タイトル画像 研究紹介 [About Our Studies]

医療計画、障害福祉計画の効果的なモニタリング体制の構築のための研究

  • 政策部一同

レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)や630調査等をあわせた総合的な精神科医療実態把握のためのデータセットの作成と地域医療計画の進捗管理に資するツール作成、精神科医療資源推計とそのプロセス提示を行っています。また、これら推計やプロセスの中身ともなる施策推進等で生じた新たな諸課題に対して、課題ごとの分担研究班において従来の取組みや調査等のレビューを通じた知見を見出しています。

・平成26年度のNDBデータに基づいた診療実績データを公表しています(公表ページへ移動)。
公表されたデータはダウンロード可能なエクセルシートであり、15領域ごと、全国・都道府県ごと・二次医療圏ごと、入院・外来ごとの医療機関数・年間受診患者実数を算出した。また、全国・都道府県ごと・二次医療圏ごとの、前年度3月入院者のその後1年間の退院状況、前年度3月退院者のその後1年間の再入院状況(在院1年未満・在院1年以上)を算出しグラフ表示しています。また、平成29年11月には、平成29年630調査の集計値を用いて、市区町村別の1年以上入院患者数を医療機関所在地別・患者住所地別で算出したものを公表しています。
・各都道府県に対して医療計画への本研究で算出した指標の活用状況、地域基盤整備量についてうかがったものを集計しており、研修等で自治体支援を図っています。
・隔離拘束の実態に関しては、平成29年6月に調査を開始したが、回答に混乱が生じる懸念が発生し、一旦調査を中断し、ひきつづきその実態調査の方法について検討することとしました。
・NDBデータに基づき、公に資する政策的研究のために必要な疫学データを集計し、厚生労働省保険局の確認を受けた上で公表しています(公表ページへ移動)。
・2019年度から、表題にもあるような精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を支えるべく、障害福祉と精神医療の連携を反映する指標づくりにも取り組んでいます。

このように、さまざまな政策課題に対して、機動的かつ研究機関としてのエビデンスを持った 「行政研究」に取り組んでいます。

医療計画における精神疾患の指標に関する研究

  • 臼杵理人
  • 臼田謙太郎

医療計画とは「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図るための基本的な方針」として医療法で定められたものです。医療計画の主要疾病に、平成25年度から精神疾患が追加されました。第7次医療計画では、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築が掲げられ、地域医療計画策定のための指標例が提示されています。

一方で、精神疾患の指標例には約100の指標が示されていますが、自治体によりその活用には濃淡があり、十分に活用されているとは言い難い現状があります。そこで私たちは、精神疾患に関連する医療計画指標を、より使いやすく、理解しやすいものとするため、厚生労働科学研究による検討を進めています。

  • 画像 臼杵理人
  • 画像 臼田謙太郎

精神病床における重症度指標の策定

  • 岡山達志
  • 橋本塁
  • 古野考志

現在の診療報酬には、精神疾患患者の重症度を評価する指標としてGAF尺度がありますが、現状では機能しているとは言い難い状況になっています。一方で精神病床といっても、同じ診断名でもさまざまな病期・病態があり、また病態のみにとどまらずADL, 対人的な手間、本人以外の要因等の多彩な状況があります。

そこで、本研究チームでは、医師だけじゃなく看護・介護等も含めた重症度評価をすることで、医療資源の指標策定を試みています。指標にはGAFのようにならないため、客観性の担保、検証の実効性をクリアしないといけないと考えており、今後重症度指標の案を整理し実効性・客観性・妥当性の吟味を行った後に臨床研究での検証をすすめていこうと予定しています。

  • 画像 岡山達志
  • 画像 橋本塁
  • 画像 古野考志

新しい精神保健指定医研修の質の評価に関する研究

  • 羽澄恵
  • 本屋敷美奈
  • 赤羽華珠

精神保健指定医は、患者さんへの適切な治療の提供や保護のために、本人の意志によらない入院や隔離・拘束を行うことができる、特殊かつ重責な資格です。精神保健指定医制度の一部見直しの一環として、今年度より資格取得・更新のための研修も新たな仕組みで行われることになりました。研修は精神保健指定医としての知識技能や在り方を学ぶ重要な機会であることから、新たな仕組みにおいても効果的かつ有用なものとなっているか、評価することは重要と考えます。そこで、研修主催団体がおこなっている研修の感想アンケートを二次利用して科学的に解析し検討していきます。

本研究で得られた成果は、各研修団体が今後の研修をさらに洗練させる手がかりとして活用される予定です。長期的には、精神科医療が日本全国で適正かつ効果的に提供されるようになることを目指しています。  >>[資料1]

  • 画像 本屋敷美奈
  • 画像 赤羽華珠

精神科病院の入院処遇における医療水準の向上システムの開発に関する研究(PECO: Psychiatric Electronic Clinical Observation 研究)PECOページへのリンクボタン

  • 山之内芳雄
  • 三宅美智
  • 大久保亮
  • 月江ゆかり
  • 古野考志

精神科入院医療環境の変化に伴い,わが国でも医療の質を考える際に外形的なものからプロセスやアウトカムを求められるようになってきました。しかし,動態サーベイや「良い医療とは何か」に対する答えは未だ明らかにはなっていません。そこで精神科入院医療のプロセスを中心とした中身についての全般的なデータを収集し,国際的な比較も視野に置いたベンチマーキングを提供することの必要性が高まってきました。

