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第30回 若手育成カンファレンス報告書

 2013年10月23日、第30 回若手育成カンファレンスが開催され、野口普子さんと松岡豊さん(トランスレーショナル・メディカルセンター)が発表されました。

「交通外傷患者の過去のトラウマ体験が認知的評価に及ぼす影響についての検討」
野口 普子(トランスレーショナル・メディカルセンター)

 外傷後ストレス障害(Posttraumatic stress disorder:PTSD)の認知モデルでは、否定的な認知が症状の発症と持続に影響を及ぼし、過去のトラウマ体験が認知的評価に影響するとされています。そこで、本研究では過去のトラウマが事故後の認知的評価に影響を及ぼすか否かについて検討されました。交通外傷で入院した18歳以上70歳未満の患者さん96名に、事故から1カ月と6カ月時点で追跡調査が行われました。外傷的出来事への認知的評価であるPTCI得点を従属変数、過去のトラウマ体験数、年齢、性別、身体外傷重症度、死の脅威の有無、過去の精神科既往歴、家族の精神科既往歴、教育歴を独立変数とした重回帰分析の結果、過去のトラウマ体験数は事故後1か月時点での認知的評価を予測しましたが、6か月時点では予測しませんでした。このことから、過去のトラウマ体験数は外傷的出来事に関する急性期の認知的評価を予測するが、慢性期にはその影響が弱まることが示されました。

「ω3系脂肪酸によるPTSD予防の可能性」
松岡 豊(トランスレーショナル・メディカルセンター)

 PTSDは、恐怖記憶の過剰な固定化と馴化・消去学習が進まない病態として考えられる精神疾患です。マウスでは、神経新生を活性化させると海馬からの記憶消去が早まること(Kitamura et al, 2009)から、海馬の神経新生を適切に制御することができれば、恐怖記憶が保存される脳領域をコントロールできる可能性が示唆されます。ω3系脂肪酸が海馬神経幹細胞のニューロンへの分化を促進すること(Kawakita et al, 2006)、ドコサヘキサエン酸を過剰発現するトランスジェニックマウスでは海馬神経新生が促進すること(He, 2009)から、松岡さんは「ω3系脂肪酸によって海馬神経新生を活性化させると、海馬から早期に恐怖記憶が消失し、結果的にPTSD症状が最小化する」という仮説を提案されました(Matsuoka, 2011)。

 重傷者を対象に、12週間ω3系脂肪酸を投与し、歴史的対照群と比較したところ、重傷者のPTSD症状は有意に低値でした(Matsuoka et al, 2010)。東日本大震災被災地に派遣された医療救援者のPTSD症状をω3系脂肪酸で緩和できるかどうかを検討したところ、女性では有効である可能性が示唆されました(Nishi et al, 2012)。これらの研究は、PTSDの予防と緩和を目的にした急性期介入の新メニューとして、栄養や食事の可能性を示唆しています。

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