CPEO (Chronic progressive external ophthalmoplegia)

・疾患の概要
 
外眼筋麻痺の症状をもつ患者群を通常、単に慢性進行性外眼筋麻痺症候群(chronic progressive external ophthalmoplegia: CPEO)と称している。眼瞼下垂及び外眼筋麻痺、心伝導障害、網膜色素変性を3徴とする症候群をKearsn-Sayre症候群(KSS)という。こちらは、通 常小児期に発症し、病因が極めて類似していることからKSSはCPEOの重症型と考えられる。

・臨床像
 眼症状として、眼瞼下垂と外眼筋麻痺を認め、網膜色素変性は非典型的である。心臓では、房室ブロックやWPW症候群などの伝導障害をみる。神経症状としては、小脳症状、難聴、体幹・四肢の筋力低下などをみる。さらに、低身長、内分泌症状(糖尿病、副甲状腺機能低下など)、けいれん、錐体路症状、錐体外路症状、末梢神経障害、消化管症状(下痢、便秘)、腎障害(Bartter症候群、Fanconi症候群)、視神経萎縮などをみることがある。 診断は、生検筋のGomoriトリクローム変法染色でragged-red fiber(赤色ぼろ線維)、シトクローム酸化酵素染色で部分欠損線維を確認する。mtDNAの欠失を確認しても、診断は確定できる。

・発症機序
 CPEOの70%、KSSの90%に、mtDNAの欠失もしくは欠失/重複を認める。さらに欠失の場合は、単一欠失と多重欠失があり、単一欠失は散発性に認められ突然変異によると考えられる。一方、多重欠失は常染色体優性遺伝と劣性遺伝が知られており、優性遺伝家系でANT1 (adenine nucleotide transporter 1)、Twinkle、POLGなどの遺伝子変異、劣性家系でTP (thymidine phospharylase)の遺伝子変異が同定されているが、さらに他の病因があると考えられている。また、重複を有する症例では母系遺伝することが報告されている。典型的なCPEOのほとんどは、mtDNAの単一欠失を有する。

・遺伝子診断法
 mtDNAの欠失や重複を検出するのが基本である。従来用いられてきたサザン法を用いると、血液では欠失が検出できず、骨格筋ではじめてその存在が確認できると考えられてきた。しかし、Long PCR法の出現で、ほとんどの例で血液でも欠失が確認できるようになっている。一方、感度が高すぎて、意味のないPCR産物をみている可能性があることから、欠失の存在は、基本的にPCR法とサザン法の両者で確認されることが必要である。  多重欠失の場合には、さらに核DNA上の遺伝子変異を調べることができるようになってきている。

遺伝子診断手順

・遺伝子診断サービス施設  
 国内の検査会社では、東洋紡、BML、SRLで行っている.  
 国内の研究機関でも行っている.その最新情報については、いでんネット(大学等の研究施設で行われている遺伝子 検査の情報)を参照のこと.

・遺伝子診断に際しての配慮事項 検査の手順
 単一欠失は散発性がほとんどであるが、重複も同時に存在する場合は母系遺伝と考えられる症例が報告されている。重複は、欠失例の約20%の患者骨格筋でその存在が確認されているが、母系遺伝であることが確実に証明されている症例は、日本ではない。したがって、母系遺伝の可能性はきわめて低いと考えられる。

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