、ならびに心理社会的治療プログラムの開発や薬物療法などの生物学的治療法の開発を行うこと、(3)その研究成果を迅速に臨床に還元し、薬物依存症に対する先端的な診断・治療サービスを確立すること、そして(4)国内では数少ない薬物依存症臨床における研修事業の実施により薬物依存症に対する医療体制の普及・整備を促進すること、を目的として薬物依存症を対象としたわが国初の「薬物依存症治療センター」を開設致しました。

  

■NCNPにおける取り組みの歴史
 NCNPでの薬物依存症に対する取り組みは、2005年からのNCNP内に設置されている医療観察法病棟におけるアルコール・薬物使用障害治療プログラムの立ち上げに始まります。現在も継続実施されるだけでなく、国内各地の医療観察法指定医療機関に普及しています。2009年10月には「薬物依存症外来」を立ち上げ、2010年1月より依存症集団療法を開始し、2017年8月末までに述べ約600名の薬物依存症患者さんの治療実績を積み重ねています。このプログラムは、2016年の病院評価機構の監査において意義ある実践として高い評価も受けました。
 また、2006年よりSerigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program (SMARPP)を開発しました。このプログラムは、2016年度診療報酬改定において、「依存症集団療法」として診療報酬加算対象となり、現在までに国内32箇所の精神科医療機関と33箇所の精神保健福祉センターで実施されており、普及に努めてきました。診療報酬算定に際しての「施設基準」取得のための研修会も現在まで9回の開催で既に約800名超の受講修了者を輩出しています。
 以上のような外来治療プログラムに加えて、現在、入院治療プログラムも試行しております。これは、2016年7月に発生した相模原市障害者施設殺傷事件を受けて、「精神科救急病棟における薬物問題への介入の強化」が叫ばれているのに呼応したもので、NCNP病院の急性期治療病棟における短期介入プログラムとして開発されています。
 このように、研究所の研究者と病院の多職種と連携して、すでに取り組んできた専門外来と外来プログラムの実績やノウハウを発揮して、より包括的な医療・研究事業を展開して参ります。

  

■展望:「薬物依存症治療センター」における具体的な取り組み内容
 「薬物依存症治療センター」の開設にあたり、治療面では、これまで通り医師に加え、臨床心理士、看護師、精神保健福祉士、作業療法士から構成される多職種による統合的な治療プログラムを提供します。そして外来通院における集団療法を中心とし、医師による診察や薬物療法も行います。必要に応じて臨床心理士による面談が行われる場合もあります。また病状によっては入院治療により入院用治療プログラムも提供される場合もあります。さらに、すでに試行的に行われている薬物依存症者のご家族のためのプログラムも、平成30年4月を目途に正式に開始する予定です。
 一方、開発研究面では、わが国の薬物依存症治療の最先端かつ中心的役割を果たすべく、以下のような事業の取り組みを推進して参ります。

(1)2017年~2018年:
  ・精神科救急病棟における簡易介入プログラムの開発
  ・外来治療プログラムの改訂とその効果の検証
  ・薬物依存症家族支援プログラムの開発

(2)2018年~2020年:
  ・薬物療法イフェンプロジルの覚せい剤依存症患者さんに対するRCTの実施
  ・重複障害患者さん用個人療法プログラムの開発
  ・処方薬乱用防止プログラムの開発

(3)2021年~
  ・統合的薬物依存症治療プログラムの本格的な実施展開

  

■用語解説
・専門疾病センター

 NCNP病院では2010年より、いくつかの病気について診療科や専門分野を超えたチームにより高度専門的診療を行う体制を組み(これを診療科横断的と言います)、専門疾病センターを開設しております。他の専門外来と同様に、窓口になる診療科の医師が診療を行いますが、必要に応じて他科・他の専門分野や研究所の協力を得て、より掘り下げた高度専門的診療を行います。研究所と協力して新しい診断法・治療法の開発に取り組むこともあります。こうした専門疾病センターにより、1つの診療科だけでは対応が難しい病気に診療科を超えて取り組み、また治療法が十分確立していない疾患に対して研究所と連携して先駆的治療を試みることも可能となっています。これまでに開設した10の専門疾病センター、多発性硬化症センター、筋疾患センター、てんかんセンター、パーキンソン病運動障害疾患センター、地域精神科モデル医療センター、睡眠障害センター、統合失調症早期診断治療センター、気分障害先端治療センター、認知症センター、嚥下障害リサーチセンターに加え、この度新たに専門疾病センターを開設致します。
 専門疾病センターホームページ:http://www.ncnp.go.jp/hospital/disease/index.html
・刑の一部執行猶予制度
 懲役刑や禁錮刑を一定期間受刑させたのち、残りの刑期の執行を猶予して、早期に比較的長期の社会内処遇に切り替え、受刑者の社会復帰促進と保護観察による再犯防止を目指す制度です。この制度は、平成25年6月に公布された「刑法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第49号)による改正刑法および「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」(平成25年法律第50号)に定められものであり、平成28年6月より施行されています。これが薬物事犯者に適用された場合、これまでより短期間の施設(刑務所)内処遇で社会に戻る代わりに、一定期間、保護観察所の監督下で社会内処遇を受けることとなり、地域で薬物再乱用防止プログラムの受講が義務づけられます。
・再犯防止推進法
 この法律は、犯罪をおかした者の円滑な社会復帰を促進し、再度の犯罪を防止するために、国と地方公共団体が協働して取り組むことを目指して、平成28年12月に成立した。本法律では、国および地方公共団体の責務を明らかにされるとともに、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定め、再犯防止施策の総合的かつ計画的な推進を義務づけている。
・厚生労働省内の依存症対策推進本部
 平成25年度に成立したアルコール健康障害対策基本法の責任官庁が、平成29年度に内閣府から厚労省に移管になり、さらには、「刑の一部執行猶予制度」の施行、ならびに、「再犯防止推進法」と「IR推進法」の成立によって、厚生労働省は、アルコール・薬物・ギャンブルの3つの依存症への対策にいっそう注力することが求められています。このような状況に対応し、平成28年12月に厚生労働省内に、厚生労働大臣を本部長とする、「依存症対策推進本部」が設置されました。ただし、ひとくちに依存症といっても、アルコール・薬物・ギャンブルとでも、それぞれをとりまく状況や対応に大きな違いがあります。そこで、「依存症対策推進本部」の下には、「アルコール健康障害対策チーム」、「薬物依存症対策チーム」、「ギャンブル等依存症対策チーム」の3つのセクションが作られ、それぞれに対策を推進していくこととなっています。

  

■お問い合わせ先
【「薬物依存症治療センター」 に関するお問い合わせ】
松本俊彦(まつもと としひこ)
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
薬物依存症治療センター長 / 精神保健研究所 薬物依存研究部長
〒187-8501 東京都小平市小川東町4-1-1
TEL: 042-341-2711(代表)
E-mail:E-mail

【報道に関するお問い合わせ】
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
総務課 広報係
〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1
TEL: 042-341-2711(代表) Fax: 042-344-6745
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