最近の研究内容

統合失調症のGABA神経仮説に関する研究
三輪秀樹、古家宏樹、山田光彦


Miwa H, et al.
Glutamate decarboxylase 67 deficiency in a subset of GABAergic veurons induces schizophrenia-related phenotypes.
Neuropsychopharmacol 40, 2475-2486, 2015.
(この論文は群馬大学在籍中の研究成果です。)

統合失調症患者では、ノンレム睡眠中に観察されるスピンドル波発生の著しい異常、学習課題実行後のノンレム睡眠中のスピンドル波密度および活動の上昇が報告されている。そのため、GABA神経系が睡眠依存性記憶固定の機能を担っていることが推測されている。そこで、スピンドル波発生に重要な神経核におけるGAD67陽性GABA神経細胞の機能を特異的に低下させるモデルマウスを用いて、統合失調症のGABA神経仮説に関する研究を進めている。

 

新生仔期NMDA受容体遮断ラットを用いた統合失調症の神経発達障害仮説の検討
古家宏樹、國石洋、三輪秀樹、山田光彦


Furuie H, et al.
Differential effects of N-methyl-D-aspartate receptor blockade during the second and third postnatal weeks on spatial working and reference memory in adult rats.
Brain Res 1721, 2019.

統合失調症の背景として、ドーパミン過剰仮説やグルタミン酸機能低下仮説が提唱されている。イオンチャンネル型グルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体は、神経細胞の増殖・分化・移動を調節しており、新生仔期のラットにNMDA受容体拮抗薬を投与すると多様な神経解剖学的変化およびドーパミン過剰を含む神経化学的変化を生じる。新生仔期NMDA受容体遮断ラットは、感覚運動ゲーティングの障害や、社会行動の異常、ドーパミン作動薬への過感受性、空間学習障害などの統合失調症に類似する行動異常を示すことから、統合失調症の神経発達障害仮説に基づいた有力な動物モデルと目されている。

 

眼窩前頭皮質の情動行動に対する寄与の検討:
オプトジェネティクスを用いた神経科学研究
國石洋、関口正幸(神経研)、萱島修平、吉澤一巳、山田光彦


Kuniishi H, et al.
Chronic Inactivation of the Orbitofrontal Cortex Increases Anxiety-Like Behavior and Impulsive Aggression, but Decreases Depression-Like Behavior in Rats.
Front Behav Neurosci10: 250, 2016.
(この論文は鳥取大学在籍中の研究成果です。)

ラットのOFCは不安様行動と衝動的攻撃性に対する抑制機能を持つ一方、うつ様行動に対する惹起機能を持つ。現在、OFCがどのような下流の脳部位を介してこれらの行動を制御するのか、また、ストレス経験がその回路にどのような影響を与えるのか明らかにするため、オプトジェネティクスと電気生理学的手法を用いた研究を実施している。

 

向精神薬探索のための構成概念妥当性の高い新規動物モデルの確立:
社会的敗北ストレス負荷モデルとその目撃モデル
中武優子、古家宏樹、國石洋、請園正敏、山田美佐、吉澤一巳、山田光彦


Nakatake Y, et al.
The effects of emotional stress are not identical to those of physical stress in mouse model of social defeat stress.
Neurosci Res in press, 2019.

本研究で確立した心理的ストレスに焦点を当てた社会的敗北ストレス負荷マウスモデルは、構成概念妥当性の高い新規の慢性ストレスモデルとなるものと考えられる。このモデルを前臨床薬効薬理試験に用いることで、これまで困難とされてきた抗うつ薬あるいはストレス関連疾患治療薬の創薬研究をより合理的に進めることができるものと期待される。

 

恐怖記憶を操り精神疾患を克服する:
恐怖条件付け試験を用いた消去学習と再固定化の研究
古家宏樹、石井香織、山田美佐、吉澤一巳、岡淳一郎、山田光彦


Akagi K, et al.
Post-reexposure administration of riluzole attenuates the reconsolidation of conditioned fear memory in rats.
Neuropharmacol 131, 1-10, 2018.

これまでに我々は、グルタミン酸神経伝達を抑制する作用を有するリルゾールがラットの恐怖記憶消去学習を促進すること、恐怖記憶再固定化を阻害することを報告している。興味深いことに、恐怖記憶再固定化によりラット背側海馬で増加したCREBのリン酸化が、リルゾール投与によって有意に抑制された。この結果は、再固定化阻害作用における背側海馬の機能変化の関与を示唆している。今後は、PTSD曝露療法への応用を期待し、恐怖条件づけから長時間経過した古い恐怖記憶へのリルゾールの効果を検討したい。