現状では,さまざまな立地・文化の中でそれぞれの病院が,日々工夫と努力を重ね精神医療を行っていますが,それらのスタンダードはどのあたりにあるのかを客観的に知り得るソースは限られています。そこで,今,提供している医療はどこがどのくらい良質といえるのか? 自院の優れた点はどこか? について,それが「見える」システムを作成しました。

このシステムは、2015年4月から開始となり、現在、およそ35施設にご参加いただいております。今後はさらにPECOが臨床で有用なシステムとして活用されるよう、情報を過不足なく取得できるようなシステムづくりを推進していきます。その一つとして、レセプトではわからない医療の中身に重点をおいた精神疾患のレジストリ構築と連携していきます。

  • 山之内芳雄 近影
  • 三宅美智 近影
  • 画像 月江 ゆかり
  • 画像 古野考志

ベルギーおよび香港における精神科地域資源の充実の為の
政策の実態およびその政策の日本での実装に関する研究

  • 本屋敷美奈
  • 大久保亮
  • 深澤舞子

少子高齢化は東アジア諸国において差し迫った問題であり、近い将来労働力人口の減少が予想されている。そんな中、すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる為には、限られた資源が病院に偏在化することを防ぎ、通院での医療に十分な資金や人材をふりわける為の仕組みを確立することが必要である。

日本では、いまだに病院による治療が主体であり、地域資源の充実が課題といわれている。 そういった中で、精神科医療において病院資源への偏在化を防ぐ為に何が出来るか、様々なモデルを示していくことが求められている。そこで、本研究では文献及びインタビュー調査によって、近年地域資源充実の為の改革が進行中といわれるベルギーおよび香港において実際に地域資源の充実をはかる為に行われているしかけやそのしかけの背景となる制度について調査する。また、わが国でそういったしかけを実装する為の具体的な方法や実装可能性について検証する。

  • 画像 本屋敷美奈
  • 画像 深澤舞子

抗精神病薬の多剤大量処方の現実的な是正について(減薬に関する研究)抗精神病薬の適正化ページへのリンクボタン

  • 山之内芳雄
  • 吉村直記(病院第一精神診療部医長)

わが国の抗精神病薬の処方は海外と比べて,たとえば4剤・5剤で3000mg(クロルプロマジン換算の1日量) を超えるような処方が未だ多いといわれています。一方で,既に大量処方されている方から急に減量を試みると,DSP(ドーパミン過感受性精神病)という新たな病態を引き起こす恐れもあります。しかし,大量処方の方の高齢化による医療安全の立場からは,多すぎる処方の是正を求める声もあります。

その中で,既に大量処方となっている人が,安全かつ現実的に適度な減量ができるように,研究に取り組んでいます。また,平成24年までに行われた臨床研究の結果と,医療関係者が適度な減量を行える支援ツールを公開しています。

  • 山之内芳雄 近影

健康日本21(第2次)「こころの健康」の総合的評価と次期健康づくり運動に向けた研究

  • 山之内芳雄
  • 西大輔

2013 年に開始された国民健康づくり運動「健康日本 21(第二次)」は、2018 年に中間報告を終え、後半 5年間の途上にある。また、第三次国民健康づくり運動の策定準備(健康課題の抽出・測定すべき健康指 標の選定・目標値の検討など)を開始する必要も生じている。

本研究では、健康日本 21(第二次)の「こころの健康」で目標として掲げられている各指標の進捗状況を分析するとともに、各指標の地域格差の要因を分析し、健康格差の縮小に向けた戦略を検討する。また、健康日本21(第二次)に続く国民健康づくり運動の策定に向けて、上記の研究で得られたエビデンスに加えて、有識者とのディスカッションなどをもとに、提言を作成することを目指す。具体的には、健康寿命延伸及び健康格差の縮小に向けて国及び自治体が取り組むべき健康増進施策を示すとともに、次期国民健康づくり運動で盛り込むべき健康課題とその目標値・健康指標、さらには目標達成に向けた戦略などを提案する。

  • 山之内芳雄 近影
  • 西大輔 近影

インクルーシブ保育への協力

  • 堀口寿広

近年、人工呼吸器や胃ろう等により医療的なケアを必要とする児童、いわゆる「医療的ケア児」の数が増加しています。厚生労働省によると在宅の子どもは全国で1万7千人と推計されています。多くの家庭では母親が介護を行っており、家族のレスパイト(休息)を確保しワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を実現するために子どもたちが地域で生活できる場を増やすことが求められます。また、人生の早い時期からさまざまな障害や困難をもつ友だちとの交流により、障害のある人たちへの差別や偏見のない、共に生きる社会(共生社会)の実現が期待されます。 既存の社会資源が多くない地域でも導入できるよう、また、「地域で暮らす」ということばの通り新しい専門の施設を作るのではなく、身近な地域の医療機関が中心となり子どもの状態をよく知る職員が付き添い一般の保育所を利用する「インクルーシブ保育」を提案しています。東京都三鷹市および武蔵野市の参加を得た協議会が設置されており、この会に参加して保育の実施に協力しています。