最近の研究内容

うつ病の最適薬物治療戦略確立のための大型無作為化比較試験:
2,000症例規模の実践的多施設共同無作為化比較試験 SUN☺︎D study

山田光彦、稲垣正俊、米本直裕、古川壽亮


Kato T, et al.
Optimising first- and second-line treatment strategies for untreated major depressive disorder - the SUN☺D study: a pragmatic, multi-centre, assessor-blinded randomised controlled trial.
BMC Medicine, 16, 103, 2018.


うつ病は日本国民にとってその生活の質(QOL)を損なう最大の原因であり、さらに今後20年間その損失は増加傾向にあると推定されている。現在、うつ病の治療の中心は抗うつ剤、特に、SSRI、SNRI、NaSSAに代表される新規抗うつ剤である。しかし、薬物療法を開始するに当たって、①最初にどの抗うつ剤をどの量で使用し、②治療反応が不十分である場合にいつどのように治療戦略を変更するかについての十分な実践的エビデンスは得られていなかった。京都大学の古川壽亮教授をPIとして実施された SUN☺D study は、世界で3番目に大きな抗うつ剤の多施設共同ランダム化比較試験である。2010年12月から2015年3月にかけて、日本全国48医療機関にて合計2011人の未治療うつ病エピソードの患者が参加した。その結果、新たに発症したうつ病エピソードに対して、初期治療薬としてセルトラリンの投与量のターゲットを100mgとすることは、50 mgとすることに比して、何の利点もなかった。3週間後に寛解に達しない場合は、ミルタザピンに変薬、またはセルトラリンにミルタザピンを併用することは、9週間後の反応率も寛解率も約10%増加した。この研究は、先行するメタアナリシス研究により効果および受容性のバランスに優れた抗うつ剤(SSRI)と、非常に効果は高いが受容性がその効果ほどではないNaSSAを、どのように組み合わせると最も効果がありかつ安全で飲みやすい薬物治療指針となるかを解明したものであり、その結果は、日常臨床に大きなインパクトを与えるものである。

 

薬物治療抵抗性うつ病に対するモバイル認知行動療法の効果を検証する
無作為割り付け比較試験 FLATT study

山田光彦、稲垣正俊、米本直裕、古川壽亮


Mantani A, et al.
Smartphone cognitive behavioral therapy as an adjunct to pharmacotherapy for refractory depression: randomized controlled trial.
J Med Internet Res, 19, e373, 2017.


うつ病の治療の中心は抗うつ剤であるが、認知行動療法という精神療法が有効であることも広く確かめられている。さらに、抗うつ剤と認知行動療法を一緒に用いることでいずれか単独よりも効果が高くなることも報告されている。しかし、認知行動療法そのものは標準で1時間×16回の面接による治療を必要として、患者さんにも治療者にもたいへん時間のかかる治療法である。そこで、京都大学の古川壽亮教授をPIとし、この認知行動療法をスマートフォン上でより実行しやすい形にした、まるでゲームのような「アプリ」を作成した。本臨床試験では、薬物治療抵抗性うつ病患者を対象に、薬物療法に加えて、スマートフォン認知行動療法のアドオン効果を検証することを目指した多施設共同による無作為割り付け比較試験を実施している。

 

精神疾患に起因した自殺の予防法に関する研究
川島義高、稲垣正俊、米本直裕、山田光彦

HOPEガイドブック-救急医療から地域へとつなげる自殺未遂者支援のエッセンス
監修:日本自殺予防学会
編集:国立研究開発法人日本医療研究開発機構障害者対策総合研究開発事業(精神障害分野)「精神疾患に起因した自殺の予防法に関する研究」研究班
発行年月:2018年05月(へるす出版)


国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED)による平成29年度障害者対策総合研究開発事業(精神障害分野):課題名『精神疾患に起因した自殺の予防法に関する研究』(代表:山田光彦)」に採択され、精神疾患を伴う自殺未遂者ケアに関する先行研究の再評価、精神疾患を伴う自殺未遂者に対するケース・マネージメントの効果についての検討、ケース・マネージメント手法の標準化と人材育成プログラムの事業化に関する研究を進めている。